8,シノービ接待で失態(8~12)
テラッチのクエストは順調ッスね、達成条件の岡マリモ十匹はすぐに倒せたッス。
ついでに水場で食材調達とか、出っ歯モンスターの討伐してたッス。
テラッチは出っ歯をゴブリンとか呼んでたッスけど、あれそんな名前だったッスかね?
すぐに帰ってくる必要はないッスから、のんびりしてから帰るみたいッスね。
むーん、ベイスがビール飲みながらマンガ肉とやらを食べてるッス。なんかおいしそうッスねー。
「こっちでも何か食べましょうか」
「ぷ、プリンはできませんでしたーッス」
マンガ肉見てたらメニューがコタツに居ることに気が付かなかったッス。大失敗ッス。
「あはは、プリンのことは貸し一つで手を打ったでしょ。そんなに気にしないでいいわよ」
「さ、さすがメニューッス、広い心に甘えさせていただきますッス」
「さてー、何がいいかしらね。カレーライスは辛かったし、おすすめは何かある?」
こんなこともあろうかとッス。ぼや~っとしながら日夜調査していたッス。
「お子様ランチがおすすめッス、いろいろ入ってお得感もあるッス」
メニューのコタツにお子様ランチをお取り寄せッス!
「あら、小さなおかずがちょっとずついろいろあるのね。ハンバーグとエビフライとー、オムライスね。デザートに……プリンねぇ」
し、しまったーッス。お子様ランチにはお好みのデザートがついてくるッス。
ここでまさかのプリンを選んでしまったッス。ここはゼリーでしょう常識的に考えてッス。
「あ、あーしがゼリーのお子様ランチを頼むッス。交換っこするッス」
「あははは、いいわよ『普通の』プリンも食べたかったしねー」
「ぐ、グサリと刺さるッス」「あははは」
メニューと二人でテラッチのフィールドクエストを肴にグビッと飲んだり騒いだりッス。
「テラッチは甘々ッスね、自分の見ている物事が現実だと思えていない感じッス」
「ベイスも心配してたわね、あたしもこのままじゃまずいとは思っているわ」
「ベイスにきつく言ってもらえばいいッス」
「言葉だけじゃわからないでしょうね。どうしたら最善かしらねー」
「こんな感じのフィールドクエストとかを増やす、ってのはどうッスかねー」
「なるほどねー、雲上の孤島に居るだけじゃ現実感がなくなるばっかりかもしれない、それを外のセカイに出して意識改革しようってことね」
「そ、そうッス、意識改革ッス」
本当はフィールドクエスト楽しそうッスねー、っと思ったからとは決して言わないッス。意識改革意識改革ッス。
「あー、ちょうどベイスも注意しているわね」
「もっときつく言うべきッス」
「そろそろ帰還ね、行ってくるわ」
コタツで飲み会もお開きッスね、楽しかったッス。
またやりたいッスねー。今度は料理の選択を間違えないようにしないとッスね、これ重要ッス。
◇
プークスクスッス。魔法訓練を始めたテラッチはおもしろポイント満載の予感がするッス。
魔力の扱いにセンスを感じたッスが、おもしろのセンスだったっぽいッス、これは見る楽しみが増えたッスね。
あー、ベイスの指導法はうまいッスね、ちょっと感心したッス。
テラッチに理屈は駄目っぽいから、妖精さんに頼むように魔力の操作と魔法の行使をさせる、とは考えたッスね。ただの黒光り禿筋肉ではなかったッスね。
むむっ、ベイスもテラッチの、魔力の扱いのセンスに気が付いてたッスね。
周囲にある魔素を使って自分の魔力消費を節約して魔法を発動する、という高度な魔法行使術を教え始めたッス。これは難しいッスよー、少ない魔力を使って周囲の魔素と合わせて魔法を行使するッス。
ちゃんとできないと魔力の無駄になるだけッスし、できたとしても割合を間違えると、予想以上の魔法になってしまうッス。
『節約魔法』とか安易すぎる名前を付けてたッスけど、まあ無事に習得できればいいッスねー。
次の講座は身体強化魔法ッスか、盛りだくさんな講座内容ッスね。
目標はナニカを除去することッスから、どんどん強くするのはいいッスけど、テラッチはちゃんとついて来られるッスかね?
まあ一日何時間あるかわからないほど長いッスから、ちゃんと復習して落第しないように頑張って欲しいッスね。
◇
ほほぅ。さっき覚えた身体強化魔法を、ペーターのダンス講習の課題ダンスに使い始めたッス、テラッチやるッスね。
でも無駄がかなり多いッス、この分だと燃料切れで……。
あーやっぱり、魔力が尽きてパタリと倒れてしまったッス。さっき覚えていきなり実践は厳しかったッスね、頑張ったテラッチをちょっと褒めてあげたいと思ったッス。