第二話
どんなことがあっても、やはり朝はやってくるもので。俊介もやはり起きなければいけない訳で。
今日は普通に学校のある日だった。
学校を休むのが嫌いな彼は不安を抱えながらも、支度をして家を出た。
昨日は暗かったし、顔もよく見えていなかっただろう。
足には結構自身もあるから、ついては来れなかっただろう。第一、あのとき黒い男は走るそぶりなんて全く見せなかった。
そんな風に不安を書き消そうとした。だが、不安はやはり消えなかった。
いつもより歩くスピードが速くなった。
でも変わったことは何もなく、学校にたどり着いた。
学校でも普通に過ごす。
だが、あの出来事は誰にも言わなかった。
彼は友達は多い方だが、深い関わりのある人はいない。広く浅くというタイプの人間だった。
そつなく部活をこなし、昨日と同じ薄暗い空になったころに帰る。
少し暗い空の中の帰り道は彼の恐怖心を煽った。
余計なことは考えないようにしようと頭で呟いた彼は、少し足を速める。
すると、後ろから足音が聞こえた。
足音なんていつもは気にしないが、昨日あの出来事せいか少し気にしてしまっていた。
足音はずっと彼の後ろをついてきている。止まれば足音も止まる。
違和感を感じ取った彼は走り出した。
足音も同じように早くなる。
道を曲がるとき少し後ろを振り返った時に彼は見てしまった。黒い男の姿を。
(殺される!)
それは間違いなく昨日の男だった。
このまま家に帰ってしまえば、自分の家を特定されてしまう。そうなったらますます危険だ。
誰か助けてくれそうな人を探したが、こういう時に限って人がいない。自分の運を恨みながらも、走り続けた。
角をまがった時、彼は誰かとぶつかった。
彼はしりもちをついた。
「大丈夫?ごめんね?」
と相手は手を差し伸べる。金髪のチャラそうな男だった。
人を見つけた俊介は思わず叫ぶように言った。
「お願いです!助けてください!人に、追われてるんです!」
恐怖で頭がうまく回らない彼にとってこれが精いっぱいだった。言葉がいろいろ足りてないから、変に思われるかもしれない。だったら今すぐたちあがって逃げた方がいいのではないだろうか。
だが金髪の男は尻もちをついたままで座っている彼の手をつかんで、たちあがらせた。それと同時に
「いいよ、ついてきて」
と言って彼の手を引いて走り出したのだ。
彼は驚いた。本当に助けてもらえるとは思っていなかったからだ。
知らない人でもいい。助けてもらえるだけで十分だった。
(でも、こいつがあの男の仲間だったら?)
そんなことがいきなり頭に浮かんだ。
だが手を振り払えない。こいつは普通に助けてくれるかもしれない。
淡い期待を胸に抱いて、彼は金髪の男に手をひかれるがまま、走り続けた。