Chapter1-19
王家の聖剣は何よりも確かな身分証明書となる。
レーナ姫が後を継ぐもののために、王家の聖剣を託すものが使えるようにした経緯を知らなければだが。
事実、レーナ姫はレオンハルトが代役を行っているため偽物といえる。
ただ文字通りの代役であるため、他者を貶めるための偽物というわけではない。
この辺はかなり複雑なので、いっても理解されないかもしれないが。
ともかく、レーナ姫は宿へと泊まる。
無礼のお詫びということもあり、レーナ姫の分の代金は払わなくていいことになっていた。
「とはいえ、焦ったわ。王家の聖剣が証明になり得るからまだ良かったけど……」
「読心魔法を気にしているなら、王家の聖剣はそれを無効化する力もあります」
「そうね。私も王家の聖剣を持っていればその力は分かるけど、そういうこともできるんだったわ」
そんなレーナ姫にファーラはこう返す。
「まあ、この世界にある武器の中でも聖剣は強い力を持っていますからね」
「『王家の聖剣』っていうくらいだから、ほかの国にはそういう聖剣は無いの?」
「少なくとも王家に代々伝わる、という意味ではそれだけですね」
ファーラの言葉に、レーナ姫は釈然としない物を感じた。
「シューヴェスト王国は中堅だけど、そういう意味ではすごい国なのね」
でも、とレーナ姫は続ける。
「裏返せば聖剣ってゴロゴロ転がっていたりするの?」
「流石にそこまでゴロゴロ転がってはいませんが、聖剣はそれ一つというわけじゃないみたいです」
「まあ、聖剣がゴロゴロあったならとっくの昔にサタゴニア王国は滅びてるだろうしね」
そんなレーナ姫にファーラはこう返す。
「聖剣が幾ら強くても、持ち主にも相応の力量は必要です。その点でいえば、あなたは力量があります」
「エリファーみたいにドラゴンを倒せる訳じゃないけど?」
「それでも、強い騎士であるといえるでしょう」
そんなファーラは、こう続ける。
「さて、そろそろ夕食が来ますよ」
夕食の内容は玉ねぎのスープとベーコンのチーズ焼き、そしてバケットであった。
玉ねぎは常温で五か月ほど保存できるため、結構重宝するのだ。
「いただきます」
二人はそういって食事を取り始める。
「美味しい……!」
「ちょっとこってりしてますけどね」
「長旅だったから、このくらいでいいんじゃない?何より王都とシューヴェシティの最短ルートなわけだし」
そんなレーナ姫にファーラはこう返す。
「保存が効く食材だから、という方が大きいかもしれませんけどね」




