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第17話 馴れ初め

 お母さんのために大きなピンクのユリを3本、その周りに淡い紫のキキョウ、白いカスミソウが散りばめられたキレイなフラワーアレンジメントを選んだ。

 華やかだけど上品なお花。お母さんもお父さんも、喜んでくれるといいな。


 まだ部屋に戻るのは早いから、ホテルの中庭にある公園に行った。

 ベンチに座って、お花を膝の上に乗せる。良い香り。


「アリシアちゃん、いちごミルクでよかったよね?」

「うん、ありがとう。サディさん」


 買って来てもらったジュースを受け取ると、サディさんが私の横に座った。


「ステキなお土産が見つかってよかったね。お母さん、きっと喜んでくれるよ」


 サディさんが目を細めて、私の膝にあるユリを見つめた。


「サディさんとお父さんは、お母さんとどうして知り合ったの?」

「リリアさんは、僕とアルの最初の仲間なんだ」


 え!? なにそれ、初耳なんですけど。


「旅の道中では、よく依頼を受けてモンスター退治をしてたんだ。そしたら突然、『私を仲間に入れてください!』ってリリアさんが直談判してきてさ」

「お母さんも旅をしてたの?」

「うん、でもいくら魔法使いでも女の子1人旅なんて危険でしょ。男の騎士だってバディを組むくらいなんだから。だから仲間を探してたみたいなんだよね」


 ってことは、お母さんも一緒に魔王討伐に行ったってこと?

 勝手におしとやかでおっとりしたイメージだったけど、お母さんもバリバリ強かったのかな。

 そういえばユリの花の凛とした雰囲気って、美しさの中に強さも秘めてる気がする。


「それで、お母さんを仲間に入れてあげたの?」

「僕らとしても騎士だけじゃ心許ないから、回復とかができる魔法使いを探してたんだ。そうじゃなくても、アルは絶対仲間にすると思ったけどね」

「どうして?」

「リリアさんを見た瞬間、すっごいわかりやすく一目惚れしてたんだよ。もうポーッとしちゃってさ」


 サディさんがくつくつと笑う。

 お父さんとお母さん、そんな出会いだったんだ。


「けど、仲間になった後もアルはなかなかリリアさんと話せなくてね。見かねた僕が先にリリアさんと仲良くなって、2人の仲を取り持ってあげたってわけ」


 サディさんが2人の仲を……?

 そのころ、サディさんはまだお父さんのこと好きじゃなかったのかな。


「アルはずっとリリアさんに夢中で、僕と2人でいるときもずっとリリアさんの話してた。リリアさんもアルのことを好きになるのに、そんなに時間は掛からなかったと思うよ。僕に散々アルのこと聞いてきたからね」

「2人は両思いだったんだね」

「でもどっちも奥手でさ。どう見ても両思いなのに全然気持ちを伝えないわけ。延々じれったい素振りを見せつけられるこっちの身にもなってほしいよ」


 そう苦笑するサディさんの横顔は、なんとなく寂しそうに見えた。

 やっぱりその頃から、サディさんはお父さんを好きだったのかもしれない。

 でもそうだとしたら、自分の気持ちを押し殺してお父さんとお母さんの仲を取り持って、甘酸っぱい2人を見てたってこと!?

 悲しい! 悲恋すぎるよ! お父さん鈍感!


 でも、お父さんとお母さんが結婚しなかったら私は生まれてないわけで。

 ……複雑。


「サディさんは、お父さんがお母さんのことばっかりで寂しくなかったの?」

「まっさかー!」


 笑い飛ばされた。まあ、そうだよね。

 と、スッとサディさんの顔から笑顔が消える。


「……って言いたいところだけど、少しはね。これ、アルには内緒だよ」


 サディさんが唇に人差し指を当てた。

 この反応、やっぱり……!


「サディさんはお父さんのこと……好き、だったの?」


 思い切って直球勝負に出ると、サディさんが目を丸くした。

 でもすぐにふっと笑って


「かもね」


 好きなの!? 好きってことでいいの!?


「お、お父さんも、サディさんのこと好きだと思う!」

「どうかな~? 今はアリシアちゃんが1番だと思うよ」


 ああ違う! そういうんじゃなくて!


「そろそろ戻ろっか。アルが寂しがってるだろうからね」


 サディさんが立ち上がった。

 もう少しハッキリしたこと聞き出したかったけど、今日のところはこれで引き下がろう。


 ふと、サディさんが独り言のようにぽつりとつぶやいた。


「いくら生涯のバディでも、好きでもなかったらこんなに一緒にいられないけどね」


 ちょ……ッ!

 最後にとんでもない爆弾落とされたんですけど!?



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