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狐少女の日常  作者: 樹 泉
一章 幼少期編
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クルエラ


 翌日の午前中ミズハはアリアナから〈精霊魔法〉の座学と精霊の事を学ぶ精霊学、算術の応用と難しい引用の言葉や文字を教わり昼食の時間になった。


昼食を食べ終わり二回目のエスタークの修行を受ける為、動きやすい服に着替え屋敷の庭に出るとエスターク以外にもアリアナとゲオルク、ダグが立っていた。

 アリアナは職人に手紙を書き会う時間を遅らせ、ゲオルクは仕事を無理やり午前中で切り上げ、ダグは午前中に職人との話し合いを終わらせて帰って来たのだ。


 皆の見守る中ミズハは昨日より幾分遅い速度で屋敷の敷地内を走っていた。

 ミズハが走り出し一周ちょっと回った所で、屋敷の中が騒がしくなった。

 その為家主であるゲオルクが屋敷の様子を見に中へ向かって行った。

 そしてミズハが二週目に入った頃、ゲオルクが老婦人を連れて庭にやって来た。


「ミズハちょっと来てくれ」


「はーい」


 ゲオルクの言葉に返事をしたミズハは走る速度を上げ、ゲオルクの元まで走って来る。


「母上紹介しますね。こちらからアリアナ・シュワラーク、ダグ・ルドリス、エスターク・ミドレインです。で、この子が娘になったミズハ・タマモール。皆こちらが俺の母上、クルエラ・ダンマルスだ」


 ゲオルクは珍しく敬語で話している。

皆様私(わたくし)はゲオルクの母のクルエラ・ダンマルスと申します。最高ランクの皆様に御会いできてとても光栄に思います。……それに、貴女が私の孫なのね、会いたくて来てしまったわ」


 クルエラはすっかり白髪になった髪を結いあげ、ゲオルクと同じ赤い目の、老婦人というには若々しい見た目の女性だった。


「初めまして、私はアリアナ・シュワラークと申します」


「ダグ・ルドリスだ」


「俺はエスターク・ミドレインだ。宜しくな」


 クルエラの自己紹介に、アリアナとダグ、エスタークが自己紹介を返す。

 アリアナは自己紹介が終わるとミズハの背を押した。


「初めまして、ミズハ・タマモールです。宜しくお願いします」


「まぁ、綺麗な娘ね。……でも違和感あるわね、貴女本当に人間?」


 ミズハの自己紹介にクルエラはパッと目を輝かせると探る様な口調で返して来た。

 これにはミズハのみならず全員が息を飲んだ。

 ミズハの〈人化の術〉は既に完璧だ。


「ミズハ〈人化の術〉を解いてくれるか?」


「はい」


 ゲオルクの言葉にミズハは〈人化の術〉を解いて獣人の姿になった。


「まぁ、エルフではなく狐の獣人だったのね。狐耳と尻尾がとても似合っているわね」


 クルエラはミズハの狐耳狐尾を見て目を輝かせた。


「母上良く気付きましたね」


「私、人を見る目はあるのよ」


 ゲオルクの感嘆の声にクルエラは嫣然と微笑んだ。

 その微笑みはゲオルクの母親としての歳を感じさせぬ若々しさと色気が溢れていた。


「それで母上、何故ここへ?」


「貴方がやっと孫を連れて来たと聞いて居ても立っても居れなかったのよ」


「何処から情報を得たのですか?」


「ふふふ、秘密よ」


 ゲオルクはトレンド達屋敷の使用人に皆の事を言わない様に頼んであった。

 最高ランクの冒険者が一所に集まり留まるのは情勢的に余り良くはない。

 その為ゲオルク達はパーティーを組んでから一所に留まらず、旅を続けて来た。

 ミズハの事もゲオルク達が落ち着いてから周りに発表する心算だった。それも内々での発表に留める様既に動いていた。

なのに、母クルエラはやって来たのだ。正しい情報を持って。


「母上には敵いませんか……」


 ゲオルクは溜息を着くと昔の事を思い出す。

 ゲオルクの母クルエラは昔、このターザ王国三大女傑と呼ばれていた程の女性だ。

 武術等できる訳ではなく、宮廷内でパーティーや茶会で泳ぎ、笑顔一つで相手を掌の上で転がして来たのだ。

 そもそもクルエラの生まれは公爵家の令嬢で、ゲオルクの父とは恋愛結婚している。

 クルエラ以外の残りの女傑は、国母になられた王太后と武門公爵家の先代夫人というそうそうたる顔触れで、未だに一目も二目も置かれている。


「それでミズハの教育は如何するつもりなの?」


「何故そんな事を?」


「私ミズハを気にいったのよ、だから私も参加させてちょうだい」


 ゲオルクはクルエラのお願いに迷ったものの、クルエラの教えたいものは恐らくマナーだろうと当たりをつけ、頷いた。

 将来どんな職業に着くとしてもマナーはあった方が良いだろうと考えたからだ。


「そうですね、母上には昼食から三時頃までお願いします」


「何!? 俺の教える時間が減るじゃないか!」


「今の修行は三時から六時までで良いだろう」


 ゲオルクがクルエラに時間を指定するとエスタークが反論して来た。

 エスタークはまだ何か言いたそうだがアリアナとダグに止められている。


「では私明日から早速来るわね」


「ええ、お待ちしております」


 話は着いたとクルエラは室内へ向かって行った。

 ゲオルクはクルエラが消えると、周りに気付かれない様にそっと息を吐いた。


 こうしてミズハのマナーレッスンのスケジュールが組まれる事になった。





間違えて早めに投稿してしまいましたので土曜日また投稿します

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