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いつも通りは、落ち着く。





「ロイド!おまたせ!」



庭園にあるガゼボ。いつもの場所へ辿り着けば、風に撫でられ柔らかく揺れる黒色の髪が目に入ってきた。ロイドの名を呼び手をあげれば、彼は私の声に振り返り立ち上がった後……暫く私と、その周りの状況を確認し、音が聞こえそうな程に眉間のシワを寄せた。


わあ、初めて見るレベルの嫌そうな顔。



思わず笑っていた顔が強ばる気がしたが、私はロイドの元へ駆け寄りいつもの様にその手を取る。他を遮るようにロイドの視界に入り込むと、その眉間からはシワが薄れた。




「待たせちゃってごめんね。ちょっとその、想定外の事が起きたというか……」


「想定外とはなんの事だろうね?」


「うっ……!はは、何でしょう」




ロイドにことの経緯を説明しようとしたが、どう説明するべきか悩んでしまう。そんな私の背後から声をかけてくる原因に声を漏らせば、ロイドは私からそちらへ視線を向ける。


暫く見つめた後、ロイドは軽く膝を折り礼をとった。




「……帝国の星、第一王子殿下にご挨拶申し上げます。家名はない故、ご無礼をお許しください」


「顔を上げてくれ。アレクサンドラ嬢から話は聞いているよ、君がロイドだね」


「高貴な帝国の星に名を覚えていただき、光栄に存じます」




スラスラと挨拶を述べるロイドを見た私は思わず両手で口元を隠す。家に訪れる内に、様々な人と顔を合わせる可能性もあるだろうと考慮した両親が私と一緒にマナーの勉強を勧めてくれはしたが、少ない回数の中でここまで出来てしまうのかと驚いたのだ。


丁寧でかつ賞賛に値するマナーだ。

何よりめちゃめちゃかっこいい。

アレクサンドラは溢れそうになる感情を抑えるため心の中でロイドを最大級に賞賛するが、殿下とロイドは何故かこちらに視線を向ける。

何だろう。こんなにかっこよく決まってるロイドに対し、私はなにかしてしまったのだろうか。



「アレクサンドラ、全部、声に出てる」


「え?……え!?何がどこまで!?」


「僕もちゃんと聞いていたよ。『めちゃめちゃかっこいい、ロイド本当に天才だわ、記録に残して歴史に残したいくらいの輝きを放ってる。どうしてカメラがないのかしら、フィルムに残したい!』って」


「わぁぁぁぁぁ!ごめんなさい!ごめんなさいいい!」





口元に手は置いていた筈なのに、本当に置いていただけで心の声はダダ漏れだったらしい。いつも通りの事だと言わんばかりに、若干呆れた様子で私を見るロイドと…それはそれは楽しそうな顔をする殿下に挟まれた私は、煙が出るのではないかという程に顔に熱を感じた。


余りの恥ずかしさに隠れる場所を探したい所存だが、あいにく隠れる場所など無いもので。私はロイドの背中に回り、服の裾を掴んで出来る限り存在を小さくする。





「おかしな事ばかりするね。彼を褒めたたえた事に対して恥ずかしがっているのに、彼の後ろに隠れるなんて」


「ロイドは全部受け止めてくれるので……」


「受け止めているつもりはないけど、気にしてないから良い」


「受け止めてくれてるじゃない!ありがとう!」


「はは、本当に仲が良いみたいだな」



そんな話をしつつ、私達はガゼボに入り腰を下ろす。私が座ったすぐ横に、当たり前のように座るロイドを見た殿下は…少し考える素振りを見せた後、私の隣へ座った。


目の前に誰もおらず、真隣に人がいる。

普通ならば有り得ない光景で、良く分からない状況だ。

気にしたところで挟まれた私は今更移動することも出来なかった為、そのまま殿下に声をかける。





「それで、ロイドには会えましたし目的は達成されましたよね?お忙しいでしょうしそろそろお時間も厳しいのでは?」


「そうだね。だが久しぶりに会えた友と、その友と話す時間くらいはあるだろう?二人の約束に僕も混ぜてよ」


「勿論私達は時間はありますが、お忙しい殿下のお時間を割くのは心が痛みますので…」


「心配してくれるんだ、嬉しいな。今日は少し遅くなると伝えてあるから問題ないよ?やるべき事も調整してきたからね」




ああ言えばこう言うというのはまさにこの事だ。

遠回しに言ってはいるが頼むから帰ってくれという、無礼極まりない言葉に対し殿下は理解した上で全てひっくり返してくる。こうしている間にロイドとの時間が減っているということを考えると、私は食い下がるのを辞め、諦めたようにロイドの方へ目を向けた。


ロイドも気まずいだろうと思って目を向けたが、彼は彼でいつもと変わらない様子だ。何なら既に改良に必要な道具を机に揃えてこちらを見ているくらいで。




「話が終わったなら始めるぞ」


「……ロイドって、いつでも安心安全だね」


「は?なんの話しだ」


「ううん、落ち着くなと思って」




この状況で通常運転をするロイドに謎の安心感を覚える。一人勝手に戦おうとしてしまっていたが、そもそもロイドは目の前の面白い事に対する興味が最優先だ。

そんなロイドを見て、殿下を帰すという考えを消した私は殿下も仲間に入れつつ…太陽光ライトの改良を始めた。




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