表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐少女の日常  作者: 樹 泉
一章 幼少期編
4/69

ゲオルク 前篇

一人称、別視点です。


 俺はゲオルク・ダンマルス。生まれは貴族だが、貴族の生活が窮屈で飛び出した。

 最初は苦労したが、元々屋敷を抜け出しては闘技場で稼いでいたせいか、金には困らなかった。

 魔物を倒しては流れを繰り返している内に冒険者で最高のSランクになった。Sランクの冒険者は貴重で、場合によっては一国の王すら頭を下げる。

 だがSランクの人間は皆アクが強い。俺だってそれなりにアクは強いぜ。

 ある依頼で別のSランクの人間と会った。いや、人間ではないな。獣人とドワーフ、更にエルフだ。

 緊急依頼だった為にSランクが四人オーバーブッキングしちまった。まあ、その依頼は人が多い分には困らないから助かった。オーバーキルだったがな。

 その後喧嘩にもなったが、なんだかんだ話があってパーティーを組むことになった。

 ソロしかいないSランクの人間が四人も揃ってパーティーを組むと言った時は、冒険者ギルドが上を下への大騒ぎになった。どこの国を攻めるんだって聞かれたぜ。

 ギルドっていうのは組合の事だ。

 冒険者ギルド以外にも商人ギルドや魔法ギルド、錬金術ギルド等様々なギルドがあるんだ。


 そんなこんなで俺も四十二歳、体にガタが来た。

 丁度そんな時、故郷のある国からギルド支部の(マスター)にならないかと打診が来たんだ。

 迷った結果、次の依頼を最後の依頼にする事にした。


 最後の依頼は程なく決まる事になった。

 獣王国レオンの南端で魔物の氾濫が起こったのだ。

 緊急依頼を受け俺達は現場に向かった。


 着いた現場は地獄絵図になっていた。

 村も街までも蹂躙されていたのだ。

 今回氾濫を冒したのは、身体能力に優れたオーガだった。普段余り群れる事はせず少数で固まって過ごす。

 オーガの困った所はオーガには雄の個体しか生まれず、繁殖には人型の女性を使う事だ。

 街も村も男と子供、老婆の死体しかなく、若い女性は皆連れ去られていた。


 俺達はオーガの(キャンプ)を見つけると、漏れが居ないか素早く確かめ夜襲をかけた。

そして俺は大剣を手にオーガを切り殺して行った。


 少数で巣の外に出ていたオーガを狩りつつ、俺達は俺の故国ターザ国を歩いていた。


「オーガは片付けた。早く街に帰ろうぜ」


 エスタークの声にこの依頼も、もう直ぐ終わると実感する。こいつ等ともお別れと思うとしんみりとするな。


「おいおい、俺の引退依頼だぞ。軽く扱うなよ」


 ああ、まだこいつ等一緒に依頼を受けたいな。


「ん? おい、人がいるぞ」


 エスタークがそう言うと、俺達は戦闘態勢に入っていた。

 こんな山の中だ山賊かもしれない。

 エスタークが辺りを見回すと、ある地点を見つめた。どうやら見つけた様だ。

 エスタークの視線の先を見ると木の陰に洞窟があった。洞窟を塒にする山賊かもしれないと思い、大剣を構え直す。


「フム、こんな所に人が居るのかね。動物か魔物ではないのか」


 ダグの言葉に少し考え直す。

 まだこの山から人里は遠い。山族にしたってもっと人里の近くを塒にするはずだ。

 だったらオーガの反乱の討伐依頼を受けた者だろうか。いや、それもない。俺達は結構なスピードで狩っていた、そのスピードに着いて来られる者は居なかった。


「エスターク何処だ」


「あそこだ。あの木の陰、洞窟の所だ。……に居るはずなんだがな……」


「フム、誰も居ない様だがな」


 ダグは言葉では居ないと言っているが、きっちり警戒はしている。

 策敵は俺達の中でエスタークが一番だ。そのエスタークが〝人〟が居ると言ったのなら人がいる。


