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三題噺 第23話

作者: 水平斜面

三題噺 第23話

 お題 同人作家、同人誌即売会、三題噺


   ◇


三題噺のつくりかた


 三題噺という、話作りの形がある。

 元来は落語の形態の一つであったらしく、それなりのルールというものもあるのだが、まぁ、簡単に扱うならば、3つのお題──人、場所、物、の3つだ──を使って物語を作るという手法といえるだろう。私は、ライトノベルの文学少女シリーズでそれを知ったクチだ。文章書きの同人作家として、原稿用紙にして半ページから数ページ程度の練習を兼ねた短編制作に活用していて、先般の即売会では実際にいくつかの話を収めた冊子を頒布するに至った。アイデアのとっかかりを提示されている分、無から物語をひねり出すよりは幾分か楽であり、かつ、自由度に制限をかけた中で完結させねばならない難しさもあって、練習という観点で見ると使い勝手の良い手法といえるのではないかと思っている。

 三題噺においては、お題の作り方自体がひとつのポイントとなっていて、普通に連想が繋がるようなお題だと、さらっと捻りも何もなく話が作れてしまう。例えば、同人作家と同人誌即売会、それに三題噺なんてお題を設定してしまうと、極端な話、『同人作家が三題噺を作って同人誌即売会で頒布しました』なんて具合に一文に収まってしまう。もちろん、そうならないように、お題を上手いこと消化することこそが、三題噺の面白さでもあるのだが、それでもお題を作る時点で、そういった選択はしないようにしてはいる。変に概念が固定されてしまうと、話を広げるのも一苦労なのだ。

 そこで、私はお題の選定にはニュースサイトをよく使っている。ニュース一覧に並ぶ単語から適当に拾う感じだ。例えば、2013年8月18日夜のYahoo! Newsから選ぶとすると……、ヘビ使い、桜島、ヒマワリ、といった具合か。この3つのお題から、話をどうやって作り上げるかというのは、作家それぞれだとは思うが、私は単語からの連想を繋げる手法を取っている。実際にノートに適当なメモを取りながらだ。

 ヘビ遣いならば、ヘビ、インド、アラブ、ターバンのおっさん、壷、笛、見世物、絨毯、魔法の絨毯、etc……。

 桜島からは、火山、噴火、海に囲まれた山、大根、噴煙、火口……と、この辺りで、火山と噴煙を、壷から首をもたげるヘビに見立てる。

 ヒマワリからは、黄色、花畑、太陽、日の方向を向く……、向きを変える、ヘビの頭に繋げるか? なんて具合だ。

 適当に繋がりを作ったら、大筋をまとめたプロットを作り、肉付け、推敲、仕上げとなる。この場合だと、例えばこんな感じだ。


   ◆


三題噺 第23.5話

 お題 ヘビ使い、桜島、ヒマワリ


大舞台


 錦江湾に浮かぶ桜島が、山頂から噴煙を上げ始めて数日が経過した。奇妙なことに、噴煙は、朝は東に、昼は南に、そして日没頃には西向きにと、毎日、太陽を追うように棚引いた。また、当初予想されていたような市街地での降灰被害は観測されず、火山灰の多くは薩摩・大隈の両半島を越えて海へと降り注いでいた。さらに、桜島の北の空に浮かぶ巨大な積雲が、ほとんど位置を変えずに留まっている様子も観測され、気象庁は、この雲が積乱雲に発達する可能性を含めて、火山活動ともども警戒を怠らないよう警告を発していた。

 青い空をバックに大きく立ち昇る白雲と、細く流れる火山からの黒煙のツーショットを、様々な角度から撮影した写真がネット上に溢れかえり、やがてその雲の形がターバンを巻いて笛を吹く男に見えるなどといった見立てで動画サイトが盛り上がってきた頃、某巨大掲示板群のオカルト板に貼られた画像が、世界に衝撃をもたらした。

 その画像は、地方の零細コミュニティ紙のワンカット。地元で人気のパフォーマーの男の訃報。そこに掲載されていた往時の写真には、地域の名所のヒマワリ畑をバックに、水盤上の壷から覗かせたヘビの頭をヒマワリにならって太陽の方角へ躍らせる、ターバンを巻いた笛吹きのヘビ使いが写っていた。

 人々に驚きと楽しさを魅せ続けたいと語っていたという彼の亡くなった日付は、噴火の前夜──。

 観測を続ける気象庁のライブカメラに映る入道雲の顔が、豪快な笑顔を浮かべたように見えた。


   ◆


 どうだろう。繋がりのなさそうなお題の方が、出来上がる話も意外性が出てくるというものではないだろうか。もっとも、先に挙げたような、作家と即売会と三題噺、みたいなお題でも、上手いことやれば単純ではない話を作り出せたりもするのだろうけど……、生憎、私なんかはもうさっきの例で概念が固定されてしまって、どうにも話を広げられないね。

 ところで……、さっきから気になっていたんだが、私は一体、これをどこで喋っているんだろうか? 私自身、どうもOpenOfficeのWriter上の文字であるような気がしてならないんだが……。

 はは……、まさか、これ自体が三題噺で、しかも即売会で無料頒布されているんだったりしてね?



Fin.

もともと2013年9月の本の杜の無料頒布用に作ったもので、A4ペーパー1枚にちょうど収まるようになっていました。(当日は台風のため、持ち込みをお願いしていたサークル主さんご自身が、残念ながら参加できない状態だったので、別の機会に頒布して頂いたと伺っています。)

第23.5話が入れ子になっている分、紙面に上手く収まるように色々削った記憶があります。

こちらに投稿するにあたって、若干手直しを入れました。

「紙に印字して即売会で頒布する」という紙面の外側の出来事を、お題の消化に使っているので、お題消化の方法としては少しイレギュラーになってますね。

それにしても……、当日のYahoo! Newsに載ってたというヘビ使いって一体何の話題だったんだろう……。

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