エピローグ(後書きに人物紹介あり)
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未だに続く王都の復興作業。町の住民たちは、瓦礫の撤去と並行して遺体の処理、女神教の神父による埋葬などが行われていた。慌ただしい瓦礫と化した表通りからは見えない倒壊した裏通り、そこにあるゴミ捨て場で魂が抜けたかのようにブツブツと呟き続ける、縮れた黒髪を持つ薄汚れた男が一人膝を抱えている。
「……シャーロット様が……嘘だ……あの女の言ったことが全て嘘だったなんて……だったら俺は何のために……」
聖者も人間だ。清貧な心にも濁りはあるし、遍く全ての救いをもたらすことなどできはしない。彼に何があったのかはともかく、いずれ失意のうちに死ぬであろう者に都合よく手が差し伸べられることもない。事実、彼を救えるであろう聖者は千里眼など持っておらず、ここから離れた場所に位置する、王都に建てられた教会に身を寄せているのだから。
「これが、シャーロットちゃんが寝てた間に起きた顛末よぉ」
「……ありがとうございます。ウォーロット枢機卿」
「今はラブって名乗ってるの。それかママで通ってるわぁ。どっちか好きな方で呼んでちょうだい」
デスコル風邪を患った状態で無理を通し続けたことが祟り、シャーロットは衰弱した体を癒すためにこの一ヶ月間を殆ど寝て過ごしていた。そしてゼオが飛び去った後、この国の有力者を取り巻く状況をラブから聞いた彼女は、ベッドの上で上体を起こしたままラブに頭を下げる。
「それより、ごめんなさいね。ワタシ、あの子のことを悪者扱いしちゃったわ」
「そんな……ママさんが気にすることではありません。状況やあの子の性格を考えれば、何もかも納得してしまいましたから」
「あら、そっちの名前で呼んでくれるのねぇ」
冗談めかした口調で小さく笑うラブに、シャーロットも淡く微笑む。ラブのスキルである《思念探知》の力で得たゼオの情報、その想いの全てを伝えられたシャーロットは、悲しみと共に実にゼオらしいという達観に似た感情を抱いていたが、その目に曇りはない。
「貴方は教会に所属した私の後見人になってもらいましたから。ある意味、親という立ち位置かと思って」
「……それじゃあ、行くのねぇ?」
「はい……巡礼者となって各地を回り、あの子を……ゼオを見つけ出します」
ゼオがどんな覚悟で戦い、どんな想いで泥を被って飛び去ったのかを知ってしまったシャーロット。ラブから聞いた話が全て本当であっても何ら不思議ではないと確信した彼女は、遠い空の下に居るであろうゼオのことを想った。
外敵に容赦がない割には、大切な人には優しくて、彼らが傷付けられるようなことがあれば命を賭して戦う勇敢な怪物。そして、シャーロットがこの世で最も大切に思っている存在。
そんな彼がどこか遠い場所で寂しい思いをしているのではないかと思うと、立ち止まってはいられなかった。事実、自身もまた心に空洞ができたかのような寂しさを感じているのだから。
「漢の覚悟に背くようなことかもしれないけれど、貴女にだけは教えないとって思ってねぇん。特に口止めされたわけでもないしぃ」
「ふふ……。それにしても驚きました。あの子の精神と魂が人の男性のものであったなんて」
「彼に伝える意図はなかったようだけど、情報と一緒に駄々洩れになってたのよぉ。今までにない事例よねぇ。少なくともワタシは聞いたことが無いわぁ」
そう、人の男だ。体はキメラでも一人の男が、絶望と悲劇の渦中にいた女のために戦い抜き、女の幸せな未来のために自ら汚名を被って別れを告げたのだ。物語に出てくる王子のように美しくもなければ随分と泥臭い行動だが、シャーロットは以前から胸の奥に宿っていた慈愛とは別の熱い衝動と高鳴りを自覚した。
この感情には覚えがある。かつての婚約者に感じていたもので、その時とは比べ物にならないほど大きな、人間の感情に根差す気持ち。
「ママさん……私、ゼオに会いたいです。勝手に一人で決めて別れを告げたことに対して怒ってたりしますし、まるで弟に対する心配がありますが、それ以上に私がゼオに会いたいのです」
「……そう」
