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閑話・女の涙

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 グランディア王国、ハイベル公爵領。二体の魔物による戦闘行為で崩壊し、半年経った今でも立て直しが完全ではない首都の住民の一割を引き入れ、仮設住宅区が郊外に増築された、貴族院を要するこの街では、未だに住民たちの多くが暗鬱とした表情を浮かべていた。


「ねぇ、先生。シャーロット様はいつ帰ってくるの?」


 そんな街行く人々の中、手作りのぬいぐるみを抱えた幼い少女が、自分の手を引く女性に問いかける。

 彼女たちは、かつてのハイベル公爵家令嬢、シャーロットが支援し、それを今は元が頭に付く父であるギリアムが引き継いだ孤児院で生活する職員と院生だ。

 特にこの少女はシャーロットによく懐いており……何より、グランディア王国の権威を失墜し、シャーロットから故郷を奪った原因である義妹、リリィとの面識がないゆえにスキルの影響を受けず、最初から最後までシャーロットの味方であった数少ない存在だ。

 

「今度会った時にね、シャーロット様が花冠の作り方の続き教えてくれるって! 早く帰ってこないかなぁ」


 屈託のない笑顔でかの貴族令嬢の来訪を心待ちにする少女を見て、職員が胸が締め付けられるような感覚を覚える。

 シャーロットが来るのを楽しみにしている子供たちは、今手を引いている少女だけではなく、孤児院に居る幼い子供たち全員に言えることだ。

 王国史に刻まれる悪女、リリィの登場により、シャーロットを追いやられたと知ったあの日から、職員たちは子供たちの期待に応えられそうにないことに強い罪悪感を抱いていた。


『わ、私見ちゃったんです。お姉様が陰でここの孤児院に居る子供たちに暴力を働いているところを。それを見て見ぬ振りが出来なくて……!』


 ある日突然訪れたリリィが垂らした猛毒(一言)と、ほんの少しの善意によって、これまで非常に良くしてくれたシャーロットを蔑ろにするようになった孤児院の職員たち。

 それが感情の増幅を操るスキルによるものだとしても、過去の行いが消えることはない。抗えない力だったとしても、己の本心から発せられた言葉の免罪符にはならないのだと、彼女は身を以って思い知った。


『子供たちに悪い影響を与えますので、もう来ないでください』


 そう、一時の安らぎを子供たちの笑顔に求めていたかもしれないシャーロットに向けて放たれた言葉。その時のシャーロットの悲しみを堪えるかのような淡い笑みが、今でも脳裏を離れない。

 不幸中の幸いと言えるのかどうかわからないが、せめて救いがあるとすれば、リリィの虚偽報告に関することを子供たちに追求しなかったという事だろうか……何らかの経緯で親を失い、繊細で幼い少年少女たちに要らぬ刺激を与えぬための処置だったが、そのおかげであの醜い諍いに関わることなく、訪れなくなったシャーロットを純粋に心配し、それを大人たちは適当に誤魔化していただけに留まっていた。


「ねぇねぇ! シャーロット様って世界中でじぜんかつどー? を頑張ってるんだよね? 前に皆でお話ししたの! シャーロット様にお手紙書いて応援しようって! ちゃんと届くかなぁ?」

「……そうね……。きっと届くわ……!」


 泣きそうになった顔を笑顔で隠し、職員は思い返す。

 シャーロットが旅経つ前。全ての冤罪と誤解が解けた後、彼女は修道服を身に纏い、一度だけ孤児院に訪れたことがある。

 別れの挨拶をする為だ。後ろめたさと罪悪感で一杯で、何を言えばわからぬ職員たちに軽く会釈し、「これが最後になるかもしれないから」と、子供たちとの面会を求めてきた。

 弾かれたかのように慌てて頷く院長と職員の声によって、一斉にシャーロットの元へと集まっていく子供たち。シャーロットはもう会えないかもしれない彼らの為に時間を割いて、いつものように穏やかな時間を子供たちに与えてくれた。

