オーレリアン、教師、デビュー
# 第十話 オーレリアン、教師、デビュー
オーレリアンが、プレ・エトワール、十人の、メンバーを、教える、姿は——
事務所棟の、大広間で、毎日、見られた。
「アンリ、もっと、低く、構えろ」
「レミ、笑顔、もっと、自然に」
「ジル、お前は、もっと、感情、表に、出せ」
オーレリアンの、指導は、的確だった。
二年間、ベルロワ・カーヴの、トップ・タレントとして、舞台に、立ってきた、経験が、彼の、教育に、活きていた。
——いや、待って。
私は、ある日、稽古場の、片隅から、オーレリアンを、見ていた。
——うちの、推し、教師まで、できるんだ。
——多才、すぎる。
——尊い、すぎる。
私は、心の中で、悶絶した。
そして——
ある夜、私が、自室に、戻ろうとした、時。
オーレリアンが、廊下で、私を、待っていた。
「ルリアージュ」
「うん」
「忙しいか」
「うん、ちょっと」
「……そうか」
オーレリアンの、紅い瞳が、ふと、伏せられた。
——あれ。
——なんか、寂しそう?
「……オーレリアン、何か、用?」
「いや、用は、ない」
「ふーん」
私は、両手を、後ろで、組んで——
彼の、前に、跳ねるように、立った。
「あのね」
「うん」
「私が、忙しい時、オーレリアンが、寂しがる、ね、それ、知ってた」
オーレリアンの、頬が、赤くなった。
「……」
「だから、毎晩、オーレリアンの、部屋、行く」
「……毎晩?」
「うん、毎晩」
オーレリアンの、紅い瞳が、私を、見つめた。
そして——
「……来い」
低く、囁いた。
——!
——!
——!
私の、心臓が、爆発した。
——尊い……っ!
——もう、本気で、もう、本気で、毎日、これ、と、生きていたい——っ!
その夜から——
私は、毎晩、オーレリアンの、部屋に、行って、彼と、二時間、過ごした。
歌の、稽古、新作の、相談、何気ない、話。
時々、彼は——
私の、頬に、優しく、触れた。
時々、私は——
彼の、肩に、頭を、預けた。
——少しずつ。
——少しずつ。
——私たちの、距離が、縮まっていく。
——焦らない。
——でも、確実に。
——そして、いつか——
——必ず、結ばれる。
私は、心の中で、誓った。
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