ラブは尊いものを見るかのように目を細める。魔物の身も人の身も超えて宿った想いの名に気付いたシャーロットの行動は早かった。貴族籍から抜けさせられたこともあって、すぐさま女神教に正式に入団。政治から自らを切り離し、民草のために祈るシスターとして歩みを進めようとしている。
そしてそれは、大義のためだけに生きるという王侯貴族の殻を破り、シャーロットが他者と自分自身のために生きる決意が示した道でもあった。
「巡礼は大変だけれど……シャーロットちゃんにはそっちの方が良かったのかもねぇ。バカにするつもりはないけれど、貴女って明らかに貴族や王妃なんて向いてなさそうだし」
「そうでしょうか? ……そう、かもしれませんね」
公爵令嬢として育ち、次期王妃として教育を受けてきたシャーロットだが、貴族の責務というのは時に大勢のために少数を無残に切り捨てる非情なもの。シャーロット自身はそうする日が来ることを覚悟していたし、実際に歴史に名を遺す為政者にもなりえた逸材だが、できることと向いているかどうかは話が違う。
時に非情に振舞わなければならない王侯貴族として生きていくには、シャーロットは心が優しすぎた。
「ワタシは貴女は立派なシスターになれると思うわぁ。そうなれるよう、教会のルールや仕事を叩きこんであげちゃう♡ ……でも、その前にまずケジメだけはつけないとね?」
「……はい」
シャーロットの面会許可が下りたと聞いて真っ先に動いたのは、リチャードとハイベル公爵家の三人、その使用人の代表である執事長とケリィだった。面会場所は王都の教会の一室。本来ならば王侯貴族に足を運ばせるのは良くないのだが、今回はシャーロットが病み上がりであるということと、彼女に対する仕打ちが考慮された結果となる。
「父上……姉上は僕たちを許してくれるのでしょうか……?」
「分からん……分からんが……それでも、謝罪だけはしなければならん」
応接室のソファに座るギリアムの隣で、シャーロットに会えると聞いて無理を通して訪れたエルザがまた静かに泣き始めた。その後ろに控えるように立つのは、失った片足の代わりに魔導義足を装着し、松葉杖をつくロイド。壁際には執事長とケリィ。彼らは一様に重苦しい空気を発していたが、上座で一人掛けのソファに座るリチャードはどこか能天気だ。
(大丈夫。心優しいシャーロットなら、誠心誠意謝罪すればきっと許してくれる。何より私たちは、あんなにも愛し合ったではないか。元凶を取り除いた今なら、もう一度あの日に戻れる……!)
確かにシャーロットはリチャードよりも有能で、それに気後れしていた。それでも彼女が婚約者であることに不満などなく、むしろ誇らしく思っていたのだ。あの美しい少女と生涯を共に歩む。それがリリィに狂わされる前のリチャードの願いで、目が覚めた今の彼が抱く願いだ。
「……大変お待たせしました」
ここ最近、ずっと聞きたかった鈴の音のような可憐な声が扉を開ける音と共にリチャードたちの鼓膜を震わす。部屋の入り口を見ると、女性の女神教徒が着用する修道服に身を包んだシャーロットが、ラブと共に入室してきた。
「シャーロット……なぜそのような服装を……?」
グランディア王国において女神教は王侯貴族に不干渉としている。貴族の血筋である彼女が修道服を着るということは、政権を持つ立場を放棄するということ。貴族であることを止めて市井に降りるという無言の意思表示だ。それを察したハイベル公爵家一同はより一層暗い表情を浮かべるが、貴族籍に帰属することを前提としてやってきたリチャードからすればその服はこの場に相応しくない。
「……っ!」
着替えるように促そうと近づくと、シャーロットは僅かに肩を震わせて表情を強張らせる。それもそのはず、シャーロットはつい一月前にラブ以外のこの場に居る者たちに手酷く罵倒され、殺されかかったのだ。むしろ泣き叫ばず、気丈に振舞おうとしているだけでも彼女の精神力の強さが窺えるが、近づいてほしくないというのが本音だ。とは言え王子に対して無礼を働くわけにもいかず、どうしたものかと一瞬判断に迷っている間に、ラブがその巨体を割り込ませた。
「はーいストップ。あまり近づかないでくれるかしら? この子に無体をするのは、母親代わりとして見過ごせないわ」
