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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
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アリアナの考察

アリアナ視点です。


 ミズハがユグドラシル学園から帰って来て、エスタークと試合をする事になった。

 私はミズハが何処まで成長したかとても楽しみだった。

 ユグドラシル学園の事を手紙にしたためて送ってくれるミズハは、日々楽しそうにしていたわ。

 特に友達ができたと嬉々として書いて来た時はホッとしたものだ。

 私達と生活している為か、中々同年代の友達ができ難くて心配していた。

 そうそう、獅子獣人のアラン君がミズハにちょっかいをかけている様なので、後で闇の上位精霊さんに訊いてみましょう。

 ただエスタークは直ぐに熱くなるから気をつけて見ていようと思うわ。


 日が変わりいよいよ試合当日。

 エスタークはとても楽しげに、ミズハは緊張したのか少々寝不足気味にしていた。


 冒険者ギルドの訓練所に辿り着いた私達を迎え入れたのは、多くの冒険者と休日の冒険者ギルドの職員達。

 おそらくゲオルクが冒険者ギルドでミズハが帰って来る日と次の日に試合をする事を吹聴していたのだろう。


 距離を取ったミズハとエスタークが対峙する。

 先に動き出したのはミズハで魔法を発動して行く。

 なるほど、魔法を主軸にしていく作戦のようだ。

 確かに、体術や武器ではどう考えてもエスタークに分がある。でも、魔法を使ったからといって優位に立てる訳ではない。事実エスタークはミズハの魔法を簡単に撃退した。

 だけれど、ミズハは直ぐに水魔法で霧を呼び室内を濃霧で覆った。しかも、それだけに終わらず少しずつ気温は下がり、濃霧は霰にうって変わった。流石ミズハ、エスタークといえども寒さは辛いわよ。

 私は近場だけを結界で覆い、火魔法で温度を上げた。


 ミズハが闇魔法で闇の蛇を呼びエスタークに仕掛けるが、エスタークは蹴りで消し去った。

 うーん、ミズハの魔法だと決定力不足かな? エスタークの何が恐ろしいって魔法を素手で破壊できる事なのよね。そんなエスタークに魔法で勝つ事は私でも苦労するわ。だけれど接近戦で勝てるか、というと無理そうよね……。

 私が思考を巡らせている間もミズハは闇の上位精霊さんの力を借りて鎖を作ったりしているけど、全てを破壊されている。


 あら? ミズハが悔しがっている?


 おそらくこの変化に気付いたのは対峙しているエスタークが始めかな。

 今までミズハは私達との戦力差で負けても悔しがる事なんてなかった。それが初めて悔しがっている。

 改めて思ったわ、ミズハをユグドラシル学園へやって正解だって。

 格が上の相手にも向かって行く勇気、勝つための気概、今までのミズハには無かったものよ。それが生まれた。

 ああ、誰だったかしら? そうそうナノハちゃんといったわね。ミズハと武芸大会でぶつかって最後まで諦めなかった相手。ふふ、良い友達に会えたわね。


 私がそんな事を考えているとミズハの魔力がごっそり抜けた。そして現れたのは、さっきと比べ物にならない大きさの闇の蛇。しかも鱗のように氷を纏っている。


 これは精霊魔法と魔法の合一! 今それができるのは私だけ。 

 私も全ての精霊魔法と魔法でできるのではなく、特定の精霊魔法と魔法でしかできないわ。その領域にミズハが踏み込んで来た!

 ミズハ! やるじゃない! 凄い成長よ!

 ふふふ、それにしても凄い魔力。闇の上位精霊さんの力を借りているからかもしれないけど、魔力量がSランクの魔物へ届きそう。


 十メートルはある氷を纏った闇蛇は、鎌首をもたげてエスタークに襲いかかった。

 エスタークも拳や足で撃退するけど、今までと違って四散する事はなかった。そして、しなった尾の一撃でエスターク吹っ飛ばす事に成功した。


 良しっ!


