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カストのステータス

書籍化作品、元むすの書籍化作業が忙しくて投稿が遅れましたことをお詫び申し上げます。

こんな作品ですが、お気にいただければ評価や感想、登録のほどをよろしくお願いします


 セネルはゼオの突然の奇行に首を傾げた。


「ギャウギャウ~」

「……何やってるんだ?」


《鮫肌》のスキルで変化した黒い手が、ザリザリと粉塵を落としながら洞穴の壁を削る。今ゼオがとり行っているのは、住居の拡張作業……ではない。


(食器の次は調度品だ。彫刻とかを大量に作ってたら、誰も俺の事を凶暴な魔物だなんて思わないだろ……!)


 そういう訳で手始めに始めたのが壁画である。セネルの為に用意した篝火で照らされた洞穴の中、《妖蟷螂の鎌》などでデコボコだった壁を平らにし、剣のように鋭い爪が生えた指で下書きを描く。

 そして岩をも簡単に削る鑢状の指先で、立体感が出るよう工夫しながら下書きに沿って掘り削る。前世の人間の時も特に絵心というのが無かったが、一目見れば何をモチーフにした絵であるか、ある程度分かればいいので、ゼオは割と楽しみながら創作活動に勤しんでいた。


(こういう物作りって小学校の時以来だけど、改めてやってみると結構楽しいな)


 母の浮気、父の逮捕の末の死に伴い、友人は全員傍を離れていった。後になって一人友人に恵まれたのだが、今みたいに工作の授業を楽しむ心境などではなかったせいで、こういう楽しみを体験していなかったのだ。

 上手いか下手かは別として、案外こういうのが性に合っているのかもしれない。ゼオはスパイク状の突起が幾つも生えた尻尾をブンブン振りながら、久方ぶりの人間らしい娯楽を堪能していた。


(しかし……もうちょい体を……小さくできたりしないのかね……っ!?)


 しかし、体が大きい事にはメリットよりもデメリットの方が多く存在する。純粋に戦闘能力の増大や荷物運び以外のメリットが思いつかず、反対にデメリットは敵に見つかりやすい、地上での《透明化》のスキルの有用性が無くなる、狭い場所に入れない、木々を掻い潜れない、食事量が多いなど、思いつく限りでも枚挙にいとまがない。

 そして中でも大きい部類に入るデメリットが、細かい作業が出来ないというもの。現在ゼオは古代エジプトの壁画のようにデフォルトされた人間や恐竜の壁画を削りだしているのだが、目や口などの細かい個所を、この太く大きな指では削ろうとすれば削りたくない場所まで一緒に粉塵に変えてしまうのだ。


(こう……爪先で地道にやっていけば、あるいは……!)


 壁画は洞穴の壁一面にも及ぶ、ゼオの体躯に合わせられた大きさを誇る。それを爪先で削っていくと遅々として進まないが、時間がいくらでもある。焦らずじっくり掘り削ろうと意気込んだ矢先、セネルがゼオに呼び掛けた。


「おーい、ちょっとこの肉を切り分けてくれ」

「グォオオ」


 その言葉を聞いたゼオは一旦作業を中断。洞穴の外に出て、切り倒した木とヤシの葉に似た大量の広葉で作られた屋根の下にある台所にまで、ズシンズシンと足音を立てながらやってくると、そこには乾燥させたピンクツリーの実を石ですり潰しているセネルが、木にぶら下げられた二メートル近い体躯を持つ巨大な兎を顎で示していた。


「血抜き、終わったみたいだから」

「ガアアア」


 頑丈な太い(つる)で吊るされた兎を下ろし、右手を鎌に変化させて毛皮を剥いで肉を切り分ける。


(この森って、こういう食料も豊富だから助かるんだよなぁ)



【ギガントラビット】

【その巨体から魔物と勘違いされていたが、実はれっきとした動物。繁殖力が高く、猪や熊のように世界中のどこにでも生息し、農作物を荒らす害獣であるものの、その肉は独特の匂いがありながらも食用として親しまれている。しかし、その体躯故に時には人を齧り殺してしまうことも……】