 純粋に来訪に喜ぶ子供たちを尻目に、読み聞かせ一つで神聖な雰囲気すら漂わせるシャーロットをひたすら悲しい目で眺める大人たち。そして孤児院を去る前に、巡礼者として各地を巡る事と、それに伴い滅多に来れなくなることを伝えられ、子供と大人とで別々の感情を示した。

 片や尊敬が入り混じった寂しさを。

 片や安心が混じった申し訳なさを。

 やがて時が経ち、子供たちが真実を知った時のことを考えると、今からでも恐怖で体が震えそうになる。仕方のないことだと誰もが言っても、それだけのことを本心から発せられた衝動でしてしまい、それに加担した。


(それは私たち以外も……)


 こうした慙愧(ざんき)の念を抱くのは、何も孤児院だけではない。

 令嬢とはいえ、シャーロットは貴族として民を守り、支え、導き、多くの結果を生み出してきた。

 そんな彼女が一番苦しい時に手を差し伸ばし、励ましの言葉をかけるどころか、追い打ちをかけ、死刑と聞いて宴でも開きそうな勢いで喜んでいた、シャーロットの世話になった者も、この街には数多く居る。

 リリィが現れる以前の街の雰囲気が恋しい。豊かな領地で快活に行き来していた人々は、今ではこの地を追いやられるように去った聖女の事を思い返しているかのように暗い顔を浮かべている。


「あら……?」


 ふと、人の往来の中に見慣れた侍女姿の女性が目に入る。職員の記憶が確かなら、彼女は何時もシャーロットの後ろに控え、共に子供たちの相手をしてくれていたケリィという名の侍女だったはずだ。

 リリィに唆されてからは姿を見ていなかったが、最後にシャーロットと共に孤児院に現れた時の明るい雰囲気とは正反対に、やつれた表情と痩せて骨が浮き始めた彼女は未だ絶望の淵に立たされているのだということが一目でわかる。

 女性としては荒れきった手は、私事も無く一心不乱に仕事に励んでいる証か……風の噂では、シャーロットに付いて行くことも許されず、帰ってくるかも分からない元主の為に休みも無く館を整え続けているのだとか。

 公爵邸の使用人も似たような者が他にもいると聞く。幸いというべきか、公爵の統治のおかげで生活に影響はないが、彼の妻……つまりシャーロットの母は部屋から出てこないらしい。

 

(一体いつまでこんな日々が続くの……?)


 悪夢は終わったが、それは現実に起こった事でもあった。

 崩壊した首都から流れてきた難民たちの親兄弟、子供は光線や瓦礫に巻き込まれて死に絶え、未だ快復には至っていない国王と、貴族や諸外国からの笑い者にされているという王太子。

 シャーロットという少女一人を最悪の形で欠いたグランディア王国は、目に見えぬ力で少しずつ削り潰されているような気がした。


(ごめんなさい、シャーロット様……前は気まず過ぎて言えませんでしたけど、誠心誠意謝ります。だからどうか、もう一度この地に……)




 そして西の隣国、ベールズ。アルマの地元でもある田舎町。シャーロットは不意に後ろに振り返った。


「シスター? どうかしたんですか?」

「いえ……なにも」


 誰かに、呼ばれたような気がした。しかしそれはすぐに気のせいであると判断し、シャーロットとアルマはローブで頭を隠しながら、町の風景に溶け込むように脇を歩く。

 聖男神教と女神教。対立する二つの宗教が入り混じるベールズの中で、この町は聖男神教の影響下にある。

 あれから時間も経っている。もしかしたらセネルがここに帰ってきているかもしれない。そう思ったアルマとシャーロットだったが、聖男神教の影響が強い町に女神教の修道女がいるのは色んな意味で良くない。

