行列のはなし
人が並んでいると何だか気になっちゃうのは、人の習性なのかな?
その列に並ばなくても、その先に何があるのか確認しちゃう。
目的があって並ぶ時はそれを手に入れられて満足だけど、流行や噂で並ぶ場合は結構ギャンブル感がある気がする。
それでも、行列ってなんだか魅力。
その日は話題のかき氷屋さんに並んでいた。
炎天下の中、日傘はあれど、どぎつく暑い。
「後、どれくらいで入れるかな。」
「そうねぇ。1時間くらいで入れるんじゃない?」
「お母さんってさ、並ぶの苦にならないタイプだよね。」
「そうねぇ。そんなに苦じゃないわね。」
「なんで?」
「なんで? って、性格? というか、慣れ? あんただって、好きなものを手に入れるためなら、何時間だって並ぶでしょ?」
「そりゃあ、まあ。」
「ただそれだけよ。真夏の某所で、夜○○嬢○○帝国に延々2時間半並んでたり、真冬の雨降りのあの日に某所で開場まで3時間並んでたりしたら、悟りも開けるわ。って、それは大げさだけど。」
「途中の意味が分からないけど、まあ、好きなものの為に並ぶのなら耐えられるかな。」
「ちなみに、お母さんがその夏の行列と冬の行列に並んでいる時代には、スマホはありませんでした。」
「え?」
「だから、正直言って、今、2時間半並ぶのと、昔、2時間半並ぶのでは大変さが違います。今は待っている間にスマホでゲームもできるし小説も漫画も読める。楽勝♪」
「スマホなしって……苦行……。どうやって時間潰すの?ぼんやりしてるだけも辛い。」
「某所に並んでいる時の場合だけど、連れがいれば話をして過ごすのだけど、それでも長時間過ぎて話題がなくなってくるの。そうすると、全く知らない後ろに並んでる人とかと話をしだすの。その場にいる人だから、同じものが好きな人な訳で、だいたい話が合うのよね。それでも話題が尽きるから、それ以降は、まだですかねぇ、もう少しですねぇ、とか言いながら時間を潰すのよ。それでね、なんか友情みたいなものが芽生えて、住所交換とかしちゃったりして。」
「え、それって危なくないの?」
「そのころは普通に教え合ってたよ。緩い時代だったわね。で、住所交換して、手紙書きます!とか言って、」
「へえ、書いたの?」
「一度も書かないし、来たこともないわね。」