 魔物の血肉は腐りきった生ゴミのような匂いがすることから、まず食用には向かない。しかし肉を食わなければ力が出ないので、ゼオとセネルの主なエネルギー源はジビエや禽獣(きんじゅう)とも呼ばれる独特の匂いを放つ食肉になるのだ。


(それにしても……俺の住居もだいぶ見栄え良くなってきたな)


 セネルを拾ってから二週間。食料調達や彼の介護以外の時間は暇を持て余していたゼオは、着々と住居作りに勤しんでいた。

 屋根付きの台所はコンロに見立てた焚火を三方向囲む岩と、その上に鎮座する石製の鍋。その隣には鉄板に見立てて加工した一枚岩が四隅を岩で持ち上げられており、更にその隣に、今まさにセネルがオウカンダケを石包丁でカットしているまな板代わりの四角形に斬られた岩。

 洞穴の入り口には申し訳ない程度ではあるものの、オベリスクのような尖塔が両脇に設置され、周辺の木や雑草は全て掘り返されている。隅に置かれた岩は全て石材に加工し、石畳のようにしてより見栄えを良くするつもりだ。


(秘密基地感がより出て来たな。これで断崖にも壁画を掘って、彫像とかも置いていけば、ちょっとした神殿と思われるんじゃなかろうか?)


 頭の中で想定する住居の完成図。そしてそこに訪れる人々と、穏やかに戯れる自分の姿を妄想してニヤニヤと口を歪めるゼオ。


「グルルルルル……」

(なんだ……? 急に笑いだして)

 

 ここ最近、鳥獣の肉の切り分けに使いまくっているおかげでスキルレベルの向上が目覚ましい《妖蟷螂の鎌》でギガントラビットの肉を適度な大きさに切り分けられたものを渡されたセネルは、どことなく上機嫌なゼオを見上げながら、軽くため息を吐いた。


(言語を介したり、彫像を掘ったり、果てには台所作って草むしりまでして、喜怒哀楽まで分かりやすい。つくづく人間臭い奴だな)


 この肉だってそうだ。初めは血肉を生噛りするのかと思いきや、調理器具まで作ってセネルが食べやすいように工夫しようとしていたのだ。

 ……もっとも、指先が太すぎて上手く料理することが出来ず、結局調理はセネルがする羽目になったのだが、見つけた香辛料やキノコ類のみで味付けされた粗雑な料理を、実に美味そうに食べられては悪い気はしない。


(まったく……俺はこいつを利用しようとしているってのに……)


 勇者とぶつけるつもりで仲良くなろうと考えたのがつい一週間前。しかしその考えは早くも揺らぎそうになってしまっている。

 彫刻で一喜一憂する背中。キメラの頭に乗って、一緒に食材探しをする時に下から聞こえる下手な鼻歌。魔物の襲撃から身を盾にして自身を守る姿。どれも自分の都合で勇者と戦わせようとするセネルが後ろめたくなる様子ばかりだ。


「ほら、出来たぞ」

(ひゃっほーうっ! 腹減りじゃー!)


 そんな感情を押し殺し、悟られぬように表情を取り繕ったセネルは、自分が食べる分を器に盛りつけ、鍋に入っている分は全てゼオに差し出す。石鍋に満たされているのは、ギガントウサギの肉をピンクペッパーで匂い消しして、ゴボウと一緒に煮込んだスープと、オウカンダケや川魚の串焼きに、各種フルーツ類。

 作成系スキルがあるおかげか、セネルは手先が器用で料理達者だ。地球のキャンプとかでも食べられそうな食事に喜んでありつこうと、ゼオがまだ熱を発している石鍋を持ち上げ、中身を啜ろうとしたその瞬間、遠くの方から爆発音が聞こえてきた。


(な、何だ……!?)


