Chapter1-24
ホットドッグを食べ終えたレーナ姫だったが、ファーラと馬が食事を取らなければならないためいったん休息を取る。
道端で休むレーナ姫に、ファーラはこういう。
「シューヴェシティもそろそろですね」
「そうね。トロールの群れを突っ切った甲斐はあるわね」
そんなレーナ姫にファーラはこう返す。
「馬車もシューヴェシティで乗り換えですからね」
「そういや、この馬車はどうするの?」
レーナ姫達の馬車は王室御用達の馬車というわけでなく、普通の馬車だ。
そもそもシューヴェシティで駅馬車に乗る予定なので、そこまでのつなぎなのだ。
「この馬車はシューヴェシティで槍と交換します」
「馬車に匹敵する槍……でもそんなことしていいの?」
そんなレーナ姫の問いにファーラはこう答える。
「この馬車はあくまでも軽量馬車……王都までは返すにしても人員の方が無駄なんです」
「そうなの?」
そんなレーナ姫にファーラはそもそも、という。
「あの馬はかなりの古馬なんです。除却のついでというわけで選ばれました」
「そうだったの!?」
驚くレーナ姫に、ファーラは平然と続ける。
「無論、仮にも王家の人間が乗る馬車なので良馬なんですけどね。それでも老いには勝てませんからね」
レーナ姫もといレオンハルトは『騏驎も老いては駑馬に劣る』という言葉を思い出していた。
「なるほど……そうだったのね。古馬と聞いて王家の馬車がそれでいいのかと思ったけど」
「まあ、思うでしょうね」
そんなファーラに、レーナ姫はこう返す。
「ともかく、行くわよ」
あんな話を聞いていたにも関わらず馬は普通に歩き出す。
最後の務め……かは分からないがそれを果たそうとしているのか、それとも話を聞いてなかったのか。
それは分からないが、レーナ姫達は馬車に揺られる。
そして、二人はシューヴェシティにたどり着いたのだった。
「さて、エリファーを探さないとね。酒場なら話を聞けるかな」
酒場には人が集まるというのはお約束である。
酒を飲まない人間でも、情報が集まる酒場を覗くことはよくあることだからだ。
「私は酒場で話を聞いているから、その間に馬車をお願いね」
そういってレーナ姫はファーラと一旦別れ、酒場に入る。
「ごめんください」
「レーナ姫か!病気してたっていうから酒は飲めんだろうが、何の用だい?」
酒場の主人はレーナ姫に他の客とさほど変わらない接し方をする。
「エリファー……エリファー・ギークスを知らないかしら?」
「この町に来てるって話を聞いたのかい?彼女なら、そろそろ来る頃だよ」




