つかいっぱしり少年
二話続き
少年はその日本人達に付いていく事にした。四人の日本人達だ。そこに少年は加わった。少年は持っていた味噌や醤油、調理道具から、食事当番に当てられた。
男子高校生二人に女子高生一人。誰かの妹の女子中学生一人。そういった構成だ。
この世界にはステータスというものがあるらしい。しかし、少年には見ることはかなわなかった。とにかく低い数値というのだけは理解していた。
そこで少年には食事以外にも、雑用をする事になっていた。少年を除く日本人達は皆、睡眠を必要としていた。しかし少年には必要が無い。十分こなせるのだ。
少年は無気力に作業をこなすだけである。
しかし、変化が起きていた。日本人達の中に、新たなメンバーが加わったのだ。女子大生だ。
少年は女子大生に色々教えた。
「年齢はタブーだよ。僕は帰るつもりなんて無いから気にしてないけどね。もう三十歳を越えてしまったよ」
「良ければ僕の魔法道具あげるよ。何かしら役にたつと思うよ。ピーキーで扱いにくいけどね」
「魔法の基礎はこうだよ。世界と同化させるんだ」
女子大生は打ち解けていた。
「ねえブチ。貴方は眠らないの? 食事にも手をつけていないわ」
ブチとは少年のあだ名だ。長淵啓介と言うのが本名なのである。
「聞いていない? 僕には食事も睡眠も必要ないんだ。もう何年も口にしていない」
気にかけてくれただけで、吐きそうな程に嬉しく感じた。今までの日本人達は、ステータスとやらが見えるのか、一切聞いてくることは無かった。食事を必要としていない者が食事を作るのも不満に感じていた。作るのが当たり前。見張りするのも当たり前。気にしないようにしていた。
それを今さらになって、少年は不満を抱えていた事に気が付いたのだ。
三話
「あんたが一人で生きていける訳がないじゃない」
「うん。君たちといるより、死ぬ方がましだと気が付いたんだ。じゃあね」
「待て! ここは魔の森の中心だぞ! 魔物が出るんだぞ!」
少年は呆気なく、日本人達と別れたのだった。
少年の役割であった荷物持ちも、皆が分散して少年の穴を埋めた。食事も当番にして、負担を少なくした。確かに少年という存在は不要であったのだ。
「重い。料理も美味しくない。休んでも疲れがとれない」
そう思っていた女子大生だが、口にすべきではないと、黙ってついていくのだった。