「は、母親……? 後見人という意味か? どちらかと言うと父お」
「あぁんっ!?」
ドスの利いた声と凄まじい眼力に怯み、リチャードはそのまま自分が座っていたソファに座り直す。
「先に行っておくけど、ワタシがここに居るのはあくまでシャーロットちゃんを見守るため。この子に乱暴したり、王侯貴族の権威で脅そうとしない限り、無暗に口を挟むつもりはないから」
それだけ言って俯瞰の体勢を決め込むラブ。
「シャーロット……あの……今まで本当に、ごめんなさい」
「弁明のしようがないとは思っている。しかしそれでも謝らせてほしい。出来うる限りの償いもするし、お前の部屋も元に戻したのだ。静かな療養には丁度良いと……」
「いえ……いいんです」
シャーロットはギリアムの言葉を遮る。
「もう……いいのです」
それは屋敷に戻るという意味だけではない、あらゆる意味が含められた遠回しな拒絶だった。シャーロットとギリアムたちが発する言葉を決めかねている中、リチャードだけは先んじてシャーロットに対して媚びるような視線を向けて言い募る。
「すまない、シャーロット。あの悪女の策謀に嵌められ、君に酷いことをしてしまった。私はとんだ愚か者だ。しかし君の優しさを思い出して目が覚めたよ。今こそ私の婚約者として返り咲き、末永く私を傍で支えてほしい。君が私を愛してくれるように、私も君を生涯愛し続けるから」
流れるような言葉遣いで謝罪と要求を一度にこなすリチャード。事情が事情なのだ。シャーロットなら自分たちを憐れんで再びこの手を取ってくれるはずだと、彼は信じて疑わない。……しかし、シャーロットの返事は彼が期待していたものとは全く別だった。
「……王太子殿下。次いでハイベル公爵閣下」
今までとは違う、完全に他人としての呼び方にギリアムたちは一斉に息を呑む。そしてこの後の顛末は予想通りであったと確信してしまった。
「事の顛末は全て聞きました。貴方方に起きた不運を想えば、私も胸が締め付けられそうな想いです」
「そ、そうなんだ! 全てはリリィのせいであって、私の意思とは……!」
「ですが」
一瞬喜色ばんだ笑みを浮かべてシャーロットの両手を握ろうとしたリチャードだが、続けて放たれる言葉に絶句することとなる。
「……ですが過去は消えません。いくらスキルの影響で疎まれようとも、貴方方がどのような目で私を処刑台に送ったのか、一生涯忘れられそうにないのです」
「シャーロット様……」
ポツポツと語るシャーロットの言葉を……ただ自分たちのしたことを忘れられないと言われたギリアムたちは俯きながら震えることしかできない。それは、あの優しいシャーロットに初めて確執というものを抱かせてしまった己の不甲斐なさと、そうさせたのが自分たちであるということを理解してしまっているから。
娘として、姉として、友人として親愛を向けられていたにも拘らず、それら全てを蔑ろにして負の感情を押し付けた自覚があるだけ余計に。
「な、何を言っているんだ……? シャーロット」
この場でただ一人理解していないのは……いや、理解したくないと無意識に理解しないようにしているのはリチャードだけ。しかしそんな彼もシャーロットの雰囲気を見て、必死に目を背けていたことから逃げられなくなっていた。
「ごめんなさい。ハイベル家の皆様は今まで良くしてくれたのに、私は貴方方の事が嫌いになってしまいました」
「姉上……謝らないでください……! 我々は、貴女の心に取り返しのつかない傷を……!」
「……この度の一件、もはや時間の川に流すことしかできないと思います。このまま無理に共に居たとしても、互いに互いを傷つけあうだけのように思いますから。……これまで育ててくれたことは忘れません。……さようなら」
もし私を哀れに思うのなら自由にさせてほしい。そんな思いを感じ取り、ただただ沈痛な表情を浮かべる男三人と、遂に泣き崩れるエルザとケリィ。もう貴族籍に戻るつもりはないと告げた彼女の後を追うことが出来るケリィは職を辞してシャーロットの傍で贖罪を続けたいという思いが強かったが、それすらも許されていないのだ。
告げることは告げたとしてその場を立ち、ラブと共に部屋から出て行こうとするシャーロットをリチャードは慌てて呼び止める。
