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6,カラメルを絡める(7)


 プププッ、『魔眼が……うずく……』ぷーくすくすッス。

 テラッチは無事魔力操作ができるようになったッス。

 でも何か余計なことをしないと居られないのは、テラッチの仕様なのかもッスね。



  ◇



 毎日同じことしかしていないテラッチを見ていても、おもしろポイントがなくって飽きるッス。


「そうね、でも今は基礎を固める時だから仕方ないわよね」


 メニューもコタツでほんのり過ごしながら、クッキーをポリポリ食べてるッス。

 こういう平和で穏やかな日々は大事ッスけど、おもしろポイントがないのは、それはそれで刺激が足りないッス。


「そういえばさ、あの子の文化データを見てたらさ、おいしい物に掛ける情熱がすごい所だったって気が付いちゃったのよね」


「あー、このクッキーもおいしいッスね」


 メニューがお取り寄せしてくれたクッキーは、しっとりバターの風味が濃厚で上品な甘さ。シンプルなただのクッキーなのに、相当研究されて作られていることが窺えたッス。

 あーしが気に入ったのは、カレーライスッス! いろいろ有名なお店のカレーライスをお取り寄せしたッスけど、どこもオリジナルスパイスなるもので作られていて外れがないッス。

 その中でもお気に入りはチキンカレーのベリーホット、鳥肌が立つほどの辛さの中にうまみがぎゅっと詰まっていたッス。

 メニューにもお裾分けしたッスけど、辛いのは苦手と言われてしまってがっかりだったッス。


「と言うことで、ちょっと行ってくるわね」


 なにが『と言うこと』なのかわからなかったッスけど、メニューがパチンと転移で消えてしまったッス。

 あーしはカレーライスをお取り寄せして食べるッス。思い出したら急に食べたくなるってよくあることッスよね。


「おいぃー、刺激的な香りが漂ってるなぁ」


 唐突にベイスがやって来たッス。

 ベイスに合うサイズのコタツは作らないッスよ。


「何食ってるんだ、うまそうだな」


「カレーライスッスよ、テラッチの故郷の味ッス」


「なるほど、あいつんとこの文化ファイルから引き出したのか、ちょっとオレにも出してくれよ」


 暑苦しい黒光り禿筋肉の要求もあーしは素直に答えるッス。

 魅力的なレディーは誰の区別無く優しさを振りまけるッス。


「うめぇー、かれぇー、これいいな! カレーライスと言ったな、どこのデータから引き出した!」


「そこのあれのそれッス」「おー、ここのこれのこいつか! ありがとよ、これ中毒性有るな」


 黒光り禿筋肉を追い払うことができたッス。

 このコタツの魔力に気が付かせないよう、カレーライスを囮に見事しのいだッス。


 あのやたら場所を取るベイスがここに入り浸ったら、あーしのぼけ~っとぐだぐだ生活がままならないッスからね。



《シノービ、ちょっと来て下さい》


 むむっ、禿は禿を呼ぶッスかね。

 キリリ禿でおなじみのケンサンから呼び出しの連絡ッス。


《すぐ行くッス》


 本当はコタツから出たくないッスけど、お仕事なら仕方ないッス。

 できる女はオンとオフをきっちり切り替えるッス。



  ◇



「いや、助かりましたよ。拡散したナニカの影響を見に行くには、私一人じゃ手が足りませんでしたから」


「そういうときは諜報部隊の出番ッスから、遠慮無く言ってくれればいいッス」


「ありがとう。また調査が必要な時には声を掛けますので、お願いしますね」


「いつでもどうぞッス」


「さて、私はこれをまとめたらメニューに報告しないとですね」


「頑張るッスよ、ケンサンの研究に掛かってるッス」


 ケンサンのところで仕事を終えたのでそのまま戻ろうかと思ったッスが、久しぶりにコタツの魔力から逃れたので、テラッチをチラ見して行くことにしたッス。



 コッソリ隠れて監視するのは、あーしら諜報部隊の得意技ッス。

 気配を殺して真後ろまで近寄ってみたッスけど、テラッチは気が付かなかったッス。

 気配や周辺探知はまだ覚えてないッスね、仕方ないッス。

 剣筋のずれを矯正してあげたり、矢が的に当たるようにちょっと風を送ったり、見つからないように悪戯のようなことをして遊んだッスけど、全く気が付かなかったッス。

 あんまりやってるとベイスに叱られそうなので帰ることにしたッス



  ◇



 しっ、知ってるッスぅ~。これはお供え餅の上にミカンという構図ッス!


 コタツに帰ってきたら、あーしのコタツの上にメニューのコタツ、その上にプリンが置いてあったッス。

 コタツと言えばミカンというのは常識的に明らかッス。

 だがしかし! このミカンはプリンだったのだ! 


 これはきっとベイスがさっきのカレーライスのお礼に置いていった物に違いないッス。

 いや万が一違ったとしても! この構図はミカンと間違えてうっかり食べてしまう可能性を排除できまい! ッス。


「お……おいしぃッス。こ……この甘さは特別な砂糖! そしてすんごく濃厚な牛乳に、まろやかで、こゆい卵の味ッス。コクがあるッス、濃厚ッス、まろまろッス、とろける~ッス。

 うひゃ! カラメルを絡めるとさらに深いッス! からめるをからめるとかベイス位しか言わないようなことを言ってしまったッスけど、そんなことはどうでもいいッス。これはやばいッス。YABAIッスよーーーーーぉ」


「そうね、やばいわね。絶体絶命のピンチだと思うわよ」


 メニューが悲しそうな顔をして、あーしを見ていたッス。



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