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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
28/69

それぞれの選択授業


 中間テストが終わり待ちに待った選択授業が始まった。

 期待を膨らませている生徒も居れば、ダレている生徒も居るといった所か。


 ミズハの取った選択授業は植物学、精霊学、魔法陣の三種類で、三種類ともナノハと一緒だった。

 今日最初の選択授業は精霊学だ。

 ミズハはアンディーもいるし養母のアリアナからも習っているが、更に精霊について学びたくて選択した。


「さー、いざ行かん精霊学の教室へ!」


 テンションの上がっているナノハと一緒に精霊学の教室に向かった。

 選択授業は一年生から三年生まで同じ教室で勉強する。

 選択授業の数は十九種。一年生から三年生までで選べる科目も数限りがある。その為、三年生でも初めて受ける選択授業がある事も珍しくない。


 精霊学の教室にはエルフの生徒が多く、そうでなくともエルフの特徴のいずれかの出た生徒が大半だった。

 精霊魔法はエルフの血系魔法であるし、精霊と会話しやすいのはエルフだ。自然に選択する生徒もエルフないしエルフの血を引いた生徒になるのだろう。

 精霊学を教える教師もエルフの様で金髪碧眼の線の細い美青年だった。


「では、精霊学の授業を始めます。一年生は初めての選択授業だと思いますが、わからない事は私か教室内の先輩に訊ねて下さい。では教科書の最初のページを開いて下さい」


 エルフの教師は自己紹介もせずに淡々と授業を開始した。

 優しそうな教師であるが、中々に偏屈そうだ。

 エルフは老化の遅い種族であるし、見た目より年がいっているのだろう。


「精霊は魔法の種類と同じく火・風・水・土・光・闇・雷・氷・樹・重の十種類いると言われています。魔法には他に身体強化など無属性の魔法もありますが、無属性の精霊はいないというのが通説です。」


 エルフの教師は説明しつつ黒板に絵を描いて行く。

 ただの円形、獣の形、人型。


「精霊魔法は自身の魔力を糧に精霊に現象を起こしてもらう魔法ですが、精霊には階級というものが存在してその階級は絶対です。最も身近で多くいる精霊が下位精霊。魔法で灯す光の玉の様な形をしていて基本的にどんな場所にも居ますが、その場の環境によって存在する下位精霊の種類に変化が生じます。さて、下位精霊に知能が存在するかしないか答えて下さい。えー、三列目の左から二番目の方答えて下さい」


 エルフの教師の唐突な指名にその席に座っていた生徒、ナノハは驚いて起立した。


「下位精霊には知能がありますが、そこまで発達している訳ではありません」


「宜しい、その通りです。下位精霊の次に存在するのが中位精霊。中位精霊になると知能がグッと良くなり獣の形を取ります。良く精霊と契約した。といわれる相手が中位精霊になります。しかし中位精霊は強力な力を持ちますが数はとても少ないです。そして人型で生活する精霊、さっきの方の隣の生徒。はい、貴女です。人型で生活する精霊を何と言いますか?」


 エルフの教師は黒板の人の形の絵を示しながらミズハを指名した。


「人型になれる精霊を上位精霊と言います」


「その通り。上位精霊は普段姿を消していますが〈姿現し〉という術で姿を顕現させる事があります。上位精霊は一握りの存在で、力も中位精霊とは比べ物になりません。そして、各属性の精霊の頂点に立つ一柱が精霊王です。精霊王は精霊を束ねていると言われますが、その姿を見た物はいません。精霊教の神と呼ばれて崇められている存在ですね。そんな、精霊王を補佐する精霊が上位精霊にはいるという伝説もあります。此処までの事は教科書の十五ページまでに纏めてあるので各自読んでおいて下さい。エルフには血系魔法の〈精霊魔法〉がありますが他の種族にも使えない訳ではありません。その補助をする呪文が十八ページに載っているので各自やってみなさい。以上」


