16,演技の評価と危機察知能力(22~23)
テラッチの視覚と聴覚を遮断したら、案山子と模型君達に来てもらったッス。
気配玉は最初はゆっくりと少なめの数で飛ばしてもらうように指示しておいたッス。
案山子と模型君はテラッチの扱いに慣れているッスから、心配無用のお任せコースで大丈夫ッス。あとはメニューと今回の反省会ッス。
部屋の端っこにメニューがテーブルを用意してくれていたッス。
メニューには大感謝ッス、何から何まで全部用意してくれたッス。頭が上がらないッス、だからテーブルでぐで~っとするッス。
「真面目な態度で講習を受ければ私がご褒美あ・げ・ちゃ・う(はあと)の部分がずいぶん改変されたわね」
「えーあれッスかー、あればっかりは嘘でもイヤッスよー。なんか全身で拒否反応があったッス、ござる」
あの時ばかりは、これを読み上げてはいけないと危機察知能力が働いたッス。
あーしの危機感知能力はたいした物ッスよ! プリンの時は発動しなかったッスけど。
「あとさー、シノービは演技は……アレね」
「アレッスか?」
アレってなんなんッスかね? 最後の慈愛に満ちた表情は結構良かったと思うッスけど。
「『わかったぞよ』でギロリッっと睨み付け、『――信じてあげるわ』で眠そうになって、『――始めるわよ』で何か企んでそうな笑いだったわね」
「なーっ! 指示通りに演技したッスよ……ござるよ」
「う、うん努力は感じられたわ。ちょっとほほえましかっただけよ」
「ぐ、ぐぬぅ」
と、そこで巨大な気配がテラッチの背後に現れたッス。見事に避けたテラッチ。
「これが気配だ!」「ぶふぉっ」
またやって来たッス、いきなりすぎて吹き出したッス。
おや? テラッチ何か掴んだっぽいッス。これはベイスのお手柄かもしれないッス。
ちゃんとテラッチを元の位置に戻してベイスはテーブルに合流したッス。
「ベイス! 成功したわね」
「やっとですね。シノービも頑張ってたが、オレも協力したくなってな、お節介だったかもしれねぇが」
「そんなことないッスよ、ありがたいッス。あんなでっかいハンマー持って唐突に登場とか、ベイスにしかできないッス。あーしはできれば遠慮したいッスから、ござる」
「なんか感謝されてるんだか、おかしなキャラ扱いされてるんだかわかんねぇ言い方だな、オイ。ガハハハハ」
感謝してるッスよ、大感謝ッスよ。
テラッチにはきっかけが必要だったッスね。
ベイスのおかげでわかったッス。やっぱりベイスは教え方がうまいッスね。きっとベイスもあーしに、どう教えればテラッチが覚えるかを教えてくれたッスね。
新人教師として学ぶべき所はちゃんとちゃんと学んで、立派な新人美人女教師になるッスよ!
『(結構余裕出てきたかなー、上達してるよね)』
むむ、テラッチにヨユーが!
これはもう一段階試練のペースを上げる時ッスね。案山子と模型君達に他の物を投げていいと許可を出すッス。
――ガインッ!
め、メニューの看板の角攻撃が炸裂したッス。
物理防御貫通攻撃ッス、すごく痛そうッス、ベイスもハンマー投げようとしてやめたっぽい動きッス。みんなお調子者には容赦ないッスね。
テラッチはどんどん対応しているッスね。
成長する生徒を見るのは教師冥利に尽きるッス。こっちもどんどん試練の難易度を上げるッスよー。案山子アンド模型君達ー、や~っておしまいなさ~いッス!
――♪ピンポロポン。終了です、そのまま待機して下さい。
やりきったッスね。耐えきったッスね。よくやったッス。
昨日の不真面目が嘘のように頑張っていたテラッチはエライッス。
「無事試練達成ね、あの子が喜ぶ特別報酬でも用意しないといけないわね」
「飴と鞭ッスね、あーしが用意しないといけなかったッスね。何も考えてなかったッス」
「大丈夫よ、ちゃんと考えてあるから」
むむ! メニューのニヤリにイヤな予感が走ったッス。
あーしの危機察知能力はたいした物ッスよ! プリンの時はあれッスけど……。
とりあえずテラッチの視力と聴力を元に戻してあげたッス。ノリノリでいろいろ投げていた、案山子と模型君達を見つけて何か言ってるッスけど、そこはどうでもいいッス。
テラッチに今回の試練『チュートリアル』の合格をあげたッス。
――ピキーン。
危機察知能力が重大な何かを察知したッス!
メニューの看板が怪しいッス。
特別報酬の辺りに怪しい気配ッス!
なになに、『特別報酬:シノービの抱擁』ってなんなんッスかー!
バン! ボコォ。
あ、危なかったッス。
特別報酬の部分を抉り取ったッス。一安心ッス。
テラッチが喜ぶ報酬って、メニューはこんなことを考えていたッスね。危ない危ないッス。
美人女教師と生徒は節度を持った関係でないとダメッス。