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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
23/69

競技祭2


 徒競争の選手待機地点に辿り着いたアランは名残惜しそうにミズハを解放した。

 ミズハは女子選手の待つ地点へ、アランは男子選手の待つ地点へと向かった。

 走る順は女子が先で、男子が後だ。体格が違うせいか男子の方が早いので見応えがあるのだ。

 最初は100m走、次に200m走、最後が500m走だ。

 更に一年、二年、三年と更に走る順が違う。一年から始まり二年、三年へと引き継がれる。一位は三点、二位は二点、三位は一点だ。四位以下は点数が入らない。

 一年女子から進み出し順序良く進んでいく。

 徒競争に出たいというだけあり皆足が速い。

 魔力で肉体を強化して素早さを上げる事ができるが、魔力は競技祭では使用禁止だ。

 ミズハの順番は一年女子最終番。一年の女子の中でも足の速いミズハは一年女子の最後の華を飾る事になった。

 そして、とうとうミズハの順番になった。


「ミズハ頑張って!」


「ミズハ頑張って下さい!」


 赤組のスタンドからナノハとレイニードの声援がミズハの元に届いた。

 アランはというと応援しようとして一年男子から口を押さえられていた。

 魔道具からパンと音が鳴り選手達が走り出した。

 100mで一周するラインのスタート直後は長い直線だ。

 真っ先に先頭に躍り出たのはミズハでどんどん周りを引き離して行く。最初のコーナーを曲がり次のコーナーを曲がった時には二番手の選手との差が数mにもなっていた。

 ゴールしたミズハに10m遅れ二位の選手が息も絶え絶えに到着した。

 一位の旗のある所に並ぶミズハに赤組の選手達が歓迎の意を示した。


 一年の徒競争が終わり二年、三年へと変わり、男子の部に変わった。

 赤組のスタンドに手早く戻ったミズハは男子一年最後を飾るアランを応援した。


「アラーン、頑張ってー!」


「アラン頑張ってよね!」


「アラン頑張って下さい!」


 ミズハ、ナノハ、レイニードの順に声援を上げたが、アランの耳に入ったのはミズハの声だけだった。


「それにしても最後って獣人ばっかね」


「それはそうですよ、獣人は身体能力高いですから」


「ミズハの姿が違和感ありまくったものね」


 ナノハとレイニードの会話にミズハはギクリとしたが無言を貫いた。今だ〈人化の術〉を使っているミズハに取って触れられたくない所だ。


「あ、アランが走り出した。おお、早い早い。ミズハ確り応援してあげなよ」


「う、うん。分かっているよ。……アラン頑張って、その調子」


「まあ、獅子の獣人ですからね。瞬発力は高く持久力はありません。100m位なら大丈夫でしょう」


 男子の中で一歩前に出たアランを褒めつつ、ナノハはアランの士気を上げるためミズハに声をかけた。

 ミズハの声が響くとアランは更に加速し二歩三歩と前に出始めた。

 レイニードは少し呆れつつ獅子の獣人の生態について告げた。

 真っ先にゴールの線を切ったアランはミズハの居る赤組のスタンドを振り返った。


「凄く褒めて欲しそうに見ているね。何時から犬の獣人になったのかしら? 尻尾がブンブン振られているわね」


「そうですね、ミズハ帰って来たら褒めてあげて下さい。私はそろそろ待機地点に向かいます。徒競争200mは次ですからね」


「わ、分かったわ。レイニード行ってらっしゃい」


 ナノハは犬の様に尻尾をブンブン振るアランに生温かい目を向け、レイニードは幼馴染の為にミズハに要望し待機地点へと向かった。

 どもりながらも承諾したミズハはアランを如何褒めようか悩んだ。




「ミズハ! 見ていてくれたか?」


 アランは帰って来ると真っ先にミズハの元に向かった。


「み、見ていたわよ。一位おめでとう」


「おう!」


 何処か引きつった答え方になったミズハだったが、アランは気にせず耳と尻尾をピンと立てた。その様はとても嬉しそうでミズハと共にいるナノハの事は見えていない様だった。


「アラン、一位おめでとう」


 ナノハは少し苦笑しながらアランに祝いの言葉を言った。


「ナノハか……、ありがとう」


「ちょっと、私さっきから居たんだけど!」


「ああ、悪い。見えていなかった」


