4,最強の魔性アイテム(4~6)
テラッチはクエストの攻略法を見つけたッスね。
まあおもしろポイントは特になかったのでどうでもいいッスけど。
……またしばらくおもしろポイントはなさそうッスね。
あー、メニューが『異世界体験』させるって言ってたッスね。
きっとお気に入りのあの山頂ッスね。あーしも好きな場所ッスよ。
美しい景色は美しい女性の心をさらに美しく磨き上げるッス、ぴっかぴかに磨かれるッスよ。
ふむ。やっぱりしばらくおもしろポイントがなさそうッスから、テラッチの前世のセカイの文化ファイルを見直して見るッス。
スウェットに次ぐ、だら~っとするのに最適グッズを探すッスよ。
◇
フフーリ、見つけたッス。
探すのに熱中しすぎて、テラッチが『異世界』に初めて飛ばされた瞬間を見逃したのは惜しかったッス。けどそれ以上の収穫があったッス。
こいつは恐ろしい物ッス。
足を踏み入れたら抜け出させない魔力を持っているッス。抜けたとしてもまたすぐに戻りたくなると言う中毒性もあるッス。
あーしはまんまと罠にはまってしまったッス。
弱点だった天板がひんやり冷たいところも、クッションというオプションで全て解決したッス。
完璧な物が仕上がったッス。
魔性のアイテムその名は『コタツ』ッス!
最強の組み合わせは、畳の上にコタツという情報を得たあーしは早速お取り寄せしたッス。
さらに、コタツに入っている女子は、ハンテンなるホカホカウエアーを着ると魅力が三倍アップすると知り、スウェットにハンテンという最強のコーディネートを手に入れたッス。
でろ~んと過ごすための最強アイテムを手に入れたあーしは、だら~んとしながらテラッチの様子をチェックしてみたッス。
ちょうど東の空から魔素が昇ってくる所だったッス。
今テラッチが連れて行かれてるセカイには、テラッチの前世のセカイにはなかった魔素という物があるッス。
魔素は『異世界』になる惑星ができたばかりの頃にふらっとやって来て、雪だるまみたいな形にくっついたッス。だからこのセカイでは魔法が使えるようになったッス。
でもって、しばーらく丸かった魔素がだらーんと伸びてきたのが今の状況ッス。
で、そのにょろ~ん魔素は太陽に見つからないように、この星を盾に隠れるように回ってるッス。
だから日が暮れると東の空から魔素が昇ってくるッスね。
きらきらしていて綺麗なんッスよ。
あーあー、テラッチがまた面倒なことを起こしたッスね、素直に景色を眺めてればいいのに……。
メニューは『地球』って安直な名前が大っ嫌いなんスよね。
なんかトンデモな理屈の説明とかしてるッスけど、アレばっかりは触れてはいけない部分として納得するしかないッス。
テラッチの『異世界体験』は締めのファンタジー生物大集合で腰を抜かした位の、微妙なクスッ程度のおもしろポイントしか無かったッスね。
さて、新しいだら~り生活向上アイテムを探す重要なお仕事を再開ッス。
「シノービ! なんだかずいぶんいい物そろえたわね」
やばっ! メニューがあーしの部屋に来たッス。
こ、この時ばかりはコタツを出ないと……。
「ぐふぅ……」
「そんなに苦しむほど出たくないって、どれだけなのよ!」
「い、いえ。メニューのために専用コタツを今取り寄せますッスので少々お待ちをッス!」
「いいわよ、ちょっと様子を見に来ただけだから」
大至急でメニューに合う『コタツ』を見つけないといけないッス。
メニューは超絶美形なかわいい女の子ッス。
金髪ツインテールがふわんふわんしてるッス。白い肌にパールホワイトのふわひらドレスが似合ってるッス。背中に羽が生えてるッスけど、パタパタしないでも浮いてるッス。
そんなスゴイ存在のメニューッスけど、あーしのコタツにご招待するには問題が、大問題があるッス。
メニューはちっちゃいッス。
大きさで言うとリンゴ一個分ッス、あーしのコタツだと埋もれてしまうッス。
もちろんここに居るのはメニューの分体ッスから、本体は普通サイズッスよ。でも本体は滅多に動かないッス。分体をいっぱい出して仕事してるッス。
今調べている『テラッチの前世のセカイの文化ファイル』あー長くて面倒ッスね、『テラッチの文化ファイル』でいいッスね、でいうと『ファンネル』ッスかね?
本体の周りをピュインピュイン飛びながら、優しさビームを飛ばすッス。
……危ない危ない余計なことを想像していたら、圧力を感じたッス。集中するッス。
あーしはがんばったッス。テラッチの文化ファイルの隅から隅まで探したッス。普段の千倍速で動いたあーしはついに見つけたッス! これで勝つるッス。
「ネコが使っている写真ね」
「こ、コタツはネコまっしぐらの魅力ッス、だからパッケージにはネコがつきものッス」
「へー、ネコ用って書いてあるけど……。まあいいわ」
うっかりッス、まさかパッケージに入って出てくるとは……。
慌てすぎて見つけたイメージそのままでお取り寄せしてしまったッス。
メニューは気にしてない様子なので一安心ッスね。メニューと二人でせっせと組み立てるッス。
「なかなか過ごしやすいわね。シノービが出てこなくなるのもわかるわね」
「そうッス! コタツの魔力には抗えないッス」
「あはは、もうちょっとしたらシノービにもお仕事回ってくるから。そのときはシャキンとしてね」
「もちろんッス! お仕事モードのシノービにとって、コタツから抜け出すことなど造作もないことッス」
「あの子のクエスト完了しそうね。じゃまた来るわね」
「いつでもどうぞッス」
怒られるかと思ったッス、メニューは寛大で助かったッス。
猫用でもメニューにはかなり大きかったッスね……。これはペーターに頼んで専用を作ってもらい、メニューの心証を良くしておくべきッスね。
そうすればきっとデロダラ~ンとしてても怒られないッス。
できる女は策士ッス。