 石鍋を再び火の上に置き、辺りを見渡す。少なくとも近辺で起きたものではないと直感すると、ゼオは鷲の翼を大きく羽ばたかせた。


「何の音だ……? 何かが戦っているのか?」

「グォオオッ!」


 ここで少し待っていて欲しいという意を込めて鳴き声を上げ、ゼオは周囲の木々よりも高く跳躍し、飛翔を開始。それと同時に《透明化》のスキルを発動。今の巨体では遮蔽物の多い地上で真価を発揮しきれないが、何もない上空でなら誰にも気付かれずに移動できることくらいは出来る。


(何があったのか確認しねぇと)


 爆発というのは殺傷力が高い。《火炎の息》という爆弾にも似たスキルを多用するゼオはその事を良く分かっていた。もしその手のスキルを持つ魔物であるならば、先んじて倒すか対策を練るなりしないと危険かもしれない。


(正直、今の俺をどうこうできる魔物なんてそうはいないと思うけど、今は俺一人の身を守れば良いってわけじゃないからな)


 セネルを守らなければならない。その為にも情報が必要だ。透明と化したゼオは音がした方角……というよりも、今まさに白煙が昇っている場所へ一気に移動する。

 件の音の正体を見極めたのは森と平原の際。上空で停止し、見下ろした先の地面には、恐らく元はゴリラに似た魔物の上半身が吹き飛ばされており、その正面には茶髪の少女と緋色の髪の少女、そして黒髪の少年が立っていた。


「あー! ここ一週間ずっと雑魚ぶち殺して、ようやくちょっとスッキリした。あのシスターめ……あの訳の分からねぇスキルの正体を見極めたら、これでもかってくらい辱めて俺の奴隷にしてやる!」

「ちょっと落ち着いて、カズト。腹立つのは分かるけど、あんな女の事でいつまでも苛立つなんて勇者らしくないわ。ほら、今日も一杯ベッドの上で慰めてあげるから」

「そうですよ、カズトさん。あの女の事なんて忘れて、今夜もいっぱい楽しみましょう」  


 何やら相当苛立っている少年を宥める二人の少女。言っていることは何やら如何わしく不穏だが、ゼオの視線は少年が持っている、魔物を倒したと思われる武器に釘付けだった。


(嘘だろ……あれってバズーカ!? 何で中世風の剣と魔法の異世界にそんなオーバーテクノロジーがあんのさ!?)


 それは地球でも一般人がその目で見ることなどまずありえない兵器だった。爆発音の正体がなんなのかは分かったが、それを扱う少年が何者であるのかが気になったゼオは、当然のように《ステータス閲覧》を発動した。


 名前:村上和人

 種族:ヒューマン

 Lv:153

 HP:2987/2987

 MP:2956/2956

 攻撃:1902

 耐久:521

 魔力:2098

 敏捷:2004


 スキル

《栄光の神権:Lv--》《言語理解:Lv--》《空間収納:Lv--》

《武器創造:LvMAX》《縮地:Lv6》《自動追尾:Lv7》

《気配探知:Lv5》《魔力探知:Lv2》《雷電:Lv8》

《衝撃波:Lv8》《HP自動回復:Lv2》《MP自動回復:Lv3》

《臨界突破Lv2》《炎魔法:Lv3》《氷魔法:Lv3》

《回復魔法:Lv4》《身体強化:Lv3》《魔力攻撃強化:Lv4》

《状態異常耐性:Lv2》


 称号

《異世界の来訪者》《勇者》《悪漢》《絆を引き裂く者》

《Aボーイ》《不義の(ともがら)》《性欲の権化》《ハーレム志望》

《嫉妬の亡者》《虚言癖》《腐った性根》《変質者》

《レベル上限解放者》


そろそろ、この勇者の愛称はカストで正式決定で良いと思っています。

この作品もとうとうレビューを頂くようになって、感慨深いものがありますが、元むすにもこの作品にもレビューに巨乳に対する言及がありました。

理由は分かってますよ。ヒロインが揃いも揃って巨乳で、そこを強調してるからだってことくらい。実際、僕は完全な巨乳派ですし。

勘違いして欲しくないのですが、別に貧乳が嫌いという訳ではありません。実際高校時代……寮生活だったのですが、深夜テンションで友達が貧乳の素晴らしさを熱く語ってるのを聞いた時は感心したものです。

ですが、あえて僕は巨乳の素晴らしさを一言でお伝えしたい。趣味嗜好は本能のようなものなので、多くは語れないので本当に一言だけ。

大小判「巨乳は……揺れるんです」

こんな話を高校時代本当にしてました。長々と下らないことを書いて申し訳ありません。何か巨乳が話題に上がったのでつい勢いで書いてしまいました。

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