17,満足な結果と雑談会(23~24)
初めてまともな座学ができるッス。
ニューテラッチはビシィっと立っているッス。教えを受ける姿勢ができているッス。けど座学をする環境がここにはなかったッス。
床には落とし穴があるッスから机とかは置けないッス。その辺にテキトーに座ってもらったッス。
あーしも教師と生徒の距離を縮めるためにコタツを呼び出して座ったッス。
アットホームな雰囲気を演出ッス。
テラッチは周囲の気配を察知することはかなり上達したッスけど、自分の気配を把握している様子がないッス。
気配を小さくして隠密行動したり、大きくして威圧したりと、自由に気配をコントロールすることは大切なことッス。
周囲の気配を把握することはできたッスから、自分の気配を探ることもできるはずッス。清らかな心で探るように指示を出したッス。
むむ、いけそうッス。も、もう少しッス。それッスぅー!
テラッチは結構すぐに自分の気配を見つけられたッス。今度はそのコントロールを指示したッス。
プププーッ、気配を大きくするのが苦手で、小さくするのは簡単にできるとか、普通は逆ッスよ。
やっぱりテラッチはおもしろキャラッスねー。でも、前世が地味だったとうっかり言ってしまったのは失敗したッス。
あんな厳しい枷をはめられても立派に生きてきたッスからね。ちゃんと謝ったッス、悪いことをしたらちゃんと謝るッス。美しさは清らかな心からッス。
《シノービ、緊急クエストを入れるから今日の所はその辺で》
わかったッス、緊急なら仕方ないッス、勘弁しておいてやるッス。
テラッチには明日続きをやることを伝えて、お帰り願ったッス。
◇
コタツと一緒にあーしの落ち着きルームに戻ってきたッス。
ささっとスウェットに着替えたのは言うまでもないことッス。
今日は講習で頑張ったッス、自分へのご褒美に何をお取り寄せしようか迷っているッス。
「シノービすまんな、講習のことで一生懸命だったから、ここで緊急クエストを入れることは黙っていたんだ」
ベイスが現れて謝ってきたッス。
あーしも今日の講習のことで頭がいっぱいだったッスから、余計なことに煩わされないよう気を遣ってくれたッスね。感謝はしても怒ったりはしないッスよ。
「今度はうまくやれるッスかね? 前回の失敗はだいぶ堪えてたッスから」
「どうだろうな、ちゃんと気が付けばいいんだが」
ふむふむ、場所はiフィールドのドサイル村ッスか。
村に盗賊がやって来るから助けに行くクエストッスね。二日間も期限があるってことは何かあるッスね。
むむっ、メニューがレンタルアイテムにない肩掛け鞄を渡しているッス。鞄の中には優しさ溢れるアイテムが入っているッスね。
鞄を受け取ったテラッチはドサイル村付近へ送られていったッス。
「そういえば村人と交流するようなクエストは初めてッスね」
「そうね、守りながら戦うことの難しさ。その後ちゃんと交流できるかどうかって所かしらね」
メニューがいつの間にか専用コタツでのんびりしてたッス。
ベイスはコタツには入れないッス、でっかくて邪魔ッスからその辺に座ってるッス。
あーしの部屋は、三人でテラッチの様子を見ながら雑談会場になったッス。
長くなりそうなのでベイスにはちゃんと座布団を渡したッスよ。
うつくしレディーは気配りのできる人ッスからね。
「だな、ただ今回はそれだけじゃないってのがな。考えて行動できるかってことなんだよな」
なにやらこのクエストには、ベイスの企みが隠されているっぽいッス。
テラッチが村の入り口に着いて早々、盗賊集団が現れたッスね。
二十人ほどの盗賊が、テラッチが居るのと反対側の、村入口の奥に見える山の中から現れたッス。
毎日走り込みをしてるテラッチは、村人を置いてけぼりにして猛ダッシュで盗賊達に迫っているッス。
「ほほう、走りながら魔法発動したッスざるね」「だいぶ慣れてきてたからな」
テラッチは走りながら、真っ暗闇空間を作る『暗黒空間』の魔法を盗賊集団に向けて放ったッス。
集団をまとめて取り込むように、大きく発動された魔法が盗賊集団をパニックに陥らせたッス。
ただこの魔法は真っ暗空間を置くだけッスから、空間から出られれば逃げ出せちゃうッス。
テラッチは村人を襲いそうな盗賊を『拘束』の魔法で縛り上げて捕獲したッス。パニックになった盗賊達は、拘束された五人を残して逃げていったッス。
「ここまではうまくいったッスね。攻撃魔法で盗賊全員やっつけなかったのが気になる所ッスけど、ござる」
「……だな」「……そうね」
む、二人は今後の展開を知っているッスかね? なにやら含む所ありな雰囲気がびしばしッス。
ちゃんと周囲の見回りをして戻ってきたテラッチは、村人に熱烈感謝されたッス。お礼に村長の家での食事とお泊まりをゲットッス。
村長の家で夕ご飯を食べるテラッチ、あーし達もフライドポテトと生ビールで乾杯ッス。