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13,計画と殺気と自信喪失(19)

 テラッチが入ってきたッス。

 早速スマートな挨拶で尊敬のまなざしを受けるッス。


「あーしが斥候技能を教えるシノービッス、でござる。よろしくッス、ござる」


「うつくしかわいいぃー」


 即答で何か言われたッス。

 尊敬ではない視線でじっと見つめられているッス。

 ちょっとキモいッス、なんすかこの気持ち……、メッタメタのぎったぎたにしたくなるような……。


 ガゴン!


 メニューの看板の角攻撃炸裂ッス、なんかすっきりしたッス。

 テラッチの台詞、確かメニューの時は『ちかっ!』だったッスね。メニューご立腹ッスね、まぁ本気じゃなくて面白がって怒っているふりッスけどね。


 なるほどなるほど、テラッチは鼻の下が伸びてる状態と言うらしいッス。ちょっと観察したッスけど、だらしないキモフェイスってだけだったッス。

 しげしげと観察してたらメニューにせかされたッス。

 講師としての威厳を見せなければいけなかったッス、キリリと講師モードに入ったッスよ。


「――テラッチは斥候系技能の内『気配の察知』、『気配遮断』、『罠の知識』、『マッピング』ついでに『獲物の解体』を覚えたいって言う話は聞いてるッス、ござる。他になんか希望はあるッスか?ござるか」


「テラッチ……じゃあ僕はシノッチと「何言ってるッスか、■すッスよ」ごめんなさい」


 危ない危ない、殺気を飛ばしてしまったッス。

 テラッチはちゃんと話を聞いていないッス、不真面目ッス。ベイスの講習はちゃんとやっていたのに、あーしの講習はなめられてるッス。

 しょんぼりッス、でもくじけないッス。

 駄目な生徒ほどかわいいッス。

 すてきな女教師は生徒を見限らないッス。



 ふふん。テラッチの希望を聞いたうえで、予定に入れていた空間把握の講習をねじ込んだッス。

 やっぱりこの前のクエスト失敗を引き摺っているッスね。大丈夫ッスよ、あーしの講習を受ければ傾向と対策はばっちりッス。

 テラッチに語尾のことを聞かれたッスが、答えようとしたらすさまじい重圧プレッシャーを感じたッス。仕方ないのでアイデンティティーと言うことにしたッス。

 ちょっと屈辱ッス。限定極上プリンの罰は重すぎるッス。



 気を取り直して講習ッス。

 空間把握と気配察知、ついでに魔力感知の詰め込み講習。事前に準備していたからばっちりッスよ。

 さっそく準備していた落とし穴にテラッチを落としたッス。

 なかなかの落ちっぷりに大満足したッス。



 講習はテラッチの視力聴力を封印して、気配を覚えさせるスパルタ講習ッス。

 周囲から絶えずいろんな物を飛ばしてテラッチに当てて、危機感を煽るッス。

 見えない聞こえない状況になったら、必死になるはずッス。必死になればきっと覚えるはずッス。カンペキな計画ッス。


 聴力が封印されているので、専用腕時計に協力を頼んだッス。終わったら直接脳内にお知らせが届くはずッス。

 アフターケアも万全ッス。

 できる女は綿密な計画をさらりと立てるッス。


 始めようと思ったら協力者が現れたッス。

 ベイスの所の戦闘訓練用案山子三体に、身体強化魔法講習用に用意されている骨と筋肉模型君の計五体ッス。

 なんでもテラッチをしごく役目なら任せてくれと、立候補してくれたッス。ぴょんぴょん跳ねてやる気アピールしてるッス、テラッチは愛されてるッスね。


 早速始めたッスが、魔法はちゃんと感知できてるッスけど、気配は全くッス見込みがなさそうッス。

 空間把握もできてないッス、そういえばやりかたを教えていなかったッス。

 けどテラッチなら自分で気が付くと思ったッス、いや気が付いて欲しいッス。

 『頭使って手数を増やし甘えない』と方針を決めたテラッチッスから、全部教えられて物にするだけじゃダメッス。頭を使うッス! 甘えちゃ駄目ッス!



『(ハッ! この攻撃はきっと、シノービさんが一生懸命僕のために動き回って放っているに違いない。ということは、シノービさんへの愛があれば位置を探ることができるはず! やってみせるぞー)』


 ぐふぉ、テラッチあさっての方向に向かってるッス!

 馬鹿ッスか?阿呆ッスか? あーしの位置を探ってどうするッスか。全然ダメダメッス。

 これ以上続けてもテラッチは何も学べそうになさそうッス。ガックリッス。


――バリバリバリバリー


「あばばばばばばばー」


 テラッチを元の場所に戻したッス、ガックリッス、自信喪失ッス。

 さっさと終了してテラッチを返したッス。


 これはコタツでグダ~~ッとしないと直らないッス。



  ◇



 コタツでぐで~っとしていたらメニューがやって来たッス。

 ここは相談するシチュエーションッス。


「テラッチが全然やる気を出してくれないッス。ベイスの講習の時と全然違うッス、ござる」


「それなら任せておいて! すごくいい作戦を考えたのよ!」


 なんか、ぱぁーっと未来が開けたような気がしたッス。

 さすがメニューッス、あーしのこともちゃんと考えてくれていたッス。涙が出そうッス。


「ありがとうッス、メニューさすがッス、ござる」


「えーと作戦を伝えるわ! 明日の講習はあの子をいきなり落とし穴に落としてね。下に降りたらあの子に向き合って、あたしがカンペ出すからその通りに言えばそれだけで解決よ!」


「そんな簡単なことでなんとかなるッスか? ござるか?」


「もお、これしかないって位に絶対の自信を持って大丈夫よ! 任せておいて」


 良かったッス。あーしだけが講師失格で、テラッチにちゃんと教えてあげることができなくなったら悲しいッス。

 初講習は失敗だったッスがポジティブシンキングッス。明日こそはきちんと教えられるように頑張るッス。

 今から教材を用意するッス、熱血講師復活ッス!



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