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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
24/69

競技祭3


 競技祭の昼休憩、学生たちは学園から支給されたお弁当を持ち様々な地で昼食を取っていた。


「今日のご飯も美味しい」


「そうね、美味しいわ」


 ナノハとミズハはニコニコしながらお弁当を食べていたし、アランとレイニードもお弁当の味に顔の筋肉が綻んでいた。


「私、学園の食事が食べれただけでも学園に来たかいがあったと思う」


「そうだよね、美味しいよね」


「そうだな、家のコックと良い勝負だな」


 ナノハとミズハの話にアランが割って入った。どうやらアランの家にも腕の良いコックが居るようだ。


「そういえばアランって良い所の出だよね?」


「何だ、気になるのか? ナノハ」


「別に。ただ、その割には庶民臭いと思っただけ」


 ナノハの問いにアランはからかい混じりに問いかけたが、ナノハは特に気にせず答えた。


「ミズハは気になったりしないか?」


「え? 特には。アラン達が良い所の出なんだろうなとは思っていたけど」


「そうか……」


 アランはミズハに気にならないか聞いたが、ナノハのアランの事を気にしてないと言わんばかりの反応に溜息が洩れる。

 ミズハ達を見ていた周りの生徒がアランの溜息でサムズアップした他は、春の暖かさに包まれていた。

 そうそうリア充になられてはたまらないというのが、周りにいた生徒の考えだ。


 昼休憩も終わり午後部が始まった。

 午後最初の競技は二人三脚。アランがミズハと共に出たがった競技だ。実の所、アランだけではなく男子の多くがこの競技に出たがった。二人三脚は男女混合の組みもあるからだ。

 二人三脚は白組と黄組が多くの点数を取り青組が落ち込んだため、大分横一列になって来た。だが、今までの獲得点数のためか頭一個青組が飛び出ていた。

 赤組ではこの調子なら逆転できると、赤組の団長達が発破をかけていた。


 二人三脚の次にリレーが始まり、少し時間を開けて大玉転がしが始まろうとしていた。

 大玉転がしは全員参加の競技で、生徒全員がグラウンドの集まれないため組みごとにタイムを競って優劣を着ける。

 赤組が最初に競技を始めるためミズハ達は早めに待機地点へと向かった。

 リレーの後に少し休憩があるのは、リレーの選手達の為だ。

 ミズハ達が決められた地点に並ぶと大玉が赤組の選手の上を転がり出した。落とさぬように、かつ素早く動く赤い大玉はあっという間にミズハ達の元に辿り着き通り過ぎて行った。

 中盤を過ぎ後半に入った所で赤組の選手達の上から大玉が転がり落ちた。周りに居た赤組の選手によって大玉は赤組の選手の上に戻ったがかなりのロスタイムになった。

 無事大玉を指定の位置に置いた赤組の選手達であったが士気は下がっていた。

 その後、白組、黄組、青組と大玉を転がして行ったが大玉を落としたのは赤組だけで、大玉転がしでの赤組の順位は四位になってしまった。その結果、二位に着けていた赤組は四位に転落した。


