獣の王
今回短めですけどとりあえずこれで。
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ゼオがその事に気が付いたのは、朝の日課であるステータス確認をしている最中であった。
この時に自分のステータスだけではなく、セネルのステータスも確認して厄介な状態異常などに罹っていないかも確認するのだが、ふと称号一覧に目を向けると、そこに気になる称号が増えていたのだ。
名前:セネル・アーウィン
種族:ヒューマン
Lv:15
HP:87/87
MP:80/80
攻撃:44
耐久:852
魔力:50
敏捷:45
称号
《道具屋の息子》《職人の卵》《良心に耳を傾ける者》《復讐者》
《新成人》
(昨日まで無かった称号……新成人って事はもしかして)
半ば確信めいた予感を感じながら称号を更に詳しく閲覧する。
【称号【新成人】。珍しくもありながら、同時にありふれた期間限定の称号。成人を迎えてから一年の間だけ、新成人と呼ばれる。ちなみにヒューマンの成人年齢は十八歳から】
相変わらず辛辣さと同時に親切さを感じる解説に、ゼオはマジマジとした表情を浮かべた。
(……そっか。今日はセネルの十八歳の誕生日って事か。なんだかんだでこいつの年齢、初めて知ったな)
そんな事を考える傍らで、ゼオはグランディア王国に居た時の事を思い出す。その当時はまだ、シャーロットが十七歳だった。あれから半年が経ち、成人を迎えた可能性も高い。
(……俺、お嬢の誕生日、ちゃんと祝えなかったなぁ……)
いつかちゃんと祝おうと、大事に大事に記憶に刻み込んでいた決定事項だったが、結局それが叶うことはなかった。
正確な誕生日も、今も日付も把握していないので何とも言えないが、仮にシャーロットがまだ十七歳であったとしても、この姿では祝いに行くことも難しい。
「グルルルル……」
しかし、今回は違う。セネルは今、どこからどう見ても凶悪な魔物であるゼオの近くで生活しており、会いに行こうとしてもそれを結果的に妨げ、非難する人々はいない。
ならばどこに諦める必要があるだろうか。昔日の無念を晴らす時があるとすれば、きっと今である。
(それに渡りに船とはこの事だな。恩返し兼、誕生日祝いの品をプレゼントしてやろう)
そう決めたゼオはセネルに一ジェスチャー断りを入れて(相変わらず謎の踊りと誤解されたが)、今日のよるまでには帰ろうと予定を組んでから探索に出かけるのであった。
この樹海から出ればどんな騒ぎになるか分からない以上、必然的にその中からプレゼントを選ぶ必要があるゼオ。
しかし何が誕生日プレゼントに相応しい品か、学のない自分には分からないので、片っ端から《鑑定》スキルで良い物が無いかと物色しているわけだが。
【マンドラドクニンジン】
【根の部分は人型に見えるニンジン。全体に水分と共に食べれば全身の血液がゼリーのように固まってしまう凝固毒が循環している。毒抜きは不可能。しかし味は濃厚な甘みがあって美味。それの匂いに釣られてわざわざ掘り返してまで食べようとする魔物が後を絶たないとか。デンジャラスキャロットだぜ!】
【石灰岩】
【そこら辺に転がっている岩。特に価値はない。リリィや和人の少し上程度の価値しかない】
【ブロッサムロックイーター】
【まるで花木の花弁のような大きな模様が自然と刻まれた岩……と見せかけて、実は巨大な芋虫型の魔物。模様の部分は口となっており、珍しがって近づいてくる人間も捕食してしまう】
【アーガートゲコスモス】
【茎だけではなく、花弁や花托にまで鋭く硬質な棘が生えたコスモス。棘は花から抜けると特殊な処理をしない限りは時間経過で溶けて消えてしまうため、暗殺者が好んで栽培し毒針に用いている】
(良いのが無い。というか、ロクなのが無い)
そもそも洞穴を中心とした樹海の外周部分は粗方探索し終わっている。プレゼントとして目を引くほどの物が無いのは分かっていたのだ。
流石に反対側辺りまでは行ったことはないが、何となくこれと言って珍しく、贈り物に向いている品があるようには感じなかった。
(となると……やっぱりもう一回樹海の中心部に行くしかないか……)
ライジングは怖い。あの雷撃と剛拳を連打してくる埴輪が。しかし虎穴に入らんば虎児を得ずともいう……ここは多少の危険を冒してでも、行かねばならぬ時があるのだ。