 そこで彼女たちは私服に着替え、更にローブで身を包むことで旅人を装ってこの町に来たのだが、肝心のセネルがこの町に戻ってきていないという情報を得ただけであった。


「セネル……どこに行っちゃったの?」


 アルマはどこにいるかも分からない男を空に向かって呼びかける。

 近隣の町々は粗方探しつくしたものの、肝心の探し人が未だ見つかっていない。セネルの生存を知らせる、彼手製の魔道具の輝きは未だ失われていないので無事であるのはわかるのだが、居ると思っていた候補地が全て潰れてしまっては途方に暮れるしかない。


「魔法一つで飛ばされたというのなら、海へは落ちていないと思います。考えられるとしたら、親切な行商人にでも拾われて遠くへ離れたか……」


 もしくは、奴隷商や盗賊にでも連れて行かれたか。

 そんな最悪の予感が二人の脳裏に過る。聖男神教では奴隷が認められており、その大半は人間以外の種族なのだが、食うに困った貧困層の人間も混じっている時がままある。

 生きていることが、必ずしも安全とは限らない。これは近辺の奴隷商や盗賊の情報を洗い直した方が良いかもしれないと思索に耽っていると、ふと町の外……遥か遠くでも視認できる広大な森が目に映る。


「アルマさん、あの森は?」

「あぁ、あそこはとんでもなく強力な魔物が出る危険地帯なんです。一昔前に探索に入ったお国の軍隊が、一刻ほどで壊滅して帰ってきてからは一般人の立ち入りは禁止になっていて……ただ、不思議なことにあの森から魔物が出てきたことはないから、近づかない限りは大丈夫って」

「……そう、ですか」

  

 もう一つ、セネルがいる可能性がある場所といえば、食料が豊富な森だ。流石に件の森に居るとは考えにくいが、他の森の事なら冒険者ギルドでも情報が上がるかもしれない。

 

(それに……もしゼオが誰にも気付かれずに身を潜めるとしたら……)


 グランディア王国の騎士団を蹂躙した魔物を思い返す。あれから時間も経ち、随分強力な個体になっているだろう。

 流石にアルマを連れて行くわけにはいかないが、自分一人でも探りを入れてみる必要があるかもしれない。


「…………」

「ここは……」


 不意に、アルマが立ち止まる。その瞳を悲観に染めて映し出すのは、焼け焦げた廃屋だ。壁も屋根も燃え落ち、黒く染まった骨組みだけが寂しく残っている。


「もしかしてここが……?」

「……はい。セネルが、小父さんと小母さん、そしてあたしとハンナが暮らしてたところです」


 その胸中に宿るのは郷愁か、はたまた追悼か。本人ですら理解しきれない感情の渦を止めるように胸を抑える。

 恩人夫婦の遺体は既に弔われていた。ここに来る前に墓参りを済ませたが、あの二人の魂が今もここに縛られているような気がしたシャーロットは、両手を組んで天に祈る。

 

「……それでさぁ!」

「やだ勇者様ったら! ふふふふ!」


 そんな時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「アルマさん、こちらにっ」


 ビクリと肩を震わせるアルマの腕を引き、隣の家の物陰へと姿を隠すシャーロットはスキル《結界魔法》のレベル3で覚えた、スキルの影響を跳ね除ける内部不可視の結界ミラージュカーテンを展開する。

 気付かれぬよう廃屋の前へと向けられた碧眼には、案の定勇者カズト。その仲間であるリアとハンナ、そして見覚えのない中年夫婦の姿があった。


「リアの両親まで……! 揃って何を……?」


 商人としてそれなりに羽振りの良い恰好をしていたリアの両親だったが、今は豪商と言っても差し支えの無い装飾を身に着けている。服の生地も高級品だ。

 楽しそうに談笑しながら並び歩く五人は、傍から見れば一家団欒というべきか……しかし、それは親交のあった一家の焼け跡の前でも維持されるべきものではなかった。


「それにしても、さっさとあんなうだつの上がらない道具屋と縁を切って正解だったな! 勇者様が聖男神教とのコネを繋いでくれたおかげで、新たに武器や兵器、奴隷商としての道が切り開けた!」

