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始まりまで、あと一年。

あれから時も経ち、アレクサンドラ達は14歳へ。


原作が始まるまで後残り一年となった。

時間を経て、大人へとなり始める年齢で、アレクサンドラは未だ見ぬ未来を想像しながらも…美しく成長を遂げた。



「お嬢様、お召し物はこちらでよろしいですか?」



鏡の前に立つ私に向けてメイドが声をかけてくる。

白を土台とした柔らかなエメラルドグリーンのドレスを目に、うーんと私は声を漏らす。


いつもならそれでもいいんだけど、今日は特別な日だ。


そんな私を見たメイドは意図を察してか、今日はこちらの方がよろしかったですねといい別の色のドレスを見せてくる。自分の気持ちを汲んでくれる人達に囲まれるというのは幸せだなと感じつつ、私はそのドレスを着ることに決めた。



________________



今日はロイドのお祝いの日。

あの後功績を挙げ続けた彼は無事、次期魔塔主へと認定された。厳しい環境だろうと不安に思ってはいたが、驚くことに魔塔所属の魔道士達からも満場一致の認定だったようだ。彼は非常に優れた、優秀な人材だとハンコ版を押され…これからは後継者教育と移っていくらしい。


忙しくはあるもある程度の自由が効くようになった彼。

そんな彼を祝うべく……両親も公爵家で祝いの席を設けようと喜んで賛成してくれたのだ。



今日はあくまで公爵家のみでのお祝い。

これから時間も出来るし、他はまた今度挨拶に行こうとなった。ロイド自身私や私の周りを優先してくれるのは、正直嬉しい。


因みに他というのは、リリス達やアルフォンス殿下のことである。


何度か機会があり、改めてリリス達とも顔を合わせた。

彼女達は彼を受け入れ、ロイドも彼女達と仲良くしている。レティシアに至っては口喧嘩もする程に打ち解けた。



殿下に至っては…まだ王太子にはなっていないが彼はとても忙しく過ごしているが、祝いの話をすれば是非その内会いたいと言ってくれた。彼は現在私との婚約が流れたこともあり、様々なご令嬢からのアプローチの中仕事に勤しんでいる。


断ったと言うよりは、保留にされたというものだが。


ずっと首を縦に振らない私を見た国王陛下から一度呼び出しを受け、公女としての責務を問われたことがあった。とてもこれ以上は長引かせられないと。だがそれに異を唱えてくれたのがアルフォンスであった。



『彼女は現時点で国に貢献を果たしています。私の婚約者となり、将来の皇妃としての責務を全うする力は勿論ありますが、その立場がなくとも貴族としての責務を果たしています。それに……私は私の力で彼女に認められた上で婚約を結びたいですから、努力が実るのをお待ちください』



と。私含め陛下や皇后様は大変驚かれていたが、納得の上で保留としてくれた経緯である。こちらを想う行動に感謝しつつも、あれから彼は隠すことなくアプローチをしてくる為だいぶ身に染みて理解しているが…現時点では維持である。



そんな近況報告もそこそこに、私は庭園で待つロイドを迎えに行く。家族や使用人達は既に家内で待機しているが、私が準備している間は庭園で待つと言っていたから。



花が満ちた庭園へ足を踏み入れる。

そこにある東屋に人影を見つけ、私は彼の名を呼びながら足を進めた。




「ロイド、お待たせ。何を見ていたの?」


「……ああ、これを作ってた」


「作ってた?…まあ、素敵な花束ね」




長い髪を一つ纏めた彼は立ち上がり、手に持つそれを私に向ける。手に収まる花束は色とりどりの花たちだ。この庭園にあるものかと思ったが、どれもそうは見受けられないもので。一体どこからこんな花がと問いかけようとすると、彼は私の胸の前へそれを差し出す。


私よりも大きくなった彼はもう、子供らしさはあまりない。変わらずぶっきらぼうな所は健在だが、私を見下ろす彼はとても素敵な大人の男性のようだ。少しあどけなさを残す顔は柔らかく笑みを浮かべ、花束を受け取る私の手を包み込む。




「ただいま。似合うと思って、用意してた」


「ふふ、嬉しい。……おかえりなさい、ロイド」




眉を下げ柔らかな笑みを浮かべるロイドに、アレクサンドラはつられて笑う。花のような愛らしい彼女を見たロイドはそのままアレクサンドラを抱き締めた。


アレクサンドラは思わず固まる。

自分から飛びつくことはあれど、彼から抱きしめられるのは初めてだったからだ。


「え、何どうしたの。びっくりする。嬉しいけど驚きと喜びで感情が忙しない!どうしよう!」


「……全部声に出てるぞ」


「え!?ごめんなさいまたやっちゃった!!」




喜びをかみ締めつつ心の中で叫んだ言葉は、そのまま口から出ていたようで。アレクサンドラは頬を染めつつも……彼の温もりを確かめるように、そっとその背に手を回した。



ロイドが本当に帰ってきた。

これからは、今までよりもたくさん会える。

彼はちゃんと……ここにいる。




そんな温もりを感じるように確かめた二人は暫くして、みなが待つ邸宅内へと向かっていくのであった。

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