5,幸せをお裾分け(6~7)
テラッチの戦闘訓練が始まったッス、チュートリアルというらしいッス。
練習方法を教えてもらおう、とか看板に書いてあったッスね。
担当は黒光り禿筋肉でおなじみのベイスッス。
ベイスの予想と違って講習内容は基礎編だったッスけど、やる気溢れて黒光り頭からオーラが出てるッス。
この隙にとペーターの小屋へあーしは急いだッス。
高速戦闘系トップのペーターは生産系の趣味を持っているッス、木工もその一つだったはずッス。メニュー専用コタツを作るくらいヨユーなはずッスからね。
「何で小屋の前で四六時中踊ってるッスか!」
クエストのお役目が終わったのだから小屋に居ると思ったら、外でずっと踊っていたッス……。
――♪ドゥンチャカドゥンチャ、タカタカターン
「楽しいからネー。シノービもやってみるといいヨ~~~♪」
「面倒ッス。それより頼みがあるッス。この猫用コタツをメニューのサイズに作り直して欲しいッス」
――♪ドゥンチャカドゥンチャ、タカタカターン
「お安いご用だヨー、すぐできるから待っててネ~~~♪」
いちいちじれったいッス……。台詞前の儀式は絶対なんッスかね?
――♪ドゥンチャカドゥンチャ、タカタカターン
「できたヨー。せっかくだから新しく作ったヨ~~~♪」
「さすが早いッス、高速戦闘部隊トップは伊達じゃないッスね! 出来も申し分ないッス。大感謝ッスよ」
――♪ドゥンチャカドゥンチャ、タカタカターン
「いつでも頼ってネ~~~♪」
ペーターはずっとあの感じでいくッスかね……。
メニュー専用のコタツはあーしのコタツの上に置いたッス。ちっちゃいコタツがとてもかわいらしいッス。
訓練島が浮上したッスね。
訓練島はベイスが作ってたもう一つの島ッス。訓練用にただ広いだけの頑丈な島ッスよ。
浮いてくる演出がしたいからって、わざわざ雲の中で作ってた甲斐があったッスね。テラッチも驚いてくれてるしベイスも満足ッスね。
訓練島での講習を見てるッスけど、テラッチを鍛えるのは大変そうッスね。
今まで戦闘とは無縁の場所に居たッスから当たり前ッスけど。まあ変な癖がない所は良かったのかもしれないッスね。
「ぐでーっとしながら何を食べているのかしら」
「びくぅっ」
油断してたッス。いつの間にかメニュー専用コタツにメニューが居たッス。
「み、ミカンッス。コタツに入ったらミカンを食べるのが作法らしいッス」
「そうなんだ頂くわ。なるほどおいしい所をお取り寄せしたのね」
危なかったッス。
専用コタツで点数アップを狙ったのに、だらっとしている所を見られて点数ダウンの危機だったッス、ミカンには感謝ッスね。
「さっきのコタツは大きかったけど、これはちょうどいいわね。わざわざ用意してくれたのね、ありがとう」
「あ、はい! ペーターに作ってもらったッス。この幸せ空間をメニューにもお裾分けしようと思ったッス」
「あはは、幸せ空間ね。確かにのんびり過ごせそうね」
「間違いないッス」
「あら? あの子のランニングが終るわね。また来るわ」
「いつでもどうぞッス」
テラッチに島のことを説明しに行ったッスね。
島は正式名『テラオ専用雲上の孤島』。ちなみに仮称は取れたッス。
テラッチ専用の場所で、時間の無駄がないようにテラッチの行動に合わせて時間、と言うか太陽の位置が動くッス。
だから一日は何時間になるのかわからないし、夜寝る時間とかそういう無駄な時間は飛ばされてすぐ朝になるッス。
まあ、あーしがコネコネしてペーターが仕上げた高性能ボディーを使っているから、食べることも寝ることも呼吸することだって必要ないッス。
テラッチは恵まれた環境で修行できる幸せ者ッス。
テラッチはなかなか素直でいい感じッスね。
ベイスの言うことをちゃんと聞いて、学ぼうという姿勢が感じられるッス。これなら上達も早いかもしれないッスね。
魔力の操作も、今まで魔素の無いセカイに居たとは思えないほど勘が良さそうッス。これなら大抵の魔法は身につけることができそうッスね。
なるほど、チュートリアルも頑張ったら報酬がもらえるッスね。
最初の看板に書いてなかったッスから、無いものと思っていたッスけど。報酬があればうれしいッスもんね。
それにしてもテラッチ専用腕時計とは考えたッスね。
スケジュール管理を専用腕時計がしてくれるから、毎回メニューが案内する必要もなくなるッス。
さらにさらにメニューが『技能習得講座一覧』のパンフレットと、ちゃぶ台に本棚を与えてたッス。
ちゃぶ台を選んだのは、きっとコタツに影響されたッスね。わかってるッスよ。
コッソリ確認したメニューが渡したパンフレットには、忍術なんて無かったッス。
あーしの出番はしばらくなさそうッスね、一安心ッス。
むむっ日用品クエストなるものが追加されたッス。テラッチも贅沢ッスねー。
成長の見込みがあるからそういう飴ももらえるッスよね。
報酬のためにしか動かないようじゃ駄目ッスけど、テラッチはそういう感じじゃなさそうだからちょっと応援したくなったッス。