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狐少女の日常  作者: 樹 泉
一章 幼少期編
15/69

パーティー

少し長めになります。


 ミズハがEランクの冒険者になって半年、季節は初秋を迎えていた。

 その日最初に起きたのはミズハだった。

 ただし自分で起きたのではなくアンディーに起こされてだったが。


【ミズハ起きて。大変だ魔物の反乱が起きている!】


 アンディーのその言葉にミズハは飛び起きると、風魔法を使用して屋敷の主要人物に声を届けた。

 半年前のミズハにはここまで素早い対応はできなかっただろう。

 この半年でミズハは冒険者としてCランクにまで上り詰めていた。

 戦闘面で冷やりとする事は少なかったが、精神面では大いに成長していた。


 ミズハは素早く着替えると食堂に向かった。

 声を届けた相手全員と直ぐに話す為だ。

 食堂に入るとミズハの養父母四人とトレンドが揃っていた。


「遅れてごめんなさい、さっき風魔法で届けた通り魔物の反乱が起こったようです。詳しくはアンディーから聞いて下さい」


【飛行タイプの魔物の反乱だ。構成はバトルホーク、ウォーイーグル、ハーピィー、レッサーワイバーン、ワイバーンの群れだ】


 敵の構成の多さにトレンドが息を飲む。

 羽根がまるで鉄の様に硬い大型の鷹バトルホーク、鋭い嘴と鉤爪を持ち魔法が使える個体も居る鷲ウォーイーグル、人の女性の身体に翼をもつハーピィー、下位のドラゴンといわれるレッサーワイバーンとワイバーン。どれもそれなりに強い固体で、空を飛べるというアドバンテージを持っている。