「本当にねぇ! 今まで「皆の生活の為だ」なんて言って、こまごまとした日用品ばかり作ってちまちま稼いでたアーウィン家に付き合ってたのがバカみたい! そんなところに家のリアちゃんを渡さなくて本当に良かったわ!」


 わざわざ焼けた家の前に立ち止まり、これでもかと嘲笑しながらそんな事を宣う彼らを見て、アルマは知らず知らずの内に爪を手のひらに食い込ませた。

 アーウィン家とは昔からの親交があったはずの商人一家のはずだった。互いの家の子供が楽しそうに遊び、親同士も夜になれば笑い合いながら酒とつまみを口にしていたのも見たことがある。

 そんな彼らが、娘共々アーウィン家を裏切ったばかりか、異種族である自分を受け入れてくれた夫婦を笑いながら殺め、セネルをどこかへ吹き飛ばしたカズトに媚びへつらいながら、報われないかつての親友一家を嘲笑う。


「勇者様のスキルのおかげで、武器と兵器(商品)がタダで手に入り、それを高値で国や教会に売り捌けるなんて、貴方は我々にとって神にも等しい存在だ! 是非とも今後もご贔屓して欲しいものですなぁ」

「ククク……それなら俺の言いたいことが分かるよな?」

「えぇ、勿論! 兵器商人として得た富で人を集め、勇者様の作り出した兵器を装備する最強の軍隊を用意しますので」


 少し前までは安酒で満足していた男は、今や成金趣味を前面に押し出したいで立ちで勇者を煽て、強欲に満ちた瞳をギラギラと光らせる。 


「こうして可愛い娘が新しくできた事だしねぇ! 前から思ってたのよ、ハンナちゃんみたいな可愛い子は、貧乏な道具屋なんかじゃなくて私たちみたいな勇者様と男神様に選ばれた家の子になるのが相応しいって!」

「そうよね、ママ! わたしも本当の妹に出来て嬉しいわ!」

「……今までは子供や妹の幸せの邪魔をする酷い家族に拾われて自分の不幸を嘆きましたが、勇者様と出会い、このような暖かな家庭に拾われたことは何よりの幸せです」  


 少し前まで平民と同じ視線で物を見ていた女は、今や派手な化粧や宝飾品で自分を塗り固め、己の虚栄心に満ちた瞳で二人の少女に微笑みかけた。

 共にセネルを愛していたはずの少女たちにいたっては、まるで彼など煩わしいだけの存在だったように扱っている。その事に、アルマの瞳から涙が一筋零れ落ちた。


「三人とも……ハンナまで、何で……!?」


 足場が無くなったかのような感覚が、獣人の少女を襲う。

 これが自分のことだったら、アルマもまだ納得できた。元々、他種族への差別意識がある聖男神教の影響が強いこの町では、彼女は白い目で見られていたし、ストラウス一家もセネルたちに苦言を呈してきた。

 このままでは、獣人を家族として受け入れ、頭を下げてまでアルマに職を斡旋したセネルたちまで白い目で見られると。

 もし、セネルたちとアルマの今の現状が逆だったなら世の理と諦めようがあった。

 だが、リアやストラウス夫婦にとっての親友であり、ハンナにとっては家族で会ったセネルにたちに対して、物欲の為に死に追いやることが許されることなのか?

 あれだけの仕打ちを、裏切りをしておいて、なぜセネルたちに対して何の罪悪感も抱いていないのか?