「待ってくれシャーロット! 君にしてしまったことを自覚した時から、ずっと後悔していた。私はまだ君の事を愛しているんだ! 頼む、もう一度私の元へ戻ってきてくれ!」
「殿下……」
「それに、このまま一介のシスターになって何になるって言うんだ!? 確かに女神教は男女交際や婚姻は自由だが、私以上に君を愛せて、なおかつ権力と富を有する男など居ないだろう!? 君の幸せは、私の隣にこそあるはずなんだ! だから!」
シャーロットはジッと、感情を伺わせない瞳でリチャードを見る。彼本人は自分に別れも告げずに立ち去ろうとしたシャーロットに危機感を覚えているようだが、悲しい事にシャーロットの心は凪いでいた。
「王太子殿下……確かに私もあなたのことを愛していました」
「おぉ……! それでは……!」
「ですが、全ては過去なのです。私はもう、個人として貴方を愛することができません。とても……とても大切な存在ができてしまいました。不器用で卑屈で、でもとても優しくて勇敢な、私がこの世で一番大切に想う、そんな存在が」
大切な存在。そう告げた彼女の表情が、これまで見たことの無いほどの熱を帯びていることに気付いてしまう。そこに男の影を感じたリチャードは胸が押し潰されるような嫉妬を感じながらシャーロットに言い募る。
「な、何故だ!? 私たちはあんなにも愛し合っていたではないか!? 前と同じように……いや、それ以上に恵まれた暮らしを王族として約束する! なのに……なのに君は、そんなどこの馬の骨とも分からない男を選ぶというのか!?」
「確かに付き合いは長くありません。ですが、あの暗く狭い部屋に押し込められた私の孤独を癒し、死に行くこの身を救ってくれたのは他ならない彼なのです。私は、彼と生涯を共にしたい」
「や、止めろ……止めてくれ……シャーロット!」
リチャードたちは種族の違いなど知る由もないが、当の本人から違う男への情愛の言葉を聞かされては堪ったものではない。それが常に控えめで熱の籠った想いを胸に秘めることが多かったシャーロットが口にする分余計に。
「今までの私なら、きっと貴方がたのことを憐れんでしまい、本心からの選択を選べなかったかもしれません。ですが、彼はそんな私に幸せになれと願い、遠い空の下へ向かいました。だから私も後悔のない選択をし、彼の決意に報います」
だから告げなければならない。たとえかつて愛していたリチャードを傷つけることになろうとも、お互い前へ進むために。
「王太子殿下。貴方がリリィへ心変わりし、私を処刑台へ送ってから……彼が私を救い、道を示してくれた時から……もう貴方に微塵も関心が持てません」
好きの反対は嫌いではなく無関心とはよく言ったものだ。ハイベル公爵家には悲しみの視線を向けていたシャーロットが、生まれて初めて見せる無機質な視線に、リチャードは動けなくなる。
そのまま一礼して重苦しい雰囲気を発するかつての家族を置いて退室するシャーロットを何とか追いかけようと手を伸ばして立ち上がるが、リチャードは自分が履いているオムツの中に湿った泥のような存在を自覚する。
王子として、一人の男として急に恥ずかしくなった彼は、屈辱と羞恥にただ打ち震えることしかできなかった。
三日後、ラブと共にゼオが飛び去ったという西にある教会を目指して幌馬車に揺られるシャーロットは、すっかり遠くなった王都を見ながら憂いと共に呟く。
「……あれで良かったのでしょうか? あの人たちに対し、冷淡になり過ぎたのではないかと、今でも思うのです」
「あれが今のシャーロットちゃんの偽らざる本音、でしょ? 確かに悪業や負は褒められたものじゃないけど、それと戦う気高さこそが人の美しさよん。その真価は、これから貴女がどれだけ良心と向き合えるかに問われるわぁ」
それに、とラブは続けて告げる。
「神様にだって止められない女の子の本懐を、いったい誰が止められるっていうのかしらぁ?」
ラブの言葉をどこか可笑しそうに微笑みながらひとまず納得し、シャーロットは揺れる幌馬車から空を眺める。蒼穹には自由に舞う鳥の影があった。
(ゼオ……貴方も同じ空を見上げているのでしょうか?)
