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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
46/69

後期の中間テスト



「ミズハ! 今回のテストは俺が勝つからな!」


 朝も早くからアランの声が響き、ミズハに宣戦布告した。


「うん。私も負けない」


 受けて立ったミズハにナノハはニヤニヤしつつ見守っている。


「でも今回は一緒に勉強しましょう」


「そ、そうだったな」


 ミズハの提案に少し照れているアランは嬉しそうだった。


「アラン何照れているのよ。私達も一緒だからね」


「わかってる!」


 ナノハの突っ込みに顔を赤くして返すアラン。


 放課後、図書室で勉強しているミズハ達はせっせと課題を終わらせ、それぞれの試験勉強にとりかかった。


「ん? えーと、ここは……」


「アランどうしたの? ああ、そこはね……。この例題と似ていてこれを代入するの」


 アランのペンが止まっているのに気付いたミズハが丁寧に教えていく。


「ああ、そうか。ありがとうミズハ」


「どういたしまして」


 それから、解らない部分の質問が時々上がりつつも試験勉強ははかどっていった。

 そんなやり取りが続いて数日、ついにテストが始まり、一年A組では皆が机に向かって静かに問題を解いている。

 だいたいC組まではテストを真剣に受けているが、D組み位になると絵を描く者などが出て来る。といってもC組までの生徒でも余った時間に絵を描く者はそれなりにいるが。


 そして、いよいよ試験結果が廊下の掲示板に張り出された。

 前回と同じくアランが他の四人を先導して掲示板に向かう。


 後期中間テスト 

 総合 順位


 一位 ナノハ・リシュティーユ  997点

 二位 ケニス・グランドール   992点

 三位 ミズハ・タマモール    989点

 四位 アラン・レオン      986点

 五位 レイニード・グルブランス 981点


 崩れ落ちそうなアランを連れ、ミズハ達はわきによった。


「やったー。今回は手ごたえあったのよね。でも三点分何処で間違えたかな?」


「ナノハ凄いじゃない。三問しか間違えていないわ」


「今回は全体で十六点差、結構接戦だったんだね。……アラン、ミズハとの差はたいしてないよ。しっかり」


 ナノハとミズハの話しの後でケニスが何とかアランを元気づけた。


「う、今回も負けたか……。いや、へこんでいる場合じゃないな、次はミズハに勝ってナノハにも追いつくからな!」


「ふふん。私だって負けないんだから」


 アランは何とか回復するとミズハだけでなくナノハにも宣戦布告した。


(この場合、僕にも宣戦布告していたのかな?)


 ケニスはそう思ったが口にしなかった。

 一位のナノハに宣戦布告したという事は、二位のケニスも抜かすという事だろう。


「ケニス! お前にも勝つ!」


「アラン、指はさしてはいけません」


 ケニスに指をつきつけたアランにレイニードが冷静に返す。

 ここまでの人生でアランが負けず嫌いなのを十分に知っているレイニードならではだ。


「僕も負けないよ」


 ケニスもそう返した。


 因みに六位の生徒は950点代とこの五人は他の追従を許さない点数をはじき出している。


「よ、五人共凄いな。俺なんてギリギリ900点代だぞ」


 そうミズハ達に話かけたのは狼の獣人のクライだ。


「五人共殆ど満点じゃねーか。どういう頭の作りしてるんだよ」


 そう言ってクライは溜息を吐いた。


「この学園のテスト冊子めんどくせー。他の学校は一枚の用紙何だってよ、ずるくねー」


「まあ、確かにテストの量多いよな」


 クライの言葉にアランが続く。


「そうですね。テストが冊子状になっている物は始めて見ました」


「僕もそうだね」


「私も」


 更にレイニードとケニス、ナノハも同意した。

 ミズハは少し目を泳がせている。


「私は経験があるわ」


「え、ミズハ本当!?」


 ミズハの話にナノハが食いついた。


養母(はは)に出されたテストが冊子状だったわ」


『うわー』


 ミズハの話しを聞いてナノハ、アラン、レイニード、ケニス、クライが嫌そうな声をそろえた。


「この学園以外でもあるもんなんだな、冊子テスト」


「そりゃあ、あるだろう」


 クライの呟きに答えたのはアランだった。

 アランにしてみれば獣王国レオンの官吏登用試験が冊子状なのは知っている事だった。もちろんレイニードも知ってはいるが、実際に関わっていないので冊子状のテストは初めてなのだ。


「それにしても、お前達生徒会の仕事で忙しかったんじゃないのかよ」


「はっはっは。既に片付けたぜ」


 またしてもクライに答えるのはアランだ。

 実は今でこそクライは以前のようにアランに接しているが、アランが獣王国レオンの王子だと知った当初は当たり障りのない敬語で話していたのだ。

 しかし、アランが休み時間に今まで通りに接してくれとクラスの生徒に話かけて、現在の状況に至っている。

 いくらアランが今まで通りに接してくれと言っていても、できるかというとそうでもなく、未だにアタフタする生徒もいる。

 だが、一年A組の生徒はなんとか折り合いを付け、以前同様な態度で接している。


「俺もせっかくA組になれたんだからもう少し点数取りたかったんだよな。来年の進級のクラスにも影響するしな」


「そうだな、進級先の要望も出ていたしな。点数を気にするという事は特進科希望か?」


 クライに返しつつアランが問うと、クライは少し口ごもった後に答えた。


「ああ、特進科希望だ」


 ユグドラシル学園では二年以降クラスが科毎に分かれる。

 特別進路科、普通科、体育科、芸術科、技術科の五種類だ。

 特別進路科を特進科と呼び、文武共にすぐれている者しか進路先に選べない。

 特進科は進路先にもっとも融通がきく科で、進路先が特進科という者達の内上位六十名しか選べない。

 特進科で二クラス、普通科が四クラス、体育科が二クラス、芸術科が二クラス、技術科が二クラスと絶対数が決まっている。

 もっとも人気があるクラスが特進科で次点が体育科、芸術科と技術科は人気がない訳ではないが募集一回で埋まる訳ではない。

 希望の学科に入れなかったとして辞めていく者が多いのがこの季節だ。

 特進科に入るには二年生に上がる時と三年生に上がる時の二回選考が行われるが、入れるものはごくわずかだ。

 編入生などもいるために倍率は上がる一方だ。


「俺とレイニードも特進科希望なんだ。一緒のクラスになれれば良いな。そうだ、ミズハ達はどうするつもりなんだ?」


 ハッとミズハの方を向いて問いかけるアランにクライは苦笑してレイニードに手を振るとその場を去っていった。


「私も特進科希望よ」


「私も、私もー」


 アランの問いに答えたミズハとナノハは顔を見合わせてクスリと笑った。


「来年も皆と同じ教室で学べれば良いわね」


「そうだよねー」


「そうだな、来年もミズハ達と同じ教室が良い」


 ミズハとナノハが話し、ミズハが特進科希望だったと知ってパッと顔を輝かせたアランが最後を締めくくった。






祝・一周年。

今回の話は少し短かったような気もしますが、始めた当初の文字数と似たようなものですね。

三月は忙しいので多少執筆が遅れるかもしれません。

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