 そう言うとエルフの教師は教科書を閉じてしまった。

 呆気にとられた生徒達は急いで十八ページを開き呪文を探す。


「【我の願いに答え 精霊よ姿を顕現させよ】」


 誰かの呟きを皮切りに生徒達が呪文を唱えて行く。

 現れるのは風の精霊や土の精霊が多く、時々火の精霊や水の精霊が現れた。

 全てが光り輝く球で、属性によって色が異なる様だ。


「【我の願いに答え 精霊よ姿を顕現させよ】」


 ミズハが呪文を唱えると現れたのは闇色の球体。

 しかし、大きさは他の生徒の呼んだ下位精霊より一回り以上大きかった。


「ほう、闇の精霊ですか。珍しい事もあるものですね。それに下位精霊にしては力がある様子。ここら辺の纏め役でしょうか。貴女は随分と精霊と親和性が高いようですね」


 唐突にミズハの背後から現れたエルフの教師にナノハが驚く。

 今は授業中。つまり日の出ている日中。そんな光に満ちた環境で闇の精霊が出て来るのは珍しいのだ。

ミズハはドキリと心臓が高鳴った。

 精霊と親和性が高いのはアンディーと契約したからではあるまいか、と。


「今の時間に闇の精霊ですか。貴女もう一度呪文を唱えなさい」


「は、はい。【我の願いに答え 精霊よ姿を顕現させよ】」


 エルフの教師のどこか有無を言わせぬ言葉にミズハは呪文を唱える。

 そうしてミズハの元に現れたのは紫色の重の精霊だった。

 今度の精霊は、先程の精霊と違い大きさは他の者達とさして変わらない。


「重の精霊ですか。力は普通ですが闇の精霊といい重の精霊といい出現する率は低いと思うのですが。貴女には精霊を引きつける何かがあるのでしょうか」


 喋りながらも思考を纏めようとするエルフの教師にミズハは背後の教師に戦々恐々した。

 別にアンディーを隠している訳ではないがアンディーは表に出る事を余り良いと思っていない所がある。

 そんなアンディーの事を知っているのでミズハはアンディーの事を大々的に発表する気はない。

 その秘密もこの教師次第でばれるかもしれないと思うと背筋が凍る。


「まあ、良いでしょう。……未だ精霊を目視していない者はいますか? いないなら結構です。今日の授業を終了します」


 エルフの教師のその言葉にミズハはホッと息を吐いた。


 時は少し巻き戻ってアラン達はというと、武器学の授業にやって来ていた。


「よーし、お前達最初の授業は座学だ」


 グランダル・ロバイトと名乗った武器学の教師によって最初の授業の内容が告げられると教室中から悲鳴が上がった。

 武器学を専攻する生徒は体育会系の生徒が多い。

 つまり、座学は苦手としているものが多いのだ。


「はっはっは。まあ、最初はどんな武器や防具があるかだな」


 生徒の悲鳴を豪快に笑ってないものとしたグランダルは人族の様で、髪の色は褪せた金茶で瞳の色がオレンジ色だった。

 そんなグランダルの瞳は笑っている様で笑っていなかった。


「よし、先に防具からな。防具は教科書三ページからだ。防具の鎧には大まかに軽鎧と重鎧に分かれて――」


 グランダルの説明と一緒に生徒達が教科書を捲り出した。

 嫌がっていてもユグドラシル学園に通えるだけの知識のある生徒達は大人しく教科書を見る。嫌がって勉強せずにテストの点数が悪くなるのは本人の責任だからだ。ユグドラシル学園に入りたい人物は多く、退学者が出た所で補充の転校生が来るだけだ。


「今日は防具について徹底的にやったが、次回が武器だからな」


『えー!?』


「うっせー。武器と防具の扱いを知らないと武器も防具も選ばせないぜ」


 まだまだ座学が続くと知った生徒達が騒ぎ出すが、一部の生徒は静かなものだった。

 武器や防具の大事さを知っているというのは勿論、教師とのやり取りに馴染んでいる様にも思える。おそらく既に武器学を専攻した事のある生徒だろう。


「まあ、お前らが座学苦手なのはわかってるから武器の説明をさらっとやったら実技に入る。その時わからない事があれば良い武器や防具逃すぞ。毎年そういう奴が居るからな。んじゃ、解散」


 グランダルの説明に気を入れ直す生徒達。それはとても現金だった。

 しかし、武器学の授業は終了してしまった。






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