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狐少女の日常  作者: 樹 泉
一章 幼少期編
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初講義


 ちゅんちゅんちゅん。


「……うーん。っは。……ええ!? もう朝!?」


【良く寝てたねミズハ。もう翌日だよ】


 小鳥の鳴き声と柔らかい朝日にミズハが目を覚ますと、アンディーが声をかけた。

 アンディー曰くもう翌日の様だ。


「寝過ぎた!」


【あははは、大丈夫だよ。皆ミズハが疲れていたのを知っているから】


「ほんとう」


【ほんとほんと】


 慌てるミズハにアンディーは安心するように告げた。

 そのアンディーの声音は洞窟の前でゲオルク達とやり合った時とは一変していた。


【ほら、侍女さんが着替えを置いて行ってくれたから着替えよう】


「うん。……この服どう着ればいいの?」


 アンディーの指し示した服は上質なドレスで、ミズハは着方が分からなかった。


【僕でよければ手伝うけどどうする?】


「お願いアンディー、手伝って」


 こうしてミズハはアンディーに手伝ってもらいつつ、ドレスを着ていった。


【はいできたよ。髪も結ってしまうからそこに座って】


 以外に器用なアンディーによって、ミズハは髪をツインテールに結われた。


「アンディーは器用だね。私もできるようになるかな」


【ミズハもできるようになるよ。はい〈人化の術〉使って】


 器用にミズハの髪を結ったアンディーにミズハは自分も結えるようになるか聞いた。

 アンディーにできるようになると聞いたミズハは〈人化の術〉を使い、人間の姿になった。


【ミズハ、そろそろ朝ご飯食べに行っといで】


「うん。……どこに行けば良いかな?」


【あー、そっか寝てたもんね。隣の部屋に侍女さんが来たみたいだから聞いてごらん】


 ミズハとアンディーの会話がひと段落すると、扉がノックされ侍女が一人入って来た。


「おはようございますお嬢様。朝食の支度が整いましたので、食堂までご案内いたします」


「あ、おはようございます。私お嬢様じゃないですよ」


「ゲオルク様の養女になられたのです。お嬢様で間違いございませんよ」


「え、でも」


「ささ、いらして下さい」


 入って来た茶髪茶眼の侍女はミズハに丁寧な態度を取った。

 この世界で最高ランクの冒険者に敬意を払わない存在はほとんどいない。

 貴族から良い顔されない場合のある冒険者だが、それはランクの低い冒険者で、ランクの高い冒険者は貴族も信用しているのだ。中には当然例外も居るが。




「こちらが食堂になります」


「ありがとうございます」


「召使いにお礼など滅相(めっそう)も御座いません」


「おい、そんな所で騒いでないで飯にしよーぜ」


 食堂の前まで着き、侍女にお礼を言うミズハ。

 そんなミズハに顔を振り否定する侍女。そんな二人に声をかけて来たのはエスタークだった。


 食事中ミズハは給仕される事に慣れず、態々お礼を言っていた。

 ミズハの給仕に慣れない姿は食後まで続き、周りの心を和ませる。


「さてミズハ、食事も終わった事だし今後の予定を教えるわね」


 アリアナはそう口火を切ると、どこからか紙を取りだした。


「今日から午前中は勉強、午後からは体力強化よ。ミズハがどの程度読み書きができるかテストするわね」


「勉強かー。なら俺達はゲオルクと屋敷の改造について話しているな」


「おい、改造って……。はぁ、もういい」


 エスタークがゲオルクの屋敷を改造すると言うと、ゲオルクは反論しかけるが、諦め他のメンバーの好きにさせる事にした。


「ではミズハの部屋に行きましょうか」



 ミズハは部屋でアリアナ作のテストを終了させていた。


「なるほど、基本的な読み書き計算はできているようですね」


【僕やカレンが教えていたからね】


 テスト用紙に記入された答えを見てアリアナが判断すると、アンディーが姿を現し答えた。


「しかし応用問題や専門的な事はまだ分からない様ですね。今日からこの本の勉強をしていきます」


 そう言って差し出したのは『精霊魔法・基礎』と書かれた本だった。


「〈精霊魔法〉とは本来エルフの血系魔法です。しかし今ではハーフエルフなどエルフの血を引く人間や、突発的に精霊に好かれる者も居るのでこうして本が出ている訳です。そしてこの本には精霊との契約の仕方が書かれています。ミズハと闇の精霊さんとは未だ仮契約の状態ですので、ちゃんとした契約、本契約を結んでもらいます」


 アリアナはミズハに本を渡しつつ、長々と説明した。


「まずこのページを見て下さい。精霊との契約には自身の名前と精霊の真名、契約する人間の血と魔力が必要です」


 アリアナは本のページを捲り精霊との契約の項目で止めると、文章を読んでいった。


「精霊には階級があり下位の精霊だと真名がない者も居ますが、闇の精霊さんには真名がありますね。後は自身の血に魔力を込め、この呪文を唱えれば契約ができます」


 アリアナは指で文章を辿りつつ、内容を要約して話した。


「血は少量で構いません。この針を使って下さい」


「はい。……痛っ」


 ミズハはアリアナから針を受け取ると指に針を刺した。

 指に針を指すさい強く刺しすぎたのか、小さく悲鳴を上げた。


「我はミズハ 精霊と契約を結びたく思う者 眼前の精霊アンディーに問う 我と汝の契約を結びたまえ」


 ミズハが呪文を紡ぐとミズハとアンディーを中心に魔法陣が現れ光り出した。光は帯になり二つに分かれるとミズハとアンディーの元に集う。


【我が名はアンディー 狐の獣人ミズハと契約を結ぶ者なり】


 光の帯がミズハとアンディーを結ぶと、アンディーは精霊の契約呪文を唱えた。

 瞬間、光は更に増し部屋を白光が包んだ。


【契約は成ったよ、ミズハ】


「うん。アンディーの魔力を強く感じる」


「おめでとう、ミズハ闇の精霊さん。さて本の最初のページを捲って下さい」


 光が収まるとアンディーが真っ先に声を上げた。

 アンディーの声で目を開けたミズハにはしっかりとアンディーの魔力を感じる事ができた。

 それを見ていたアリアナは祝辞を述べると、ミズハに本の最初のページを開くように述べた。


「精霊は魔法の属性と同じで火・水・風・土の四属性と光と闇、木・氷・雷の九種類居ます。それぞれ下位精霊・中位精霊・上位精霊がおり、その上に精霊王が存在しています」


 アリアナの講義は続き、各精霊王には上位精霊の中から補佐精霊を何柱か選び自身の補佐をさせている。と語った時アンディーの方をチラリと見た。

 これにアンディーは気付いたが黙ったままだった。



「今日の講義はここまでです。午後からはエスタークが見ると言っていました」


「ありがとうございます」


 勉強終了の合図にミズハは知らず知らずのうちに詰めていた息を吐いた。





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