これからシャーロットは修道女としての役目を学び、過酷な旅路を進む人生を送ることとなる。それは定められた将来と不自由がある代わりに安全と裕福な暮らしが保障されていた貴族としての人生ではなく、何が起きても全てが自己責任の世界。
普通の少女ならば不安に思うだろうが、彼女の心は実に軽やかだった。普段乗っていたような馬車の中では感じられない草と土の匂いも、幌を吹き抜ける風の感触も、遠くに聞こえる河のせせらぎも、貴族であれば知る由もなかった新鮮さ。
(あぁ……そうか。これが……)
保障が無くなった代わりに、今まで彼女を雁字搦めにしていたしがらみが一斉に引き千切られる。責務に追われることなく、ただ自分の歩みで過ごせるこの清々しさ。その切っ掛けをくれたのは間違いなくゼオだ。
今の彼女であればどこにだって行ける。過酷さなどというのは、願いへの対価なのだ。貴族のしがらみも、誰のものとも分からない呪いも、胸の熱い想いを秘めた少女を止めることはできはしない。
シャーロットは……もう自由だ。
そんな花が満開に咲くような穏やかな笑みを浮かべ、風に舞う髪を押さえながら空を眺める少女を、どこか遠い場所から眺める九本の黒い鎖で束縛された女は幾度も殴り蹴られてボロボロになりながらも心底幸せそうに微笑んで見ていた。
「良かった……本当に、良かった……!」
彼女がなぜ泣くほど喜んでいるのかなど、今は誰も理解していないのだろう。その答えは、女の目に映るステータスだけが物語っていた。
名前:シャーロット
種族:ルシフェル完全体
Lv:1
HP:162/162
MP:2341/2341
攻撃:101
耐久:110
魔力:1598
敏捷:121
スキル
《無神論の王権:Lv1》《再生魔法:Lv1》《浄化魔法:Lv1》
《結界魔法:Lv1》《回復強化:Lv6》《毒耐性:Lv5》
《呪い耐性:Lv6》《魔力耐性:Lv8》《精神耐性:Lv5》
称号
《元令嬢》《厚き信仰》《女神の信者》《良心に耳を傾ける者》
《淑女の鏡》《慈悲の心》《聖女》《癒しの導き手》
《献身の徒》《解放されし魂》《レベル上限解放者》
「どうか……貴女の未来が明るいものでありますように……」
そう言って、女は微笑んだまま痛みによって意識を手放した。
しかし、祝福する者もいれば、影のように悪意を撒き散らす者もいる。
「忌々しい■■■■■め……! このような形で私の邪魔をするとは……!」
男は女の血で汚れた手を握り締めながら忌々しそうに独り言を呟く。
「こうなっては仕方あるまい。これ以上邪魔をされないように、残りの〝実〟を植え付けるしかない」
醜悪で残虐な笑みを浮かべる男は、どこか遠い世界からキメラの姿を眺めながら決定する。
「この薄汚い魔物の魂の同郷とあれば、奴と同じ境地に辿り着ける者もいるだろう。候補は多いに越したことはない」
「今こそ、勇者召喚を始めよう」
これで第一章は終わりました。下に人物紹介を張り付けておきますね。
・ゼオ
本作の主人公であり、竜の上半身と獣の足、鳥の翼とスパイクが付いた尻尾を持つ、体長が小屋ほどあるキメラ。日本男子高校生としての記憶と魂を持っており、価値観が人間のまま。だからシャーロットに惚れちゃった、魔物な外見からでも分かるくらい人間臭いキメラ。
性格はシャーロットが推察したとおり、卑屈で粘着質で不器用な上に根に持つタイプ、しかし恐怖を押しのけられるだけの勇気を持ち、大切な人は守りたいと願うくらいには良識的。
種族は現在バーサーク・キメラ。色んな伏線のおかげで理性を取り戻したが、それまでに街やら人やらに被害を与えすぎて泣く泣くシャーロットの元を離れた。次なるざまぁを求め彷徨う……という訳ではない。傍から見ればどう見えるかは置いておいて。
感想でも割と好評だったのが性格と、ドラゴンが混じったキメラという要素。純粋なドラゴン物より楽しめたと嬉しい感想も。
……実は、シャーロットとちゃんと結ばれる為の伏線が、ステータスのどこかに隠されている。18歳以上で想像力がある男性読者様ならきっとわかるはず。
・シャーロット
本作のヒロイン。金髪、令嬢、聖女、巨乳、母性本能が強い、性格は慎ましくも慈悲深く、大抵の人に優しいと、結構属性が多い人。感想でもその聖女っぷりに定評あり。年は17で、身長は160センチくらい。バストサイズは本文参照。もしくは《鑑定》スキルで。
王国でも名門である公爵家の出で、次期王妃として教育を受けてきたが、本人は時に非情にならなければならない立場よりも、シスターとして日々祈り、自分の良心に素直になり、のんびり暮らせる方が性に合っている。
