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フィンダーの中の世界  作者: 羽都
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 ピカピカ光る携帯を眺めながら、私は電源を切った。

何もかもを捨ててしまうつもりで、お世話になっていた仕事を辞めた。

店長は、私の顔を見て困ったように笑い、そして「何となくわかっていたよ」と言って私から辞表を受け取った。

仕事を辞めてから色々な人から連絡がきていた。

だけれども誰にも返事をしていない。出来なかった。

母にだって言っていない、言えなかった。ここまで育ててくれた母には言えなかった。

せっかく手にした正社員という安泰を捨ててしまったなんて...

母にバレる訳にいかず、出勤時間に家を出る。向かう先は決めていない。帰る時間まで車で寝てしまうのも良いかもしれない....何も考えたくなかった。


 車の中で過ごす日々は、時間が立つのも遅く感じてたはずなのに仕事を辞めてから1ヶ月が過ぎていた。

何もしない何も考えない生活は、焦りを生んでいた。

今までガムシャラに生きてきた止まることなく...止まって何も考えなくなった時に、どうして良いかわからなくなるなんて思わなかった。

何かをしなくては...そう思ったときに頭に浮かんだのは学生のときによく行った河川敷だった。


その河川敷は、1人で育ててくれた母が家族以外に心を許した相手が出来た時に1人になりたくてよく来ていた場所だった。

頭ではわかっていたが母が私以外を優先している姿を見たくなかった、大人になった今は心から感謝している。


 「ふう」深呼吸をした

この河川敷はゆっくり時間が流れている、犬の散歩をしている人がいたり川を眺めている人がいたり誰もがゆっくりとした時間の中にいる

”生きている”そう感じた、目から涙がとめどもなく流れている

それなのに私は笑っていた


足をまくり川に足を入れ石に座る

「冷たいくて気持ちがいい」1人笑う私は目を瞑る

この冷たさは足だけではなく頭も冷やしてくれた。


足を蹴る、パシャパシャと水が空に舞う。太陽の日差しに光りキラキラと輝く光景に心が踊る。

この綺麗な光景を忘れたくないと思った。


ポケットをゴソゴソ探すと...

「あった」

取り出したスマートフォンは、私の好きな黄色

何度も何度もシャッター音が鳴る、鳴る 

夢中でスマートフォンを構えていると時間はあっという間に過ぎていた。綺麗な赤い夕焼けを見て私は、やっと心の中のぽっかり開いた穴が埋まった気がした。

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