ヴァランシエンヌ公爵、決意
学園祭の、夜。
公演が、終わった、後——
ヴァランシエンヌ公爵が、私を、舞台袖に、呼んだ。
「リリア・ド・モンペリエ嬢」
「はい」
「決めた」
公爵は、深く、頷いた。
「貴方を、我が家の、養女として、迎えたい」
——!
——きた!
私の、心臓が、跳ねた。
「光栄でございます、公爵閣下」
「シャルロットも、貴方が、姉妹に、なる、ことを、強く、望んでいる」
「私も、シャルロットと、姉妹に、なれることを、何より、嬉しく、思います」
公爵は、ふっと、笑った。
「ただし、ひとつ、条件が、ある」
「何でしょう」
「貴方には、新しい、名前を、授ける」
「新しい、名前?」
「リリア、では、ない、名前。我が、ヴァランシエンヌ公爵家の、家紋に、ふさわしい、名前」
公爵は、青い目で、私を、見つめた。
「貴方の、最初の、名、リリアは——『百合』。
百合は、清純で、美しい、花だが、ヴァランシエンヌ公爵家には、別の、花が、あう」
「別の、花?」
「瑠璃」
——!
「瑠璃の色は、深く、美しい、青。我が、家紋の、宝石。そして、貴方の、瞳の、奥に、私は、瑠璃の、色を、見ている」
——え?
私は、自分の、瞳を、思い浮かべた。
栗色の瞳。
でも、確かに——
時々、奥に、青い、揺らめきが、ある、と、シャルロットも、言っていた。
「瑠璃 + リアの、面影 + 貴族の、語尾、ージュ」
公爵は、ゆっくりと、私の、新しい名を、宣言した。
「ルリアージュ」
——ルリアージュ。
——ヴァランシエンヌ公爵令嬢、ルリアージュ。
私は、深々と、頭を、下げた。
「ありがとうございます、お父様」
公爵は、ふっと、笑った。
「今夜から、貴方は、ルリアージュ・ド・ヴァランシエンヌ。エトワール王国、最高位の、公爵令嬢の、ひとり、だ」
——よし。
——身分上昇、第三段階、完了。
——リリア → リリア・ド・ベルロワ → リリア・ド・モンペリエ → ルリアージュ・ド・ヴァランシエンヌ。
——これで、私の、影響力は、王室と、ほぼ、並ぶ、レベルに、なる。
——次は——
——一夫多妻拒否、公式宣言。
——そして、コレットの、夜明け、本格的に、エトワール王国に、もたらす。
私は、心の中で、誓った。
その夜、貴族院の、中庭に、星が、きらめいていた。
エトワール——星の、王国。
その、星空の下で——
ルリアージュは、生まれた。
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