リリィが原因で家族や婚約者などから疎まれ、人生で一番辛い時に、まだ小さかったゼオと出会う。それ以降、ようやく救いを見出して日々の楽しさを取り戻したが、後に病気に患っている最中に連行→処刑台送り→ゼオに救出される→故郷に住む親類縁者と縁を切る→ゼオと再会する旅に出ると、結構波乱万丈な日々を過ごす。
害ある存在や敵対者と戦う気構えはあるが、基本的には博愛主義者であり、恋愛対象は外見よりも中身で決めるという、世の「良い人なんだけど恋人にするのとはちょっと違う」と言われてフラれる男の強い味方。貧乏でも隣で寄り添い、有能な才覚で伴侶を支えるダメ男製造機。得意技は膝枕とおっぱい枕、添い寝に背中流し、耳掃除に頭や背中を撫でる等等……というのが未来の彼女。
恋愛対象の外見には本当に拘りが無い。それがたとえ油ぎったデブでも、オークやゴブリン級のブサイクでも、人外でも……性格良ければ大抵は許容できてしまうタイプ。
・ラブ
女神教屈指の肉体派にして漢女。ゼオとシャーロット、互いを想い合う一頭と一人を導いた良いオカマ。実は枢機卿という最高幹部クラスで、次回登場する時にはステータスがどえらい事になってそうな人。教会と酒場を併合し、ならず者にも女神の教えを授ける型破りで凄い人。女子力が高いのはステータスでも分かる通り。
・リリィ
第一章のラスボス。自己中、傲慢、強欲、貧相、権力欲が強い、性格は最悪の一言で、自分以外の人間を手駒と考えるなど、かなりビッチ要素が強い人。感想でもざまぁされた時は気分爽快という読者様が大量に続出した。自分よりも優れている女が気に入らないのでシャーロットに危害を加えたらしい。その結末は最底辺の女となって晒し者になりながら死ぬという、お似合いの末路。ちなみにピンク髪だが似合っていない。ゼオ曰く、平凡な顔の日本人のコスプレ。
・ケリィ
シャーロットの専属侍女で親友だったメイド。過去形なのであしからず。
シャーロットには命の恩もあったが、容姿も性格も完璧なシャーロットに気後れしていた部分もあり、そこをリリィに付け込まれた。やることは狡い割にはえげつない。ざまぁ終了後は、失意の底で遊びもなく仕事に明け暮れる日々。生活を保つ以外に給料使わなさそうな感じで。
・ロイド
良くも悪くも真っすぐな気性をリリィに付け込まれた、シャーロットの弟。子犬系美少年で、騎士を目指していたがゼオに片足を切断されて、今まで学んでこなかった領地経営などを勉強することに。ただでさえざまぁでシャーロットに対する罪悪感でいっぱいだというのに、将来は兄の妻と公認の浮気をしなければならないという。
・アースト
ゼオと似たような感じでシャーロットに救われておきながら、自己中心的な愛にシャーロットが報いてくれないからと逆ギレしていた人。しかもヤンデレ気質のくせしてあっさりリリィに唆された。ゴミはゴミ箱よろしく、教会飛び出して今の住居はゴミ置き場。
・リチャード
遥か遠い未来でも笑い者にされるオムツ王子。何かにつけては脱糞するようになったのは、ゼオの両人差し指のせい。シャーロットに対して強い劣等感を抱いていながらも心の底から愛していたのだが、当の彼女はキメラのオスに夢中。胸を張って誇れるものが地位しかなく、シャーロットもこいつのどこが良かったのか作者自身も疑問に思ったほどだが、「ダメな子ほど可愛い」という、シャーロットらしい理由で慕っていた……のだが、やり過ぎて無関心になった。
・エドワード
初登場時に無駄に偉ぶっているが、事務能力はシャーロットの方が遥かに格上。プライドだけはやけに高いが、動機不明のまま父である宰相が犯した重罪の尻拭いとして毒杯を飲まされた。
・アレックス
騎士団長の息子で無駄に強そうな設定と引っ提げてきたが、あっさりとゼオに両腕を切り落とされた。称号に《かませ犬》が増えていそう。騎士団の事務を担当することになるが、学が無さ過ぎて超絶苦戦することに。
・ルーファス。二度にわたりゼオに股間を潰され、完全に不能となったシャーロットの兄。リチャード同様、妹に深い劣等感を抱いている。将来自分の妻を弟の寝室に送ることが決まっているが、そもそも結婚相手にすら不自由しそう。
・ハイベル夫妻
空気な人。シャーロットの親だけあって良識的ではあったが、リリィに唆された。
・謎の女
ゼオの精神世界に出てきて、遠くからシャーロットを見守る、正体がバレバレであることに定評のある人。どうやらゼオの転生に関わりがあるらしいが……?
・謎の男
リリィにスキルを与えて唆した謎の人物。正体がバレバレであることに定評あり。性格はすごく悪そう。




