オーレリアンの心境
そんな、私の、婚約者騒動を——
オーレリアンは、ベルロワ・カーヴで、聞いていた。
ある夜——
私が、月一の、抜け出しで、グスタフの工房を、訪れた、時。
オーレリアンが、待っていた。
「リリア」
「うん」
「結婚の、話、聞いた」
「全部、断った、よ」
「分かっている」
オーレリアンは、私の前に、跪いた。
「なぜ、断った」
「……えっ?」
「お前が、王弟殿下と、結婚すれば、王室と、結びつく。一夫一妻法、もっと、早く、可決される。お前の、目的に、近づく」
「……うん」
「カラディオン王国の、王子と、結婚すれば、外交の、力で、エトワール王国の、保守派を、抑えられる」
「……うん」
「サンテール侯爵家の、フランソワと、結婚すれば、貴族院の、保守派の、若手の、心を、掴める」
「……うん」
「全部、お前の、目的に、有利、だ」
「……うん」
「なぜ、断った」
オーレリアンの、紅い瞳が、私を、見つめた。
——え。
——なんで、こんなに、追及してくるの。
——もしかして——
——もしかして——
「……オーレリアン、なんで、聞くの?」
オーレリアンは、答えなかった。
ただ、私を、見つめていた。
長い、長い、沈黙。
そして——
ぽつりと、呟いた。
「俺は、お前が、誰かと、結婚するのを、見たく、ない」
——!
——!
——!
——!
——!
——え!?
——え!?
——え!?
私の、心臓が、爆発した。
——オーレリアン、いま、なんて、言った!?
——なんて、言った!?
「……オーレリアン、それ、どういう、意味?」
「自分でも、分からない」
オーレリアンは、目を、伏せた。
「だが、俺の、心臓が、お前の、結婚の、噂を、聞くたびに、痛い」
——!
——心臓が、痛い、って、それ、もう、それ、もう、それは、もう——
——ロマンス、です——っ!
——すでに、です——っ!
私は、両手を、口に、当てて、悲鳴を、押し殺した。
——大丈夫、リリア。
——倒れるな、リリア。
——オーレリアンは、まだ、自分の、気持ち、整理、できてない。
——だから、私は、まだ、応えない。
——でも——
——絶対、忘れない、この、瞬間。
——絶対、絶対、いつか、あなたと、結ばれる。
「……オーレリアン」
私は、両手で、彼の、頬を、包んだ。
「私、今、結婚しないよ。誰とも」
「……」
「私が、結婚するの、もし、そういう日が、来るなら——」
「……」
「あなた、です」
オーレリアンの、紅い瞳が、見開かれた。
そして、彼は——
私を、強く、強く、抱きしめた。
「リリア」
「うん」
「俺は——」
「うん」
「お前を、待つ」
「うん」
「いつまでも」
——ああ。
——ああ。
——ああ。
私の、目から、涙が、止まらなかった。
——オーレリアン。
——絶対、必ず、私、あなたを、自由にする。
——絶対、必ず、私、あなたと、結ばれる。
——いつか。
——必ず。
その夜、私は、貴族院に、戻ることを、忘れて、オーレリアンの、胸の中で、眠った。
朝、シャルロットに、めちゃくちゃ、心配、されて、怒られた。
——でも、後悔は、なかった。
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