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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
22/69

競技祭


 ポンポンと空砲の音がなり競技祭が始まった。

 始まりの挨拶を学園長が話し、トロフィーの返還の後競技祭の火蓋が切って落とされた。


 最初の競技は落穂拾いという競技で、背負い籠と火バサミを持った選手が並んでいる。50m先には紅白の玉が落ちており、その玉を各五個ずつ拾い更に50m先のゴールへ着いた順を競う。

 落穂拾いに参加する生徒達がスタート地点側に並び始めた。

 ミズハとナノハは落穂拾いには不参加なので赤組の控えスタンドで待機していた。そこへアランがレイニードを連れやって来た。


「やあ、ミズハ。いよいよ競技際が始まったな」


「こんにちはミズハ、ナノハ」


 ミズハしか見えていないアランと確り二人に挨拶するレイニード。どちらがより好感が持てるかというと当然後者だ。


「こんにちはアラン、レイニード。いよいよ始まったわね」


「レイニードこんにちは。それに引き換えアラン。また私の事抜かして!」


 アランの行動に慣れたとはいえミズハの返答は無表情気味だ。

 それに対してナノハは表情豊かにプンプン怒りつつ答えた。


 四人独特の挨拶の後、揃って落穂拾いを観戦していたが、赤組の点数はあまり良くなかった。


「初っ端からこれではな。士気が落ちなければ良いが」


「心配ですか?」


 アランの呟きにレイニードが答えれば、アランは腕を組み紅組の三年の控室を見た。


「大丈夫じゃない」


 アランとレイニードのやり取りを見ていたミズハの耳に赤組の団長達の声が聞こえて来た。〈人化の術〉をしているとはいえミズハの耳はとても良い。その為、紅組の士気を回復させるため上級生が動き出したのを捉えたのだ。

 種族は違うとはいえ同じく音を聞きつけたアランは組んでいた腕を解き落穂拾いの選手達を見つめた。


「そろそろ私はスタートゲートの方に集まらないといけないから行くね」


「ナノハ行ってらっしゃい。頑張ってね」


 ナノハは次の競技、玉入れの選手なのでスタートラインの近くにある待機場所に向かって行った。

 ミズハ達はナノハを見送り紅組のスタンドから終盤の落穂拾いの選手達を見守った。


 落穂拾いが終わってみれば紅組は現在最下位。ビリからのスタートになった。

 しかし、三位の白組との差は六点。次の玉入れで十分追いつける差だった。

 玉入れは四組同時に三回行われ、玉の量を競う。一番玉の多かった組みに三十点、二番目の組に二十点、三番目の組に十点入る。残念ながら四位の組は〇点だ。


 玉入れの最初の選手達が四つある籠の近くに移動して行く。

 籠の近くにはそれぞれ赤、白、黄、青の玉が撒かれており、赤い籠に赤の玉を白い籠に白い玉をとそれぞれ入れる場所が決まっている。赤い籠に赤以外の玉が入った場合点数にはならない。


 最初の組にナノハの姿は無く、個人ではなく組みを応援していた。

 結果三位という結果になった。この時、総合点三位だった白組が四位だったため総合点で抜き返し三位になった。


 二組目の玉入れの選手が入場して来て、その中にナノハの姿を見つけたミズハ達はナノハの応援を開始した。


「ナノハ、頑張ってー」


「ナノハ頑張れよ」


「ナノハ、頑張って下さい」


 ミズハ、アラン、レイニードが応援するとナノハは声が聞こえたのかミズハ達の方をチラリと見つめた。

 玉入れ二戦目が始まり、ナノハは赤い玉を赤い籠の近くの射手に渡し始めた。

 どうやら役割分担をして籠に玉を入れる様だ。

 一つ二つと籠に玉が入って行き、籠は重そうに垂れ下がり出した。

 ピー、と笛の鳴る音が響き二戦目の玉入れが終了した。

 教師が前に出ると玉を数えだした。

 赤組の順位は二位。一位の青とは僅差で会ったが二位は二位。二十点が加算された。


 玉入れ三戦目が始まり二戦目に出ていた選手達がチラホラと赤組のスタンドに戻って来た。


「ただいま。あー、疲れた」


「お帰り、ナノハ」


「お帰り。ってお前、玉拾っていただけだろ」


「なにおー」


 ナノハが帰って来てミズハが迎えるとアランもそれに続いた。レイニードも続こうとしたがアランとナノハの言い合いになっていた。


「アラン止めて下さい。ナノハ、お帰りなさい」


「……、ただいまレイニード」


 レイニードがアランを止めるとナノハも渋々矛を収め、椅子に座った。


「三試合目が終わったな。……これで赤組が76点、白組が52点、黄組が104点、青組が126点少し離されたな」


「まだまだ始まったばかりだし、これからだと思うけど。四位も脱したし士気もそれ程悪くないよ」


 アランとミズハの会話にナノハ達も加わる。


「そうよ、まだまだこれからじゃない。貴方達がこれから頑張れば良いのよ」


「そうですね、まだこれからです」


 レイニードも続いたがアランがまた混ぜっ返したため険悪な空気が流れる。


「ナノハお前人任せか」


「応援はしますー」


「もう、二人ともいい加減にして!」


 それを見ていたミズハが居たたまれなくなり、少し強めに止めに入るとアランはコロリと態度を変えた。


「次は綱引きだな。結果はどうなるか」


 その余りの態度の変えぶりにミズハ達三人はハァと溜息を吐いた。


 綱引きも三回順位を競う。最初は赤組対青組、黄組対白組が綱を引き合う。そして勝ったのは赤組と白組。勝った赤組対白組、負けた青組対黄組が向かい合い綱を持った。

 順位としては白組が一位、赤組が二位、黄組が三位、青組が四位となった。

 順位のポイントは入ったが順位は変わらず。ただ点数の差が縮まった。

 二戦目三戦目と続き、次の競技借り物競走の選手達がスタート地点に集って行く。

 赤組の綱引きの結果は、一戦目が二位、二戦目が一位、三戦目が三位となった。結果順位は二位になったが、一位の青組も点数を伸ばし順位をキープしている。

 だが、50点差が30点差にまで縮まっていた。


 借り物競走が始まり、借り物を借りに選手達が東行西走し様々な物や者を借りて行く。

 中には『気になっている人』など本人の羞恥を誘う物もあったが、借り物競走はどんどん進んでいく。


「しまった。参加すれば良かった」


 借り物競走を見ていてポツリと呟いたアランにナノハとレイニードは生温かい目を向けた。

 アランにしてみれば少しでもミズハに自身の好意をアピールしたくて仕方ないのだ。唯一分かっていないミズハが如何したんだろう、と首を傾げただけだった。


「運よくそれ系の命令書取れても、激ニブのあの子には気付かれないわよ」


「……そうだよな……」


「まあ、頑張って」


 ナノハとアランの会話もミズハにはとんと分からないものだった。


「それは置いとくとして。ミズハとアランはそろそろ徒競争集まりに行かなくて良いの?」


「ああ、そうだ。行かないとな。ミズハ一緒に行こう」


「良いけど、徒競争は男女別よ」


「それでも!」


 訝しげながら頷いたミズハにアランは機嫌を直し、ミズハをエスコートしつつ徒競争の選手の集まる待機地点へと向かった。


「あのアランを見て何で気付かないかな……」


「そうですね……」


 そう言ったナノハとレイニードの声は幸いにも二人には届かなかった。






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