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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
34/69

期末テスト


 暑さも和らいできた九月、前期最後のテスト期末考査が訪れた。

 各授業でテストの範囲が発表され、生徒達は勉強にいそしんでいた。

 一年生期末テストから選択授業のテストも加わり、総合十科目のテストに多くの生徒が机に向かっている。

 ミズハはというとナノハと図書室試験勉強をしていた。


「お、ミズハ!」


 ミズハ達が勉強していると、ミズハを探しに来たアランがミズハの座っている席まで人を引っ張って連れて来た。


「いよいよ期末テストだ。俺達全員でテストの順を競わないか?」


「うん? いいけど。何でグランドールさんを引きずって来たの?」


 アランの提案にミズハが頷きながら疑問に思った事を告げる。

 アランの右手の先には少し長めの黒髪を首元で結い、サファイアの様な青い瞳に眼鏡をかけた少し細身の男子生徒がよれた制服を片手で直しながら目を白黒させていた。

 その生徒はケニス・グランドール。ミズハが注視している相手だ。


「ああ、こいつが中間テスト二位だったんだ。どうせなら期末テストも上位五位を俺らで独占しようぜ」


「ちょっとアラン。それをグランドール君に説明したわけ? 目を白黒させているじゃない」


「あ、忘れてた……」


 アランのキラキラした宣言にナノハが突っ込むと、アランはばつが悪そうに頬を指でかいた。


「えっと、自己紹介する? 私はミズハ・タマモールよ、宜しくね」


 ミズハを皮切りにナノハ、アラン、レイニードが自己紹介するとケニスもそれに倣った。


「僕はケニス・グランドール。期末テスト頑張ろうね」


「期末テストの二位は貰うからな。じゃあ、俺達は行くな」


 そう言ってアランは呆れた顔のレイニードを連れて図書室を去って行った。


(……アランって馬鹿よね。ミズハと一緒に勉強すればいいのに)


 去って行ったアランを見てナノハは心の中で呟いた。

 それはそうだろう。「一緒に勉強しよう」とでもいえばナノハがいるとはいえ合法的にミズハと一緒に居られるのだから。

 こうしてミズハはナノハと一緒に試験勉強をし、アランはレイニードと、ケニスは何時も通り一人で勉強し期末テストを迎え、慌ただしくテストは過ぎて行った。


 テスト休みが明け中間テスト同様期末テストの結果が掲示板に貼り付けられた。


「よっしゃー、結果を見に行こうぜ!」


 アランがテンションの高い声を上げ率先して人をかき分けて廊下を前進して行く。

 人垣のできている掲示板近くで待つ事数分、ミズハ達は最前列に来ていた。

 順位と点数を確認したミズハ達は五人それぞれ違う反応をした。

 ナノハは誇らしげな顔をしケニスは納得気に、ミズハは驚きの中にも嬉しげに、アランはしょぼくれケニスが元気づけようと何か考えている。


 期末テスト 総合

 一位 ナノハ・リシュティーユ   989点

 二位 ケニス・グランドール    985点

 三位 ミズハ・タマモール     978点

 四位 アラン・クルト       975点

 五位 レイニード・グルブランス  969点


 上位五人は見事ミズハ達五人が占めていた。しかしミズハとアランの順位が中間テストと入れ替わっていた。

 ガックリと肩を落とし今にも崩れ落ちそうなアランをレイニードが端へ連れて行く。そんなアランは耳と尻尾が垂れ下がり黒雲を背負っている。


「あ、アラン。点数にたいして差はなかったわ、次テスト受ける時はわからないわよ。それに試験勉強ナノハと一緒にしたから捗ったのよ」


 アランの様子に気づいたミズハが必死にアランを励ます。その言葉にアランはガシリとミズハの手を握った。


「み、ミズハはナノハと一緒に勉強したのか? 俺もミズハと勉強したかった……」


 「後悔先に立たず」と今にも泣き出しそうなアランを見てミズハは何とかアランを励まそうと言葉を紡いだ。


「なら次のテストの時はアランも一緒に勉強する? 図書室とかなら一緒に勉強できると思うわよ」


「本当か! よし! 次は一緒に勉強するぞ! レイニード次はミズハ達と一緒に勉強できるようにしてくれ。ケニスも一緒で良いよな」


 ミズハの言葉にアランは元気になり次々と事を決めて行く。

 アランのスケジュールを握るレイニードに次の時の行動を伝え、ケニスに了承を取る。

 レイニードはいつも通りなので気にした風もなく頷き、ケニスはどこか楽しげに頷いた。

 アランがミズハと二人っきりになれないヘタレであるか婦女子であるミズハの為を思ったかは定かではないが、この後の試験勉強は五人揃ってする事になった。


「はっ! そうだ答案が返って来たら答え合わせを一緒にしないか?」


「良いわね。図書室でやる? それとも会議室借りる?」


 アランの提案に真っ先に乗ったのはナノハで、早速何処でやるか考えだした。


「図書室の方が良いんじゃないかな? わからない所とか調べられるし」


「そうですね。図書室でやりましょう」


 ケニスの提案にレイニードが賛同し、図書室で勉強会をする事になった。

 その後三日間かけて答案が返され、ミズハ達は図書室に向かった。


 図書室の六人掛けのテーブルに着いたミズハ達は必修科目の答案を取り出した。選択科目に関しては選択している科目が違うので個人での見直しに決まったのだ。


「じゃあ、まず世界史からね。皆は何処間違えたの?」


「僕は世界史満点だったので大丈夫です」


「私も」


 ナノハの質問に答えたのはケニスとミズハだった。

 三人の答案には丸が並び100点と書かれている。


「う、間違えたのは俺とレイニードだけか。といっても俺達もケアレミスだから自分達で何とかなる」


「面目ありません、見直したつもりだったのですが……。あれだけ問題が多いと見逃してしまう事もありますね」


 落ち込むアランとレイニード。

 そのレイニードの言葉に全員が頷き、問題(・・)冊子(・・)を見つめる。

 そう、ユグドラシル学園のテストは一枚のペーパーではなく冊子になっているのだ。

 その問題数100問以上。一問一点どころか数問で一点の場合もあるのだ。それに合わせて答案用紙もA4用紙の両面に刷ってある。

 だてに世界最難関の学び舎とは云われている訳ではないのだ。


「わからない所纏めた方が速そうだね」


「そうね……」


 真っ先に我に返ったケニスが提案すればナノハが同意した。


「んじゃあ、魔法学の此処がわからなかったんだ」


「そこはね――」


 アランのわからない部分にミズハが丁寧に答えていく。


 そして時間が進み太陽が茜色に染まり出した頃、ミズハ達は帰りの支度を進めて帰路に着いた。

 長かったようで短かった期末テストは終わり、秋の長期休暇も目前に迫って来ていた。


「ミズハ、秋の長期休暇の時私の家に遊びに来ない?」


「ナノハの家に? そうね、一度家に帰った後に行かせてもらうわ。ふふふ、楽しみね」


「うん、楽しみだね。あ! 来る時は獣人の姿で来てね。家の回りはエルフばかりだから平気でしょ」


「う、頑張るわ」


 ミズハは秋休みの予定にナノハの家に訪問する事になった。

 そして秋休みまでカウントダウンが始まり、生徒達が浮足立ち始めた。






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