 ナノハの祝辞にやっとナノハが居る事を思い出したアランにナノハが文句を言う。アランも自分が悪いと思ったのか直ぐに謝った。


「次はレイニードの番だな。女子の間に戻れて良かったよ」


 徒競争の200m走に出場するレイニードが出場する前に帰って来れた事にほっとするアラン。


「点数はどうなっているんだ……。赤が256、白が244、黄が231、青が283か。接戦って言うには青が少し飛び出ているか」


「青組とのさも縮まっているし、三位の白組との差が12点。まだまだ分からないよ」


 アランが点数を読み上げ、ミズハが推察をする。


「ミズハ、アラン。男子が走り始めたよ」


「あ、本当だ」


「レイニードは後の方だったはずだが。ああ、いたいた。最後から二番目だな」


 ミズハとアランが話していると、男子の部に変わったのをナノハが教えた。

 ミズハは点数表から競技に目線を移し、アランはレイニードの場所を探した。


「あれ? レイニードの後の最終番、うちにクラスの男子じゃない? 人間だから目立ってるね」


「ああ、グランドールさんね」


「み、ミズハ知り合いか!?」


 ナノハがレイニードの後ろに居る人族に注目すると、ミズハが家名を言う。アランはミズハが家名を知っている事に焦った声を出した。


「え? クラスの人の名前じゃない。クラスの人の名前覚えないの? それに混合リレーに出ているし」


「あ、ああ。そうだな、覚えるな……」


「ええ! ミズハ、クラス全員の名前覚えたの!?」


「え、うん。覚えたけど」


 クラスの人の名前位覚えない? と首を傾げるミズハにアランはホッと息を吐き頷いた。ナノハは未だ覚えきれていないのか驚きの声を上げた。

 ナノハは頭が良いが興味を持たないと中々覚えられない。しかし、色々興味を持つため結果的に物知りになる。


「お、レイニードの番だ。レイニード行けー!」


「レイニード、頑張れ!」


「レイニード、頑張って!」


 アラン、ナノハ、ミズハの声援は赤組の歓声にかき消された。しかしレイニードは無事一位でゴールしたのだ。

 そして最終番が走り出した。


「グランドールの奴、相変わらず早いな」


「本当、早いわよね」


「え? 私ずっと文系だと思ってた」


 アランとミズハは感嘆の声を上げれば、ナノハはずっと文系だと思っていたのかとても驚いていた。

 競技際の練習は種目ごとに練習する為、種目の違うナノハはグランドールの走る姿を始めて見たのだ。

 獣人の揃う最終番、人族でありながら獣人を置き去り走って行く。

 グランドールがゴールを迎えると赤組から歓声が上がった。

 悠々首位を取ったグランドールに騒然とした声が上がる。


「うーん。ミズハの時並みの騒々しさだね」


「え? こんなにざわめいていた?」


「うん」


「ああ」


 ナノハの呟きにミズハが反応すれば、ナノハとアランが頷いた。


 二年男子徒競争200mに移り変わり、レイニードがミズハ達の居る赤組のスタンドに戻って来た。


「ただいま戻りました」


「おう、一位おめでとさん」


「おめでとう」


「レイニード、おめでとー」


 レイニードの帰還の言葉にアランが真っ先に反応し、ミズハとナノハも祝福した。

 四人が赤組のスタンドから選手達を応援していると、どんどん点数の集計が進んでいく。そうして選手が二年から三年に移り変わり、男子から女子に変わって行く。

 徒競争の200mから500mへと移り変わると200m走の点数が集計され、それぞれの点数が表示された。


「青組との差が32点から31点差に変わったな」


「そうね、このまま点数を縮めれば逆転できそうだね」


 アランとミズハが点数について語っていると、ナノハとレイニードも会話をしていた。


「応援頑張りましょう」


「そうですね」




 徒競争の三部門が終わると障害物走に変わった。

 障害物走100mにはアランが、障害物走200mにはレイニードが参加しそれぞれ一位を取って来た。

 その結果の点数は赤組557点、白組531点、黄組544点、青組573点になった。

 こうして競技際午前の部が終了したのだ。






最近書き溜めていたものがパーになったので少し更新が遅れるかもしれません。

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