「悪魔探偵が事件を調査する話」
私は新暦年エクリプスで悪魔探偵をしているものよ。
悪魔探偵といえば、依頼人の絶対的な味方であるハードボイルドな存在よ。
だから、朝はハードボイルドにコーヒーで決めるの。
「……苦い」
「んふふ、毎朝飲んでるのにブラックコーヒーに慣れないね」
「だって、苦いんだもの」
「……無理せずに砂糖とミルクをいれたらいい」
「いやよ! 探偵といえばブラックよ」
「あ、あなた様がいうならあたしも飲みます……!」
「え、いや、別にあなたも付き合わなくてもいいのよ……?」
2035年、人間社会に悪魔たちの住む魔界の門が開き、双方の世界で争いが起きてから早くも50年。
悪魔と人類は「大調和協定」を結び悪魔も社会に溶け込んでるの。
そして、悪魔と契約して使役する悪魔召喚士――そして、それらを使って探偵をしている私は悪魔探偵なの。
悪魔にかかわる事件の依頼を受けて調査する仕事なの。
昔、私が悪魔に襲われているときを師匠に助けられて、師匠のもとで修業をして悪魔探偵を行っているの。
師匠は白いスーツと帽子の似合うハードボイルな人なの。
私もあんな人を目指して悪魔探偵として腕を磨かないと……。
まずは、ブラックコーヒーを飲めるようになるのよ!
「ところでー、依頼人来てるみたいよ」
私は3人の悪魔と契約していて、それぞれ暦にちなんだ『皐月』『睦月』『文月』の名前で縛ってるわ。
正直、3人とも汎用性はないけど、特化した能力の持ち主で、この事務所を支える大切な仲間たちなの。
「なっ、早く通しなさい!」
「んふふ、まずいコーヒーに気を取られてる方が悪いのよ」
「もう……! いじわるね」
「悪魔ですもの」
睦月がべーっと舌をだした。
†
――今回の依頼は「家で起きる怪現象を止めて」とのこと。
依頼者一家が住む家で夜な夜な物音や影が現れ、家族全員が眠れずに体調を崩してしまっようなの。
依頼人はミスの連発で解雇寸前、妻も心労で倒れ、娘は成績が落ちて、学校に行けなくなり、妻ともども実家に帰ってしまったみたい。
両界の事件を追う調和監視局が調べたけど、事件性はないといわれて、困り果てて師匠の下をたずねたら、私を紹介してくれたみたいなの。
これは師匠からの信頼に違いない。
依頼人のためにも必ず解決して見せるわ。
†
――――事件性はないっていたじゃないのー!!
皐月の能力で調べてみたところ、地脈にわずかな歪みがあったの。
これは皐月の特異能力じゃないとわからない程度の歪みだわ。
それが原因だったから、地脈の歪みを鎮める護符を渡して様子見をしてたんだけど、やっぱり怪奇現象が収まらないから歪みの原因をたどることにしたのよね。
そしたら、そしたら……!
「ふしゅる、ふしゅる」
「てけりり、てけりりり……」
どうもカルト教団が儀式を行っていたようで、明らかにやばげな悪魔たちが召喚されてるじゃない!?
睦月の能力で魔力の歪みを追っていった倉庫では冒頭的にねじれ曲がった肉塊……目とか鼻とかが不規則についた肉がのたうち回ってる……!
「……これ、手に負える規模を超えてません?」
「んふふ、まだ、見つかってないから今なら、逃げられるよ?」
「命令を」
ううう、どうすればいいの!?
調和監視局に連絡しても間に合わないわ。
今にも膨らんでるのたうつ肉はこのまま膨らんでここら一帯を飲み込んじゃいそう。
かといって、ここで踏み出しても勝てるかどうかわからないわ……。
どうしよう……、どうしよう!
落ち着いて、私。こういうときは師匠の言葉を思い出すの。
師匠は言っていたわ――『迷ったときは後悔してもいいと思えるをしろ』って。
そうね、たとえ勝てなくても、ここで逃げたら絶対に後悔するわ。
それに悪魔探偵は依頼者の味方。この儀式を止めないと依頼者にまで被害が出るじゃない。
ならばやることは一つ。
「そこのあなたたち、その儀式をやめなさい!」
内心、怖くて仕方がないけど、それでも自分の心に嘘はつけないわ。
「いくわよ、皐月、睦月、文月!」
「あなた様がいくのなら……!」
「んふふ、そう来ると思ってたわ」
「……あなたの命令ならやりましょう」
のたうつ肉塊を止めるため、私たちはカルト教団へと相対した。