 アルマは遠慮して蚊帳の外から眺めるだけだったが、セネルが幸せそうに笑っていた二家族の団欒を目にしていたから、余計にそう思う。目も耳も覆いたくなるような光景、しかしアルマは直視することを止められず、リアの父は見られているとも知らずにカズトに地図らしき物を渡す。


「人生観が一変したようです。我々はこんな貧相な田舎に長々と収まる器ではなかった。これから都へ本拠を移すので、今後はそちらに」

「今日はお祝いよ。夕飯にレストランを予約したから、勇者様もご一緒にどうです?」


 わざわざ焼け跡の前で自らの躍進を見せびらかすように嘲笑い、その上で意に介す価値のない路傍の小石を見たかのようにその場を後にする勇者たちの足音と笑い声をただ茫然と聴くことしかできないアルマ。

  

「……っ……ふ、ぅ……っ!!」


 泣いてはダメだ。セネルはもっと辛いのだから、自分が先に泣いてはダメだ。

 爪が皮膚を破るほど拳を握り、下唇を噛みながら震えるアルマ。もう何をどう想えばいいのかも分からないほど頭が混乱した彼女は、ただ耐えるかのように顔を俯かせるが――――


「……ぁ……」


 その頭を、シャーロットが何も言わずに自らの胸に抱き寄せた。

 温かい体温と穏やかな心音。そして母が子を慰撫するかのような手のひらの動き。それを認識した瞬間、アルマが即興で組み立てた堤防はあっさりと崩壊した。


「~~~~~~……っ!!」


 声にならない泣き声を上げ、アルマはシャーロットの背中に爪を突き立てる勢いで抱きしめ返す。

 きっとシャーロットの服はアルマの涙などで酷い有様になるだろうが、アルマにそれを気にする余裕はないし、シャーロットもそれを気にすることはない。ただ嘆きのやり場として受け入れるだけ。

 叶わぬ恋と諦めながらも、セネルの幸せは続いていくものだと信じていた。どこにでもいる平凡な男として、どこにでもいる平凡な女を娶り、どこにでもある平和な日々を過ごす。そこには彼の家族が全員揃っているはずだったのだ。


「~~~~~っ!! ……~~~~~~~~~っ!!」


 気丈に明るく振舞う余裕も無く、涙は止まらない。引き攣った喉はひたすら呻き声のような嗚咽を零すだけ。

 たとえ人の命が儚く、価値が薄く見られる世界だとしても、正道を貫こうとしたセネルや彼の両親を最後まで大切に思い続け、悼んでくれる人ばかりなどと、いつの間に錯覚したのだろう?

 だが世の道理と個人の感情は話は別。アルマは内に込めた怨嗟を吐き出すように泣き続けた。


 ――――なぜ私を子と呼んでくれた人たちを殺した!? あの二人は殺されなければならないことをしたのか!?

 ――――なぜあんなにも簡単に切り捨てられた!? 無償の信愛を寄せた彼らを、どうして簡単に裏切られる!?


 欲の為に他者を斬り捨てるのがまかり通るのが人の世。そんなことは分かっている。この事が他人事なら、アルマとて対岸の火事と思う部分があったに違いない。

 だが死んだのは第二の両親だったのだ。傷付き、絶望したのは最愛の男なのだ。無残に裏切り、過去を踏みつぶして欲望を選んだのは親友だと思っていた少女たちなのだ。

 その事が恨めしくて、憎らしくて、そして何よりも……悲しかった。   


「…………っ!」


 まるで八つ当たりするかのように背中を引っ掻き、何度も殴りつけるアルマを、千の言葉ではなく一つの抱擁で受け止めるシャーロット。

 小さな町の薄暗い路地の裏。天を仰げは見えるか細く狭い青空に、一人の女の悲鳴が何時までも響いていた。







 そんな様子を、どこか遠い場所から見ていた女は、豪華な馬車に乗って意気揚々と都へ向かう集団を見下ろし、どこか遠い場所に居る怪物に懇願した。

 ――――汝、今こそざまぁをすべし、と。



 

さり気なくこの作品のベースとなった、「好きの反対は無関心とはよく言ったもの」に登場する孤児の女の子を登場させましたが、お気づきでしたか?

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