Chapter1-3
「城から動けない、というのは流石にいい過ぎかと思いますが」
国王にそう突っ込むレオンハルトだったが、国王にはこう返される。
「言葉のあやだ。そのくらい察してくれんか?」
「それは済みません。で、もし断ったらどうするのですか?」
「別に罰は与えんさ。元より無茶な要求だとおもっている」
しかし、と国王はいう。
「お前はそういうと思って、相応の報酬を用意してある」
「報酬目当てでやると思われるのは嫌ですから先にいっておきますが、聞いてみただけですよ」
そんなレオンハルトに国王は鳩が豆鉄砲を食ったような表情でいう。
「お前は騎士らしからぬ容姿に引け目があったのではないか?」
「王家の聖剣を使える人間が居ないと知った以上、やらないわけにはいきませんよ。他に代わりは居なさそうですし」
「確かにわしは、お前にレーナ姫と似た雰囲気があったから頼んだのだが……そこまで考えていたとはな」
そんな国王にレオンハルトはこう頷く。
「騎士は力が強いだけじゃ務まりませんからね」
「ごもっとも、といったところか」
「まあ、やらされているって感じはそれでも拭えないですが。それでも王家の聖剣を使える人間は必要です」
「なるほどな。では、着替えて来てくれ。メイドをここに」
姫に仕えるメイド、がレオンハルトの前に現れる。
「ファーラ様!?」
ファーラ。彼女はメイドといっても王家に仕える者なので、レオンハルトより目上ということになる。
「ファーラでいいですよ。これからは、あなたが私の主なのですから」
「ということは、君が俺を着替えさせるってことか……?」
「あなた本来の裸も一応把握しておく必要がありますからね」
しれっとそんなことをいうファーラに、レオンハルトは頷きながらいった。
「まあ、影武者だってことは知ってるんだしな。色々知っておいた方がいいか」
「では、こちらにどうぞ」
ファーラはレオンハルトを案内する。
「ここは?」
「姫様の部屋です。表向きは療養中なので、部屋はまだ片づけてません」
「確かに、城を民衆に公開する日もあるしな。部屋が片してあるという噂を流されるわけにもいかないか」
そんなレオンハルトにファーラは頷く。
「それもありますが、ティアラには彼女の心が宿っているので。できるだけ部屋は現状維持をしているのです」
「そういうことか」
「まあ、入る時にノックしなくてもいいですけどね。ともかく、この部屋で着替えてください」
そういってファーラはレオンハルトに着換えを促す。
「着替えっていったって、ドレスの着方なんてわかるわけないだろ」




