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狐少女の日常  作者: 樹 泉
三章 ユグドラシル学園二年生編
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選択授業の更新


 アランの部屋で話した翌日、ケニスは早朝から校舎に入って録画の魔道具をしかけていた。

 一年生の教室のある階層の一年C組にケニスはやって来ていた。

 当然魔法で姿は変えていてすれ違った人物がいてもケニスとは気付かないだろう。

 一年C組はアリアの在籍する教室である。

 ケニスは一年C組の後方にある棚の上に録画の魔道具をしかけた。パッと見たところ何処にでもある置き物に見えるがケニスが扱える魔法の結晶だ。そこに物があるのは気付いても誰も持ち上げようとは思わない暗示とふと眼を離したら視界から消える影の薄さ、さらに魔法がかかっているとは思わせない隠蔽の魔法。どれもケニスが得意としている魔法だった。だてに『不可視の暗殺者』とは云われていない。

 そんな工作員真っ青な工作を終えたケニスは一度男子寮に戻ってから魔法を解いて登校した。


 アランは登校すると既に登校しているケニスによって行って小声で話した。


「本当にやったのか?」


「うん。結果をごろうじろってね」


「わかった。期待している」


 常時と変わらぬケニスの様子にアランも肝が据わり、録画の魔道具が証拠を撮影するのを期待する事にした。


「それで、どれだけ撮影できるんだ?」


「そうだね、一週間といったところかな」


 録画の魔道具がどれくらいの時間を撮影できるか訊ねたアランにケニスは答える。小型の物であれば最新式の録画量にアランは内心で驚いたが、ケニスであれば何でもありかと思って心の波を静めた。


 それから一週間、既に忙しかった競技祭も終わり選択授業の選択が一大イベントとなりえぬ一行は普段と同じ日常を過ごした。

 一年生の基本科目、世界史・地理・現代社会・数学・体育〈保健〉・共通文学・魔法学の七科目から、二年生は世界史・現代社会・数学・体育〈保健〉・共通文学・魔法学の六科目に変わり、選択科目が四種類に増える。これが三年生になると基本科目が数学・体育〈保健〉・魔法学の三種類まで減り、選択授業が七種類に増す。

 選択授業の選択はミズハが一年生から引き続き精霊学を、他には新たに薬学・錬金術・武器学を選んだ。薬学と錬金術は一年生時に学んだ植物学と魔法陣を生かすために選び、武器学はユグドラシル学園で学べる武術を覚えるためだ。精霊学に関してはアンディーの事がばれる可能性以上に学ぶ事が多いため引き続き学ぶ事を選んだ

 ナノハが選んだのは一年生時と同じ精霊学と魔法陣、新たに薬学と錬金術だ。精霊学はミズハと同じくまだまだ学ぶために、魔法陣の授業も今以上に奥深く学ぶために選んだ。薬学と錬金術はミズハ同様基礎を固めたため応用を覚えるためだ。

 アランとレイニードは一年時と同じく武器学と新たに古代語・古代地理・古典を選んだ。武器学は二人にしてみれば面白く、体育やダンジョン授業だけでは学べぬものを学ぶために、古代語・古代地理・古典は一年時に選んだ魔物学と国別史と同じで将来に必要になるために選んだ。

 ケニスは武器学・魔物学・植物学・魔法陣の四つだ。ケニスは将来も冒険者と活動する為、更に深く学ぶためにこの四つを選んだ。一年時は何故かミズハ達とすれ違っていたケニスだが今回は随分似通った。冒険者として魔法陣の授業はいらないのではと思われがちだが、ダンジョンの罠などに魔法陣で学ぶ様なものがあるため抜かす事はできないのだ。その他にも冒険者としての依頼で魔法陣の引かれた地へと乗り込む事もある。


 そんなこんなで一週間は以外に早く過ぎ、ケニスは授業の終わった教室を後にして一年生の階層に魔法で変装して紛れ込んだ。

 録画の魔道具を回収する為だが、盗撮で一年C組の生徒が不利益を被る事は殆どない。教室では朝や放課後のホームルームの他は授業基本的な授業でしか使わず、その他の例えば着替えなどは更衣室があるため問題ないのだ。

 だからといって盗撮が許されるかというと勿論問題になる。


 一週間教師陣にもばれなかった盗撮の証拠、録画の魔道具を回収したケニスは自室に戻って、録画の魔道具と合体させることで映像の見える魔道具をセットし、早速録画の魔道具を再生させた。