 私は心の中でガッツポーズを決めた。きっとゲオルクやダグも同じだろう。エスターク? あのくらいじゃ死なないわよ。というか怪我もしないわね。


「ハハハ、ハッハッハ、フアーハッハッハー!」


 ほらね、吹っ飛ばされたはずのエスタークが大笑いしながら起き上った。

 あらあら、嬉しそうだこと。ま、私達も嬉しいのだけど。

 そしてついにエスタークが必殺技を使おうと、風や火、稲妻がエスタークの回りを踊り出した。

 さあ、これを始めて見るミズハはどうするか。


「エスタークの奴があれを出すとはな。それだけ本気という事か……」


「そうね、そう言う事でしょうね」


「フ、それにしても楽しそうだな」


 全ての魔法の力を纏めたエスタークを見つつゲオルクがついに我慢できなくなったと声を出し、私が答え、ダグがまるで自分も戦いたいと言いたげに呟いた。

 この話しの間も私達に霰は当たらない。

 私が当たらない様に結界を張っているともいえるし、ミズハがちゃんと操作して私達に当たらない様にしているともいえる。


 エスタークの周りに溢れる銀の魔力が霰に触れるとジュッと音を立てて蒸発して行く。

 ああなったエスタークは厄介よ、如何するミズハ。

 魔力の残量が少ないのかミズハがよろめいた。初めての精霊魔法と魔法の合一を使ったのなら仕方のない事ね。

 ミズハの作り出した氷を纏った闇蛇とエスタークのぶつかり合いを見ていた冒険者達が固唾をのんで見ているのを、鼻高々に見ているとエスタークの猛攻で氷を纏った闇蛇が削り取られていくのが見えた。


 高速での攻防に私達以外目視できなくなった頃、エスタークは切り傷を作り、氷を纏った闇蛇は体積を大きく削られている。

 エスタークはまだ余裕、たいして氷を纏った闇蛇はそろそろエスタークに攻撃を与えるのは辛そうね。


 氷を纏った闇蛇が最後の大技を使おうと距離を取ると、エスタークもそれに応えるように距離を取った。

 氷を纏った闇蛇が大きく尾をしならせ攻撃の準備を整えたのに対してエスタークはいらつくほど自然体のまま。

 氷を纏った闇蛇の最後の一撃は尾を振り下ろすのと同時に現れた。

 闇を含んだ氷が訓練所の地面から先のとがった槍の様に現れながらエスタークに襲いかかった。


 一歩足りない。


 エスタークは魔力を足に込め、それを振り切る事で氷を纏った闇蛇の魔力を霧散させた。


 魔力を使い果たして、消えかけている氷を纏った闇蛇の目に知性の様な物が現れ、ミズハを見つめる。

 それに答えるようにミズハは意識がある事が不思議なほど青ざめた顔をしながら、氷を纏った闇蛇に魔力を差し出し、ついに身体を地に投げだした。

 元の身体の何分の一かの身体を取り戻した氷を纏った闇蛇は明らかに知性を宿し、最初の巨体は持ち合わせていないのに圧迫感が増した。

 そして現れたのは先程の最後の一撃以上の魔力だった。

身体を構成している以上の魔力を、闇を核にした刃に乗せ、尾に合体させた氷を纏った闇蛇の威圧感はSランクに届いていると思う。

 魔法で作り出した生物に知性が宿るものだろうか。いいえ、今までそんな事はなかった。

 私だからわかる異質さ。今、(なにか)が動き出した気がした。


 エスタークが嬉しそうに右足に魔力を溜め、身体をしならせて蹴りを放った。

 放たれた閃光と閃光が渦を作り激突した。


 二つの魔力は私達の前で激突して暴風を巻き起こして辺りに被害を与えようとした。

 私は結界を強化した後に訓練所全体に新たに結界を作った。

 互いを削る魔力の渦は、やがて氷を纏った闇蛇を襲い消えていった。

 私だけに見える小さな蛇を残して。

 その小さな蛇はミズハの元に居る闇の上位精霊さんの差し出した手に登って行く。そして小さな蛇は闇の上位精霊さんと共に私の目から消えていった。


 まさか! ミズハが精霊を作り出した? そんな事ができるのは……。いえ、決めつけるのは早いわね、帰ったら調べてみましょう。


 家に帰った私は本棚から古い文献を抜き出していた。

 精霊を作り出す。その事だけ絞って調べれば、複数の文献がヒットした。

 でも、駄目ね。どれも同じ答え、それ以外の答えはないのかしら。

 ああ、私はミズハに私の答えの通りになって欲しくないのか……。ミズハがそうなってしまえば気軽に会えなくなる。それが寂しいのね。


 ノックの音がしてゲオルクが入って来た。


「アリアナ、試合が終わってから変だぞ。何かあったのか?」


「私の思い違いかもしれないの」


「はー、話す気がないんだな。もう夜遅い、早く寝ろよ」


「ええ、そうするわ」


 もうそんな時間か……。

 調べ出してから結構時間が経ったみたいね。

 ふふ、ゲオルクって懐に入れた相手には気を使うのよね。心配かけたし今日は寝ましょう。

 一度ミズハ抜きで闇の上位精霊さんと話した方が良いかしら。いえ、止めた方が良いわね。

 ミズハ、貴女に幸あらん事を。



利き手を火傷してしまいキーボードが打ちにくいです。

来週休むかもしれません。

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