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第19話 リリア

 お母さんは一体どんな人だったのだろう。

 私にはほとんどお母さんと過ごした記憶がない。


 お父さんに聞けばいいんだろうけど、無邪気に「お母さんってどんな人だったの?」と聞ける雰囲気じゃない。

 お墓の前でも、サディさんの前でもあんなにツラそうな顔をしていた。娘の前なら明るく振る舞ってくれるだろうけど、それはそれで私がツラい。

 まだお母さんの話を笑ってできるほど、時は経っていないんだ。


 お母さんのことを知ってるのは、サディさんとマドレーヌさん。2人に話を聞いてみよう。


「リリアさんのこと?」


 お父さんを迎えに行った訓練場で、タイミングよく1人でいたサディさんを捕まえた。


「うん、お母さんのこともっと教えてほしいな~って」

「いいよ、何がいいかな。アルとの馴れ初めはこの前話したし……」


 お母さんは1人で旅してたところをお父さんたちのパーティーに入れてもらった、って話だったけど。


「お母さんは、どうして1人で旅をしてたの?」

「リリアさんはね、結構すごい魔法使い一族のお嬢さまだったんだよ。箱入り娘って感じかな」


 お母さんはリアルに貴族の娘だったのかも。

 でも、だとしたら余計になんで1人旅なんて。


「外の世界を見てみたいって、家出同然で飛び出してきたんだって。途中でリリアさんを連れ戻そうとする追っ手まで来てさ」


 追っ手……なんだかお姫様みたい。


「そんなお嬢さまだったら家に戻った方がいいんじゃないかって僕もアルも言ったんだけど、リリアさんが『どうしても連れて行ってほしい』って聞かなくてね。外の広い世界を見るのが夢だったからって。それで追っ手を撒いて旅を続けたんだけど」

「大変だったんだね」

「意外と楽しかったけどね。お嬢さまを守って魔法使いたちと鬼ごっこ。なかなかスリリングだったよ」


 お父さんもサディさんも強いんだもんね。結構楽しんじゃってたのかもしれない。


「さすがに妊娠してからは、パーティーを抜けて王都で待っててもらうことになったんだけどね。そのとき、魔法を教えてほしいって頼んだんだ」

「サディさんも、魔法使いになりたかったの?」

「僕程度の魔力じゃ魔法使いにはなれないよ。でも少しでもリリアさんの代わりになって、パーティーのサポートをしたかったんだ。剣士の代わりはいても、回復系の魔法使えるやつは他にいなかったからね」

「お父さんのために……じゃなくて?」


 そう聞くと、サディさんは意外そうな顔をして言葉を詰まらせた。でも観念したように笑って


「アリシアちゃんには敵わないな~。そうだよ。アルのため、だね」


 サディさん……健気!

 でもきっと、お父さんは気づいてないんだろうな。きっと。


「魔力のコントロールができるようになったおかげで、魔導の剣も使えるようになったのはラッキーだったよ」

「お母さんも魔導の剣を使えたの?」

「うん、魔法に関することなら一通りできたみたいだから。でも『魔導の剣は私よりサディくんの方がセンスあるね』なんて言ってくれて、嬉しかったなぁ」


 サディさんが懐かしそうに目を細めた。

 大変なことだっていっぱいあったはずだけど、楽しい旅だったんだろうな。

 それはきっとお母さんにとっても、お父さんにとっても同じはず。


「……サディさん。お母さんが死んじゃったのは、お父さんのせいじゃないよね」


 サディさんが息を飲んだ。でもすぐに真剣な顔で、大きくうなずく。


「もちろん。誰のせいでもないよ」


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