「……居ないな。俺も焼きが回ったか」


 何度も洞窟を見るが人の気配はしなかった。エスタークも自信なさげだ。


「いいえ、その洞窟には確かに誰か居ます」


 俺達が訝しげに洞窟を見て次の行動を考えていたらアリアナが言葉を紡いだ。

 その言葉に俺達は警戒度を上げた。俺達に感知できない穏形の達人が居るという事だ。


「そこにいる精霊さん私の前に姿を現せてはくれませんか? 私は貴方に危害を加えるつもりはありません」


 アリアナがそう言うと、数秒して闇の精霊が現れた。

 闇色の髪に黒曜石の様な瞳、闇の上位精霊だ。

 様々な地を旅した俺だが、上位精霊とは殆ど会った事がない。そんな俺でも分かるほど、その上位精霊は魔力を秘めていた。


「闇の上位精霊でしたか。私達は此処から北で魔物の氾濫が起こり、それを鎮静して来ました。上位精霊たる貴方こそこんな所で何をしているのですか?」


 俺達を代表してアリアナが丁重に闇の精霊に話しかけた。アリアナはエルフで精霊との親和性が高い。高位の上位精霊とも意思の疎通は計れるだろう。


【ああ、風の精霊達が騒いでいたね。だけどこんなに直ぐに鎮静するものなのかな?】


 闇の精霊は洞窟を背に此方を警戒していた。

 高位の上位精霊が此処まで人間を警戒するだろうか。


「ふふふ。私達はこれでも腕利きの冒険者なのですよ」


【へー、君たちは腕利きの冒険者なんだね。僕はここら辺をウロウロしているだけだよ】


 闇の上位精霊が「ウロウロ」と言った時、精霊の周りで火花が散った。

 文献で読んだ事がある。精霊が嘘を着いた時の合図だ。

 この精霊程の力があるからこれだけで済んでいるのだ。もし低位、いや中位の精霊でも消滅しかねない。

 そんな上位の闇の精霊が俺達に隠している物、いや者か。いったいなんだ。

 アリアナと目線で会話をする。この精霊が隠している者と会った方が良い。


「そうですか。でしたら私達があの洞窟で休んでも良いでしょうか?」


【駄目だよ!】


 闇の精霊は即座に反対して来た。

 この精霊が必死に隠している者。やり方次第でこの精霊は消滅しかねない。


【あの洞窟には僕の宝物を隠してあるんだ。だから洞窟に近付いては駄目だ】


 アリアナと目配せし俺が前に出て喋る。


「闇の上位精霊の宝物か。取らないから一目見せてくれないか?」


【駄目だ!】


 闇の精霊は涙目になりながら必至で止めて来る。

 その必死さに胸が痛む。

 アリアナ後は頼んだぞ。

 アリアナは頷くと、闇の精霊の前まで進み出た。


「闇の精霊さん、貴方が宝物と言う人物に危害は加えません。どうか私達にその人と会わせてはくれませんか?」


【君達名前は? もし僕の宝物に危害を加えたら呪い殺してやるから】


 俺達の交渉に闇の精霊は渋々頷いた。

 だが闇の精霊は俺達に気を許しはしなかった。

 温和で楽しい事が好きな精霊にしては、余りに警戒心が強い。

 それだけ大事ということか。

 

「私の名前はアリアナ・シュワラーク。赤毛の人間がゲオルク・ダンマルス、銀髪の獣人がエスターク・ミドレイン、そこのドワーフがダグ・ルドリスです」


「儂の紹介がおざなりだな」


 アリアナが俺達の紹介をしてくれた。

 俺達は紹介に合わせて軽く頭を下げた。

 場合によっては呪い殺されると思うとゾッとする。

 これだけ高位の精霊の呪い。俺たちじゃ抵抗(レジスト)できそうにない。


【……ミズハ出ておいで】


 これから会う人間はミズハという名らしい。


「スルーか……」


 ダグ、お前の紹介がおざなりなのは日頃の行いのせいだ。





ブックマーク登録されている方がいてうれしい限りです。

ではまた来週。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