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予期せぬ遭遇



あの後太陽光ライトと名付けられたそれは、無事に特許を取得し公爵領にて実験的に使われるようになっていた。父は国王陛下への報告や、魔塔へも申請を行ってくれたらしく量産するのはそう時間もかからなかった為か、公爵領の夜は明るい。



「わぁ…!こうやって並んでると、凄く明るいね」




私達は街へとやって来た。この世界に来て初めてのお出かけである。護衛の人達や侍女のルネを連れ昼頃に家を出て、日が沈み始める夜の街を見渡す。


小箱のような家庭用のライトを家へしまう人達を見る。

当初は半信半疑だったらしいが使ってみた結果、現状受け入れてくれているように見受けられる。外にも外灯として柱を設置している為、道が明るく皆の表情も良く見えた。




「…こうして見ると、夜の街も綺麗だな」


「そうだね。もっと暗くなったら、もっと綺麗に見えるはずだよ!」




隣にいるロイドは、最近思ったことを口に出すことが増えた。同じ景色を綺麗だと思えるのはやはり嬉しいと、アレクサンドラはニコニコ笑う。完全に日が落ちる前に屋敷へ戻らなければと、帰りの支度をしながら馬車を待っていた。



「……アレクサンドラ嬢?」





ふと、自分の名前が耳に入る。隣にいるロイドの声ではないことをすぐに理解した私は、聞こえてきた方へと視線を向けた。そこにいたのは、金色の髪をした同年代の少年だった。


白に金の装飾が施された綺麗な服を着ている少年は私を認識した後、ニコリと綺麗な笑みを浮かべ近づいてくる。周りの人から見るに、私よりも高貴な人なのだと理解するが確証が持てない。ルネに小声で確認をすれば、理解したかのように小さく説明をされた為…私はドレスの裾を持ち、カーテシーを見せた。




「帝国の星、第一王子殿下にご挨拶申し上げます」




そう、目の前の少年の正体だ。

記憶がない私にルネは簡単に説明をしてくれた為、間をあけず礼をすることが出来安堵した。だが今後このような機会は増えるだろうし、交友関係について改めてしっかり学ぼうと強く思う。

そして…こんな場所で出会うとは思ってもいなかったが、彼は物語において主要メンバーの一人。第一王子殿下、アルフォンス・デイ・トゥスルト。将来の皇太子だった。

綺麗な金色の髪に海のような淡い青色の瞳。同年代であるということは知っているが、既に将来が想像できるほどの出で立ちだった。



第一印象として完璧な挨拶が出来たと満足をする私だったが、私の挨拶を聞いた第一王子殿下は一瞬表情が変わる。だが何事も無かったかのように再度笑みを浮かべ、私の前へやってきた。




「久しぶりだね。怪我をしたと聞いたが、その後は変わりないですか」


「お久しぶりでございます。だいぶ落ち着き、この様に街へ降りられるようになりました。御配慮頂きありがとうございます」


「…そう。それなら良かった」




殿下は笑顔のまま私を見る。だが、どこか違和感を感じたように薄く開かれた目は私を観察するように見つめていた。挨拶や返しとしては間違っていないはずだが、おかしい所があったのだろうかと思い首を傾げると、殿下は同じように首を傾げながら笑う。

彼との関係性は現時点でどのようなものなのかを私は知らないため、緊張で体が強ばるように思えた。殿下は暫く私を見つめたあと、ふむと声を漏らす。



「アレクサンドラ嬢。暫く間が空いたが今度お茶でもどうですか。君が好きな茶葉が手に入ってね」


「まあ、嬉しいです。殿下のご都合が着くタイミングで是非」


「なら明日はどうだ」


「明日ですか?」




まさかの誘いである。

そもそもお茶を共にした記憶がないが当たり障りなく回答をした。それに対しあまりにも早すぎるスケジュールに、思わず目をパチリと開けてしまう。明日は特に予定はなかったはずだけど、出来ればロイドと外灯の改良を進めたいと思っていた為少し考える。


私は暫く考えた後、後ろにいたロイドの方へ目をやる。

ロイドはこちらを見ていたようですぐに目が合い、何も言ってないのにこくりと頷いた。意図が伝わっているかは分からないが、後で説明すればいいだろう。




「畏まりました。場所はいかが致しましょう」


「…では明日、僕が公爵家へ伺おう。」





そう言ってニコリと笑った殿下は私に背を向ける。

遠ざかる背を見つめた私は即座に皆の方へ振り返るが、全員青い顔をしながら空を仰いでいる。理由は単純で、明日突如殿下が来訪するという現実に頭を抱えているのであろう。


準備があるもんね、きっと。



私は申し訳なさを表し乾いた笑いを漏らす。ひとまず…家に帰るとしよう。ブツブツとやる事をまとめる為に呟いているルネを尻目に、私はロイドの手を取り迎えに来た馬車へと乗り込んだ。


遠くでその光景を見ていた殿下は、ふーんと声を漏らす。




「……新手の遊びか?」




第一王子殿下、基アルフォンスは呟く。

自分が知っているアレクサンドラとは、何処か違う雰囲気をしていた。そしてその後ろに立つ同世代らしき少年は、一体誰なのか。記憶にない少年と仲が良さげに手を握る彼女は、自分が知っている少女なのかと…疑念を抱く。




明日が楽しみだと、アルフォンスは考えながらも馬車へ乗り…公爵領を後にした。

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