Chapter1-31
「見えてきましたよ」
そんなファーラにエリファーはこういった。
「いよいよツガードね。キングトロールの棍棒を見せたらビックリするだろうな」
「そうね。この辺だと珍しいわけだし」
レーナ姫がそういうと、ツガードに馬車が差し掛かる。
「さて、着きましたよ」
「ちょっと待ってね、バザーの窓口にキングトロールの棍棒を見せてくるから」
そういってエリファーはバザーへと向かおうとする。
「私も付き添うわ」
「では、私は……あそこの馬車留めで馬車を見つつ待ってます」
ファーラが馬車留めを指さしていたため、二人はそれに頷きバザーへと向かう。
バザーには色んなものが売ってあった。
「モングラ王国産のチーズがあるよ。牛と羊、どっちもあるから良かったら買っていかないか?」
「こっちはモングラ王国の牛肉だよ。質はそこそこだけど、その分値段はシューヴェスト産と変わらないよ」
モングラ王国は遊牧民なので基本的に乳牛や乳羊を飼っているが、産まれた子牛や子羊が雄ということもある。
そういう場合も種馬ならぬ種牛や種羊として町で飼われるが、ケガや病気をした牛や羊は屠畜される。
遊牧民であるため動物のケガや病気を治す術がない、わけではないがコストがかかる。
それよりは屠畜して、売りさばけるなら売りさばいた方がいいということである。
病気をした牛や羊の死骸は処分されることが殆どだが、ケガをしただけの牛や羊なら食べるには問題ない。
その中でも上質な牛や羊の肉はかなり高値で売られるのである。
ただそういう肉は希少価値が高く、買える人は殆ど居ない。
なのでこういったバザーで売られる肉は基本的に希少価値のあまりない物になる。
それでもシューヴェスト産の肉よりも良質な物がシューヴェスト産の物と同等の価格で買えるため、
ここに来た人間は重宝しているのである。
話を戻すと、二人はバザーの窓口に来ていた。
「早速で悪いけど、魔物の統領はやっつけて来たわ」
そういうエリファーに、相手はこういった。
「シューヴェシティに攻めようとしていた魔物の統領を?本当かい」
「ええ、証拠もあるわ」
エリファーはキングトロールの棍棒を窓口に置く。
それが窓口の大半を占めるのを見たレーナ姫は改めてその大きさを実感した。
「たまげたね。仮に魔族の物でなくても、木材としても上質だ。ちょっと魔力鑑定をするよ」
無論鑑定魔法を誰でも使えるわけではないため、それ用のアイテムがあるのだが。
「この魔力痕。間違いなく大物だね」
この世界で生物が武器を振るった場合、それが魔法による物でなくても生物の持つ魔力の痕が残るのだ。
明日はいつも通りの時間帯に投稿します。