 セットした日の一日目は何事もなく終わり、超速再生させていても夕食が近付き一旦停止させた。

 二日目を見る前に宿題を終わらせ、ケニスは魔道具の再生を再開させた。

 二日目も特に問題はなく三日目の放課後、そろそろ就寝の時間という事もありケニスは魔道具を片付けようとしたところでアリアが教室に入って来た。

 手には真新しいノートと赤い色のペン、紙などを切る工具用のナイフが握られていた。

 魔道具ごしにケニスに見られているとは知らず、アリアはノードを切り裂きナイフでバラバラにした。最後に仕上げといった風にペンで悪言雑言を書くと妖艶な笑みを浮かべて教室を去っていった。

 ケニスはそこまでを見ると証拠の部分を別の魔道具に移し、今日の再生を終了させた。


 翌日ケニスはユグドラシル学園でアランとレイニードの三人で会話をしていた。

 今回の盗撮はミズハとナノハは知らない為、男性陣だけで集まったのだ。


「まだ録画の全ては見てはいないけど、一つ決定的な証拠が出たよ」


「証拠が出たか」


 ケニスの説明に頷いて先を促すアランにケニスを頷き返して続きを話す。


「アリアちゃんは確かに自分で自分の持ち物を壊していたよ」


「なるほどな、これでミズハが虐めているという話しがデマだと証拠が出た訳だ」


「ですが、それだけですとミズハに虐められたのも事実とごねられませんか?」


 ギラリと眼光が鋭くなったアランは頷き、レイニードは懸念を言った。


「それは大丈夫だろう。証拠の出た日付は?」


「僕が録画の魔道具をしかけた三日目の放課後だよ。何か他に策を打っていたのかな」


日付を問うアランにケニスは答えつつ黒い笑みを浮かべた。


「当然だ。クラスの信用できる女子にミズハが何者かに貶められようとしているから見張っていてくれと頼んである」


「い、何時の間に……」


「ハハハ、確かにここのところミズハの周りに女子が多いはずだ」


 アランの言葉にレイニードが顔を引き攣らせ、ケニスが面白そうに笑う。

 人の良いミズハは、アラン達とだけ親しい訳ではなく中々に人気がある。その為アランはミズハに友好的で信頼できる女生徒にミズハの護衛を願ったのだ。


「一週間分の確認を頼むな」


「任せて」


 アランが証拠の選別をケニスに任せ、ケニスがそれを了承した。


 その日の授業を滞りなく終え男子寮に戻ったケニスは、魔道具を起動させて内容を見ていく。

 日曜日の休日を早送りで見送り、五日目・六日目・七日目を見ると七日目にもアリアの自作自演の虐めの証拠が出て来た。ケニスはそれを別の魔道具へ移すと夜の帳が下りた空に飛び立った。


 日が暮れてもアランの部屋には明かりがともっていた。

 アランの部屋の天井は高く、明かりが灯る魔道具もシャンデリアをモデルに作られていて金色に輝いている。

 アランとレイニードは獣王国レオンから送られて来た、アランが決済する書類に追われていた。

 宿題以上に量のある書類を片付けていると、闇に覆われた窓からコツリコツリと音が鳴った。

 不審とデジャブを感じたレイニードが窓に寄ると宙に佇むケニスの姿が見えた。


「ケニス、こんな時間にどうしたんですか?」


「いやぁ、悪いね。例の証拠固めが終わったから見せに来たんだ」


 レイニードが部屋の窓を開けてケニスを招き入れれば、ケニスは悪びれもせずに答えた。


「そうか、見せてもらえるか?」


「うん。その為に持って来たんだしね」


 アランの言葉にケニスは頷くと、早速魔道具の準備を始めた。

 ケニスは自分の魔道具を部屋から持って来ており、サクサクと準備を進める。

 やがて映像が再生され始めるとアランとレイニードの目に剣呑な光が宿った。


「マッチポンプとはいえないが結構な自作自演だな。その犯人をミズハになすりつけるのは許せん」


「おそらくアランとつきあっているからでしょうね。邪魔者は消す、でしょうか」


 憤懣やるかたないと怒りで拳を振るわせるアランと溜息を吐いて怒気を逃がすレイニード。


「でも、問題はランドルフ先輩にどう話しを持って行くかだよね」


「そうだな。魅了度合いによってはこの証拠を握り潰されかねない、むしろ俺達が罪に問われるかもしれない」


 ケニスの言葉で怒りの矛先を収め、冷静にこの後の段取りを考えだす。


「カルメ先輩に御話してみてはいかがですか? 先日の時もミズハの無実を確信していたようでしたし」


「そうだな、その手で行こう。ケニス、証拠は大事に保管しておいてくれ」


「了解」


 レイニードの案にアランとケニスが頷くと深夜の会談は終わりを告げた。







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