【そいつらがグラール方面に飛んできている】


「何だと、この街に!? 今日は陛下の戴冠式だぞ!」


 そう今日はターザ国国王の戴冠式で多くの客人が王都グラールに集っているのだ。


「クソ! 冒険者に召集をかける。闇の精霊、規模は分かるか?」


【ごめん風の精霊は騒ぐばかりで分からない。もっと高位の精霊が居れば分かったのだけど】


 ゲオルクの問いにアンディーはすまなそうに答えた。


「まずは規模の確認か、確認取れ次第国にも報告しないとな。ミズハ! お前にも出て貰いたいがお前は俺の代理で陛下の戴冠式に出てくれ」


「はい! って、えええぇぇ!?」


「よし、アリアナ、エスターク、ダグお前達も手伝え」


「ちょっと待って!」


 ゲオルクは今後の計画を即座に立てるとミズハに後を任せ、アリアナ達を連れて立ち去ってしまった。

 ミズハの話は聞かずに。


「え? 私が戴冠式に出るの!?」


【……そうみたいだね。クルエラに連絡してみたら?】


「……そうする。あ、服如何しよう」


 戴冠式に呼ばれているのはゲオルクだった為ミズハのドレスは容易していない。

 それも含めてクルエラに連絡する事にした。


「って言ってもまだ早朝だしな。ご飯食べてからの方が良いかな」


 そう言ってミズハは早めの朝食に取りかかり、クルエラに連絡した。

 連絡を受けたクルエラは直ぐさにミズハ用のドレスを送ってくれて、更に戴冠式は自分と一緒に過ごせば良いと手紙をくれた。

 戴冠式まで時間がない為ミズハは急いでお風呂に入りドレスを着た。


 戴冠式に列席する為馬車に乗り王城に辿り着いたミズハを待っていたのは好奇の目だった。

 ミズハはクルエラを中心にごく少数の者としかあった事がないので、戴冠式に参加している者はミズハの事を知らないのだ。

 クルエラに教わった通り微笑を浮かべ、好奇の目を掻い潜っているミズハにクルエラが近付いて来た。


「ミズハ待っていたわ、此方にいらっしゃい」


 クルエラの呼び声に参加者の多くがミズハに注目した。

 クルエラはターザ国の元三大女傑と言われていた程の要注意人物だ。その注意度合いが人によってまちまちだとしても注目されていた事に変わりはない。


「やあミズハ、君も来ていたのか」


 クルエラの背後からやって来たのはユグドラシル学園に在学中のクリストフだ。

 クリストフが声をかけた事で会場の注目は更に増す。

 クリストフのミズハへの対応が変わっているのは、以前ゲオルク邸にやって来た時ミズハが呼び捨てで良いと言ったからだ。

 クリストフは以前は王孫であったが、今では王の息子だ。

 継承権は低いとはいえ一国の王子が話しかけた相手はいったい誰かと、ミズハへの注目はいやがおうにも増していく。


「クリストフ殿下お久しぶりです」


 ミズハの挨拶に更に注目は増す。


「ミズハ、メリシュの元に行くからいらっしゃい。クリストフ殿下はどうなさいます」


「僕もご一緒して良いですか」


 ミズハがクルエラの元に近付いて行くと参加者は注目しつつも避けるという器用なまねをした。

 クリストフは学園に入り幾分大人っぽくなっていて、年頃の女性が注目している。しかし年若い令嬢がクルエラを前にクリストフに話しかけるのは難しい。

 クリストフも揉みくちゃにされるのは嫌なのでクルエラに着いて行く。


「クルエラ、ミズハは見つかったかい? ああ、一緒に来たね。なんだクリストフ殿下も一緒かい」


「お久しぶりですメリシュ様」


 ミズハの挨拶に相好を崩し迎え入れた。


「メリシュ様お久しぶりです」


 クリストフもメリシュに挨拶をする。


 その後戴冠式が始まり、式は粛々と執り行われ戴冠式後のパーティーが始まった。

 位の高い公爵家の人間から新王に挨拶をしていく。

 Sランク冒険者にしてグラール冒険者支部のギルドマスターゲオルクの順番は公爵家と同じくもっとも早い。

 代理という事で公爵家の挨拶の一番最後にしてもらい、ミズハも新王の元へ挨拶に行った。


「グラール冒険者ギルド、ギルドマスターゲオルクの代理ミズハ・タマモールと申します。本日は戴冠おめでとうございます」


「うむ、経緯はゲオルクから聞いておる。騎士団も幾隊か派遣した、御主も心配せずパーティーを楽しんでくれ」


 ミズハは新王から言葉を賜り、これもまた注目に一役買った。

 新王としては魔物の反乱に対応しているという事なのだが、見ている方はそうは取らない。王が話しかけるほど重要な人物と取った。


(うう、いい加減逃げ出したい……)


 ミズハは微笑の仮面を被り、心の中では嘆くというクルエラ仕込みの技を示した。


 パーティーが始まりミズハは依然クルエラ達と共にいた。

 ミズハに声をかけたい者も居たが、クルエラの前になすすべもなく去って行った。


「クルエラ様、お姉様、此方にいらしたのですね!」


 ベルの鳴る様な子供の高い声と共にミズハ達に近付いて来る者がいた。


「ヒルダ殿下お久しぶりです。パーティーに出席なさっていたのですね」


「お姉様お久しぶりです。お爺様の戴冠式後のパーティーですもの出席しますわ。途中までですけれど」


 ミズハ達の元に来たのはヒルダ・フローレン・ターザ、ターザ国の王孫殿下だ。

 ヒルダは王太子殿下の長女に当たる。

 以前クルエラを通して出会ったミズハとヒルダは直ぐに仲良くなった。そしてヒルダはミズハの事をお姉様と呼ぶようになったのだ。


「クリストフ叔父様もお久しぶりです」


「ヒルダ久しぶりだね」


「クルエラ様ご一緒しても宜しいでしょうか?」


「宜しいですわ」


 ヒルダの参加を快く受けるクルエラ。


「ファーストダンスが始まったね」


 クリストフの言葉通り広間の中央では新王と王妃がダンスを踊っていた。


「ミズハ、ダンス踊れるよね。僕達も踊ろうよ」


「え!? 私がですか?」


 クリストフの提案に驚くミズハ。

 クリストフはミズハの手を取り広間の中央に出て行く。

 ファーストダンスの曲が終わり、多くの客達が広間の中央に集まり出す。

 集まった者の中にはミズハ達に注目する者も大勢いた。


「クリストフ殿下は婚約者の方と踊らなくて宜しいのですか?」


「ん? 僕に婚約者は居ないよ。僕は八番目の男子で政治に関わる事は難しい。だから夢である冒険者を目指せるけどね。冒険者は何時死ぬか分からない、だから婚約者はいらないんだ。これは陛下を始め他の王族を説得した成果かな」


