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狐少女の日常  作者: 樹 泉
二章 ユグドラシル学園一年生編
19/69

ナノハ


 女子寮の自室に戻ったミズハは扉を背にズルズル崩れ落ちた。


「な、何だったの?」


【あれは多分……(番に対する態度だったと思うよ)】


「え? アンディー何か言った?」


【ううん、何でもない】


 アンディーの声は途中から小声になっており、ミズハには聞こえなかった。それに対して訪ねたミズハだがアンディーは曖昧に笑って言葉を濁した。

 アンディーに取ってアランの態度は分かりやすいものだったが、それをミズハに教える義理は無かった。


 コンコンコンコン

 ミズハが床に座りアランの態度に着いて悩んでいると扉をノックする音が聞こえた。


「はい。どちら様ですか?」


 ミズハが扉を開けると一人の少女が立っていた。


「初めまして私はナノハ・リシュティーユといいます。隣の部屋でしたので挨拶に伺いました」


 そう言ってミズハの前に現れたのは金髪碧眼の何処かミズハにも似た見た目のエルフの少女だった。


「初めましてリシュティーユさん、私はミズハ・タマモールといいます。リシュティーユさんは一年の代表で宣誓した人ですよね」


「ナノハと呼んで下さい、私もミズハと呼ぶので。確かに私は一年の代表として話をさせてもらいました」


「宜しくナノハ、もっと自然に話しましょう。私も気軽に話して良いかな?」


「こちらこそ宜しくミズハ。私も気軽に話してくれた方が嬉しいわ」


 ミズハとナノハは手を出し合うと確り握手した。


「ところでミズハ。獣人のアラン君だっけ? ミズハにいきなり話かけていたけど知り合い?」


 ずいっとミズハの顔に自分の顔を近づけナノハは聞いて来る。


「う、いいえ。教室に入る前に話しかけられただけ」


 ミズハは少し後ろに引くとナノハの質問に答えた。


「ふーん、そっかそっか」


 ナノハはミズハの答えを聞くとニヤニヤ笑い始めた。


「そうだミズハ一緒に食堂に行かない?」


 ミズハが少し困った顔をしているとナノハは話題を変え一緒に食堂に行かないか誘った。


「うん、良いよ」


 ミズハはいきなり変わった話題に少し面食らったが、了承の返事をした。


 二人が並んで食堂に向かうと二人と同じ一年生が既に列をなしていた。二年と三年は既に授業があり学校の方に居る。

 二人は列に並び昼食を貰うと席に着いた。寮の食堂は一年から三年までの女子生徒が座れるように広く取ってあり余裕で座る事ができた。


「ん、美味しい」


「そうだね、美味しいね」


 ナノハが美味しそうにご飯を食べ始め、ミズハは頷きながらご飯を食べて行く。


「ねえミズハ、ミズハは何の選択授業にするか決めた?」


「うーん、決めていないよ」


 ユグドラシル学園では来月である五月から選択授業を選ぶ事ができる。


「一年は必修科目七科目だから選択できる科目は三科目よね」


「何で三科目だけなのかしら、もっと選びたいのに」


 ミズハの確認にナノハは愚痴を言う。


「必修が世界史・地理・現代社会・数学・体育〈保健〉・共通文学・魔法学。選択科目がエルフ語・ドワーフ語・獣人語・古代語・古典・音楽・美術・工芸・家庭科・国別史と、えーと他は……」


「武器学・動物学・植物学・精霊学・古代地理・魔法陣・薬学・錬金術・魔物学の十九科目ね」


 ミズハは選択科目を一つ一つ上げて行くが途中で思い出せなくなると、ナノハが言葉を繋いだ。


「私は、語学は大丈夫だから他を選びたいな」


「そうなの? 凄いわね。ミズハ良かったら語学教えてくれないかしら? そうしたら私他の科目を選ぶわ」


 ミズハはアリアナ、エスターク、ダグといったエルフ、獣人、ドワーフから各種族の語学を学んでいた。

 各種族は差こそあるが世界に散っているのでそれなりに交流はある。しかし語学となると中々浸透しない。何せ共通語という共通の言葉があるのだから。

 その為語学を多種修めているものは少ない。因みにミズハは古代語もアリアナから習っていた。


「私が? 上手く教えられるとは思えないよ」


「ミズハ、お願い」


 悩むミズハにナノハは手をパンッと合わせお願いして来る。


「教え方下手でも文句言わないなら良いよ」


「言わない、宜しくね。あ、ご飯早く食べないと。先輩達が帰って来た」


「あ、本当だ」


 二、三年が帰って来たのに気付いたナノハが手早くご飯を食べ始め、ミズハも見習った。

 ご飯を食べ終えた二人は自室に戻って行った。


「ミズハ早速何か語学を教えてくれない?」


「良いよ、ナノハの部屋に行けば良い?」


「うん、ありがとう。私の部屋に来て」


 一度角の自分の部屋に戻ったミズハは筆記用具を取りナノハの部屋に向かった。

 ミズハの部屋は二階の角部屋で、向かい側は倉庫になっている。右隣がナノハの部屋だ。

 ナノハの部屋に行きノックをすると直ぐにナノハが部屋に上げてくれた。ナノハの部屋は若葉色のカーテンがかかっており温かい感じのする部屋だった。


「エルフ語と古代語は分かるからドワーフ語か獣人語を教えて」


「えーと、どっちが良い?」


「獣人語で!」


 ミズハがドワーフ語と獣人語どちらが良いか聞くと、ナノハは勢いよく答えた。

 ナノハの部屋の机に紙を広げミズハは獣人語の字を書いて行く。


「獣人の文字は二十六文字で、二階建て型、一階建て型、地下室型に分かれるわ。分け方としては横に四本線を引き下から二番目の線を中心に一番上の線までかかるのが二階建て型、下から三本目の線までのが一階建て型、一番下の線に入るのが地下室型よ。……如何したの?」


「勉強は良いのだけど。その……ミズハはエルフの血を引いているわよね? なのに、そのね、む、胸があるのはどうやっているのかしら?」


 ナノハの質問にミズハはキョトンとした後、自分の胸を見降ろした。ミズハの胸はけして大きい方ではないが確り自己主張していた。

 ナノハが何故そんな質問をしたかというと、エルフは何故か胸が小さいのだ。種族的なもので、エルフの女性は胸が小さい事にコンプレックスを持っている事がある。ナノハも自分の胸が小さい事に悩んでいたのだ。


「確かにエルフの血は引いているけど。胸に関しては特に何もしていないよ」


「そう……」


「それより勉強するんでしょ」


「そうね」


 ミズハは居心地が悪くなり話を反らした。

 そうして勉強は進み日が暮れて行った。




「ミズハ今日はありがとう」


「いいえ、また教えに来るわね」


 ミズハとナノハはこうしてユグドラシル学園の初日を終えた。






獣人語はローマ字をモデルにしています。


来週の更新はお休みさせていただきます。

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