 最後の混合リレーを残して現在の点数は、赤組680点、白組691点、黄組691点、青組698点と青組がなおリードし、白組と黄組が同店の二位に着けている。

 最後の混合リレーは一位が50点、二位が30点、三位が10点と赤組にも逆転のチャンスは存在する。

 それどころか、どの組みにも一位へのチャンスは存在していた。一位を取った組みの勝ちだ。

 どの組みも力の限り声援を送り選手達を応援する。

 混合リレーは一学年四人、一チーム十二人選出の競技だ。混合リレーに出たい選手を集め、その後にタイムを競って出場選手を決める。

 ミズハとアランは混合リレーの代表選手に選ばれていた。

 女子から男子、男子から女子と交互にバトンを渡していき、最後のアンカーは三年生が勤める。始まりは一年女子からだ。

 赤組、白組、黄組、青組と横一列に並び、始まりの合図を待つ。

 それぞれの組みの女子が一人ずつ並び火花を散らしている。

 身体能力が高いためか最初の四人は全員が獣人で、獣耳や尻尾が興奮気味に動いていた。

 スタートの合図の空砲が鳴らされ各選手達が走り出した。

 最初の100メートルを走っている間に次に走る選手達が並び出した。現在の順位は青組が一番手で黄組が二番手、赤組が三番手で白組が最下位だ。

 赤組の二番手の選手は徒競争200メートル走に出ていたケニス・グランドールだ。

 ケニスは三番手バトンを貰うと猛然と走り出し、僅差の黄組を抜き二番手に躍り出た。

 差の出ていた青組に迫り同時に次の走者へとバトンを渡す。

 次の走者、赤組三番手はミズハの番だ。

 ミズハはバトンが渡った瞬間、トップスピードを出し青組の前に出る。これで赤組は暫定一位だ。

 ミズハは青組との差を広げながら次の走者であるアランの元に一周回って戻って来た。


「アラン頼んだわよ」


「おう、任された」


 アランはミズハからバトンを貰うとミズハの広げたさを更に広げにかかった。アランが二年の最初の選手にバトンを渡す頃には二位の青組との差が10m程開いていた。

 しかし、二年の選手達が走っている間に差が段々と縮まって行く。

 三年の選手にバトンがわたる頃には差が無くなり、接戦となっていた。

 三年の走る距離は一選手200mなので、青組との接戦になるかと思えば白組が上がって来て三つ巴の戦いになった。

 三年最後の選手のアンカーになるまでに赤組と青組、白組は抜かし抜かされしながら順位を変えて行く。

 白組アンカーが最初にバトンを貰い、赤組と青組が続く。

 最後のカーブで赤組が一歩前に出て、白組と青組が追いかける形になった。

 そしてついにゴールのテープを赤組のアンカーが切った。


 こうして競技際の全ての競技が終わり、点数が付けられて行く。

 赤組730点、白組721点、黄組691点、青組708点となり、赤組の逆転優勝となった。


「よっしゃー、優勝だ!」


「やったー、優勝よ!」


 アランとナノハが他の赤組の選手達と一緒に歓声を上げれば、ミズハとレイニードも嬉しそうな声を出した。


「優勝できたね」


「そうですね、無事優勝出来ました」


 赤組の歓声の中他の組は悔しそうな声を洩らしていた。


 放送が入り閉会式の為に生徒達がグラウンドに並ぶと、学園長が台に登り話しだした。魔道具を使った道具を使っている為、後ろの方の生徒たちにも声は届く。

 最初に行われたのはトロフィーの授与。

 赤組の団長が前に出て学園長からトロフィーを受け取る。そのトロフィーを赤組の団長が掲げると赤組から歓声が上がる。


 その日は簡単な片付けを行い解散となり、生徒達は寮へと引き上げて行った。

 全員が一緒にお風呂に入る事は出来ないため、順番にお風呂に入って行く。

 貴族など一定以上のお金を払える生徒用の部屋にはお風呂も併設されている為、全生徒が入る芋洗い状態にはならずに済んだがそれでも人数は多かった。


「うぷ、お風呂人多すぎ」


「確かにね、でもさっぱりできたね」


 ナノハが人酔い気味に話せばミズハも同意しつつ、汗を流せた事にホッと息を吐き出す。


「そういえば優勝すると食券30枚もらえるんだよね」


「そうね、でもただで食べられる食事でも十分美味しいけど」


 ナノハの言う食券とは学園の校舎と寮にある食堂の食事の券の事だ。食堂では誰でもただで食べられるメニューとお金を払って食べる特別メニューの二種類が存在している。

 その特別メニューをお金は払わず食べる事ができるのが食券だ。それが30枚、豪華な食事を夢見るナノハは目をキラキラさせて夢見る様に呟いた。


「でも、食券が貰えるのは休みが明けてからだよ」


「そ、そうだった……」


 食券が貰えるのは競技祭の代休が明けた後の学園でだ。その事を思い出したナノハは嘆息を漏らした。


「食券がもらえたら一緒にご飯を食べに行きましょう」


「うん。約束だよ」


 ナノハが落ち込むのを見てミズハは急いで言葉も着け足した。

 その言葉にナノハは嬉しそうに笑みを漏らした。






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