Chapter1-14
オークに出くわすというアクシデントに見舞われたレーナ姫だったが、何とかそれを退ける。
ウルカーヌへと向かうのに支障はなく、ファーラは真っ直ぐ二人の乗る馬車を走らせる。
「さて、そろそろウルカーヌに着くわね」
「そうね。早速一息付きたいわ」
そういったレーナ姫の前に、住民が現れる。
「ようこそ、ウルカーヌへ。早速なんだけど、私たちは少しだけ困っていてね」
「何があったの?」
レーナ姫の問いに、住民はこう答える。
「最近盗賊に悩まされているんだ。幸い撃退できているんだが、このままじゃ盗賊が出るって噂になっちまう」
「被害もなく撃退できているなら、それを売りにしてもよろしいのではないでしょうか?」
そんなファーラに、住民はこう返す。
「そうかもしれないが、夜に見張りを立てなきゃいけないのはやっぱ不便だ」
「その盗賊のアジトはどこにあるの?」
そんなレーナ姫に、ファーラはこういう。
「いいんですか?」
「情けは人の為ならず、よ。まだ夕方だし時間はある」
すると、そんなファーラに住民はこういう。
「アジトは丁度ティニスの村へ向かう途中の洞窟にある。姫の目的地がシューヴェシティってなら、道すがらで行ける」
「先を急ぐから、盗賊を倒した証を渡せそうにはないことは承知の上。つまり、アジトにある物が報酬ってことね」
「理解が早くて助かります」
そんな住民にレーナ姫はこう返す。
「気づいたようにかしこまらなくてもいいのよ。慣れないってのは分かるから」
「ああ、はい」
そんな会話を聞いたファーラはこういう。
「確かに、盗賊のアジトにある物なら価値がありそうですね」
「といっても袋はあまり軽くなってないわよ?」
「食料くらいあるでしょう。盗賊を倒して昼食としゃれこみましょう」
そんなファーラに、レーナ姫はこう返す。
「まあ、それが一番妥当よね。ともかく、宿に向かいたいんだけど」
「そうですね。あまり安い宿でも王族としてどうかというところですし、程々に安い宿が無いかと……」
そんなファーラの目に、ちょうど手ごろそうな旅館が入る。
「あそこにしましょう。ああいう宿なら個別の風呂もあるでしょうし」
「そうね。ごめんください」
「ようこそいらっしゃ……」
宿の主はレーナ姫を見て絶句した。
「そろそろ旅立つとは聞いてましたが……レーナ姫!?」
「そんなにびっくりしなくても……」
「レーナ姫が来たとなれば箔が付きます。流石にタダじゃ泊められないませんが、割安でいい部屋に案内しましょう」