(それにもし俺の予想が正しければ、全力で逃げて中心からある程度離れたらライジングも追ってこない……よな? ていうか、気付かれずに潜り込む方法も無い訳じゃないし)
飛行に《透明化》を合わせた偵察モードだ。《鑑定》や《ステータス閲覧》スキルは上空からでも視認すれば効果を発揮するので、安全圏から物を探すことだって可能と言えば可能。
何せ魔物になってからというもの、視力が人間の時とは比較にならないくらい発達しているのだ。今ならどこぞの部族にも負ける気がしない。遠くからのステータスや情報の確認にも大いに役立ってくれるだろう。
(それにライジングはスキルを見る限り、探索系のスキルは見当たらなかった。奥に行けばそう言うのもいるかもしれないけど、前に踏み込んだ場所までは探しに行けるかも)
そうと決まれば即行動。ゼオは青白い炎の翼を翻して樹上へと舞い上がり、《透明化》のスキルを発動させて姿を消す。
そのまま樹海の奥へと進んでいくと、木々の間を縫うように飛行するライジングが十数匹見られた。
(こ、怖~……。あんなのに見つかったらひとたまりもないな……)
実際に相対したのは一体だけだが、どうやらかなりの数がうろついているらしい。いずれの個体もステータスが二万代、一斉に襲われればゼオでも一瞬で消し炭にされそうだ。
(あんまり奥に行き過ぎるのもヤバそうだけど、予想通りライジングは今の俺を察知する力はないっぽいな)
ゼオはライジングの生体情報を閲覧する。
【ライジング】
【頼りない外見からは信じられない戦闘能力を誇る土のゴーレム。雷神の玩具が名前の由来となるほどの雷撃魔法の使い手であり、自分の体の質量を遥かに超えた変形を見せる。かつて不世出の天才魔道具職人によって量産されたが、それを知る者はもはや一人もいない。今はベールズのとある森の中心部に人の魂の持ち主が近づかないように複数巡回している】
以前は逃げるのに必死だったが、こうして安全圏からならゆっくりと詳細情報を得ることが出来る。
やはりと言うべきか何と言うべきか、どうやらライジングは人工物だったらしい。そして推察通り、警護目的のゴーレムであるということも確認が取れた。
……なぜ森の中心部へ人だけを寄せ付けないようにしている理由はいまだ不明だが。
(ステータス二万越えのゴーレム作れるとか、どんな奴だよ)
この世界では人よりも魔物の方が圧倒的脅威なのではないかと、この樹海に住み始めてから思っていたのだが、どうやら人の中にもとんでもない逸材が紛れ込んでいるらしい。
――――グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
「グルァアアッ!?」
ヴァースはとんでもない人外魔境であるという予感をヒシヒシと感じていると、風に乗って大きな咆哮が聞こえてきた。
(何!? 何の鳴き声!?)
発信源は樹海の中心。一体何事かと思わず、心情的に踏み込めるギリギリまで近づいて様子を伺うと、未だ遠く離れた樹海の中心部……そこに二体の巨大な魔物が相対しているが見えた。
(つ、強そうな魔物だな)
そう感じたのは二体の内の片方。六本の腕を持つ二足歩行のライオンだ。
種族:ドラッセラム・レオ
Lv:988
HP:4539587/4539587
MP:3997234/3997234
攻撃:2546983
耐久:2435991
魔力:1999348
敏捷:2600001
(ス、ステータス百万代って……!)
インフレここに極まれり……である。今のゼオでは逆立ちしても敵わないステータスに加え、正に絶対強者という言葉が似合う出で立ちだ。
(もしかしたら、あのドラッセラム・レオが《獣王》とやらではなのでは……)
まるで冗談のようなステータスにそんな確信を抱きながら、ついでとばかりに六本腕の獅子と敵対する命知らずな魔物のステータスを確認する。
名前:《獣王》ノーデス
種族:ギリメカラ・エレファレス
Lv:?
HP:3068108569/3068108569
MP:3054198399/3054198399
攻撃:2281098579
耐久:2310868430
魔力:2169462982
敏捷:2094583154
「……ホオォウアァ……?」
思わず、変な声が出た。
なろうのチート軍団でも太刀打ちできない……地球のどんな化学兵器も無意味になるステータスって、どんなのかなって思ってやりました。
とりあえず第一巻発売の為の色んな作業、頑張ります。