 甘やかされていてもクリストフは一国の王族、王族の義務は苦手ではあるが果たさない訳ではない。

 第八王子という身分と立場を利用して説得をしたのだ。


 曲に乗りクリストフのリードでミズハは踊って行く。

 二人の身長差はそれなりにあるが、クリストフのリードもミズハの踊りもとても上手で見ている方にも華があった。


 一曲踊り終えた二人にこれ幸いと人が群がり出した。

 クリストフに挨拶する者、ミズハの値踏みをする者様々だ。


「クリストフ殿下お久しぶりですな、そちらのお嬢さんは何処の出で?」


「クーラン侯爵久しぶり、紹介しよう此方はミズハ・タマモール。ミズハ此方はクーラン侯爵だ」


「不勉強ながらタマモールという名の家は聞いた事が御座いませんな」


 ひと際不遜に話しかけて来た男、クーラン侯爵はクリストフの紹介からミズハが自身より格下と見て見下した態度を取った。

 紹介する時は地位の上の者に先に紹介をするのがしきたりだ。


「ミズハはグラールの冒険者ギルドマスター、ゲオルク殿の娘だよ」


「ああ、あの伯爵家の者の娘ですか。平民が何故このパーティーに出席が適ったのでしょうな」


 クリストフもクーラン侯爵が下の者を見下す性格なのを知っているので、ミズハを紹介する時養女ではなく娘と言ったが、クーラン侯爵の態度は変わる事はしなかった。否、前以上に居丈高な態度を取った。


「ミズハは平民とはいえ冒険者ギルドのギルドマスターの代理だよ」


「冒険者など下々の者が着く職業、そんな者に伯爵家の者が着くなどとんでもない。殿下も子供の様な夢は忘れて確り前を見るべきです」


 クーラン侯爵のもの言いに、より頭に来たのはクリストフの方だった。クリストフに取ってゲオルクは尊敬する相手だ。

 ミズハの方は前々からクルエラを始めゲオルク達から言い含められていた。


「ほう。クーラン侯爵の前を見るとはどんな事かな?」


「おお、分かっていただけましたかな。そんな娘より私の娘などいかがですかな」


「冒険者になる僕に宮廷の女性では合わないだろう」


 ミズハから見たクリストフとクーラン侯爵の間で火花が散った。

 ミズハがどうこの場を乗り切るか思案していると意外な所から支援の手が伸ばされた。


「会談中失礼するわね。クリストフ殿下、クーラン侯爵もお久しぶりですね」


「女官長!?」


「あら、元女官長ですわクリストフ殿下。クーラン侯爵も(わたくし)と話してはいただけません」


 助っ人に現れたのは元女官長、ダリア・セイハルだった。

 ダリアはクーラン侯爵を連れその場を離れると、クリストフに目配せをした。


「助かった。僕はまだまだだな……」


「これから精進なされば良いのでは」


 クリストフの溜息にミズハは励ましの言葉を送った。

 ミズハにとって出来ない事の方が多い。

 ミズハ以外が見ればミズハのできる事は多いと答えるだろう。しかし、ミズハから見た世界はゲオルク達の様に多くのものを知っている者が大半だ。故にミズハの目標はそんな大人達になった。

 自分で比べてしまって落ち込む事あるが、何時もアンディーが励ましてくれる。知らない事があるなら学べばいいと。


「……そうだな」


 ミズハとクリストフがクルエラの元に戻って来ると、クルエラは笑って迎えてくれた。


「ミズハ、魔物の反乱に終結の目処が着いたそうよ」


「本当ですか!?」


「ええ、先程騎士が知らせに来たわ」


 クルエラの言葉にホッと胸をなでおろすミズハ。

 ミズハにして見ればゲオルク達が心配だったのだ。平気だと思う気持ちともしもを思う気持ちがぶつかり不安に思っていたのだ。


「ふふふ、貴女の様な娘ができて息子(ゲオルク)は幸せね」


「そ、そうでしょうか?」


 照れて顔を赤くしつつミズハは答える。


「クリストフ殿下、今日はミズハのエスコートをしていただいて宜しい?」


「僕でよければ」


「ではご挨拶に向かいましょう。安心なさって、私の知り合いだけですから。ヒルダ殿下も一緒にいかがですか?」


「私もですか? 宜しくお願いします」


 その後ミズハ達はクルエラとメリシュに連れられ、挨拶回りをした。

 クルエラの息子で現ダンマルス伯爵を始め、メリシュの息子のファルメル公爵など、国の中枢の者に繋ぎを取った。

 途中でヒルダは退場の時間になり、部屋に戻って行った。


 最後までミズハのエスコートをしていたクリストフは、最後に馬車乗り場までミズハを送って行った。


 ミズハが馬車でゲオルク邸に着くと、アリアナとダグが迎え入れてくれた。

 ゲオルクとエスタークは冒険者ギルドに泊まり込みだそうだ。

 アリアナがゲオルクからの伝言を教えてくれた。曰く明日からのはぐれた魔物の討伐に参加するように、体調を万全にして昼ごろから冒険者ギルド集合だと。

 朝から参加しなくていいのかと首を捻るミズハに、アリアナは貴女も今日は疲れたでしょうと言った。

 その言葉にミズハは温かい気持ちになった。






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