Chapter1-16
風呂に入ってリフレッシュしたレオンハルトは、床につく。
「おやすみ、ファーラ」
「おやすみなさい、レオンハルト様」
そして翌日、レオンハルトはレーナ姫としての衣装に着替え朝食を待っていた。
「朝食のお時間です」
そういって宿の従業員が持ってきたのはミートパイとオレンジジュースだった。
「ひき肉なら氷漬けにして保存ができるからな」
この時代に冷凍庫は魔法による物しかないが、氷室がある。
そのため、ある程度なら冷凍保存も可能なのだ。
当然電子レンジも似たような原理の魔法が使われるものしかないため、こういった宿場町では流水解凍が基本になる。
冷凍保存は若干素材を痛めてしまうデメリットもあるが、ひき肉ならそもそも分解されているので相性がいい。
何より肉の塊を一気に凍らせることは氷室だと難しいが、ひき肉なら徐々に凍らせても問題ないのだ。
というわけでこの世界においてひき肉は、冷凍することで保存食として大いに活躍しているのだ。
ちなみにジュースも果汁を冷凍保存することで長期保存を可能としており、宿に来る客はいつでもジュースを飲めるのだ。
「それじゃあ、いただきます」
二人が食べたミートパイの中身はひき肉のみだが、付け合わせに瓜の漬物が付いていた。
瓜の漬物はひき肉との相性がいいため、この時代でも普通に食されているのだ。
「さてと、朝食も済んだとこだし」
「そうですね。勘定を済ませたら、盗賊のアジトに向かいましょう!」
そういって二人はまずは窓口で勘定を済ませ、馬車へと乗り込んでからティニスの村へと向かう。
「道すがらにある洞窟、そこに盗賊のアジトがあるという話だったけれど……」
「用心した方がいいですね。罠があるかもしれません」
「それ以前に、見つからないわね」
そんなレーナ姫にファーラはこういう。
「見落とさないように細心の注意は払っていますから、件の洞窟はまだなのではないかと思います」
「それもそうね。だけど、そろそろお昼よ」
「確かに、日も高くなってきました」
この時代は日の高さで大体の時間を測ったり、あるいはゼンマイ仕掛けの時計で時間を見たりする。
レーナ姫の時計はファーラが巻いているため、正確な時間を計測しているのである。
「もしかしたら……洞窟を隠しているとか?」
「そんな高度な技術はないみたいです。見えましたよ!」
ファーラの指さす先には、盗賊のいそうな洞窟がある。
「いよいよね。ファーラは入り口で馬を守ってて」
「流石に一人では心配ですが、致し方ありません」




