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第16話 お母さんの花

 ベッドに戻ったけど、結局ロクに眠れなかった。


 お父さんとサディさんがBL関係? そんな腐女子の夢みたいなことある?

 でも、あるんだからしょうがない。


 だけどあの様子だと、私に隠れて付き合ってるってことはなさそう。

 たぶんまだお互いの気持ちに気づいてないんだ。お父さんなんて朝になったらキレイさっぱり忘れてそうだし。


 本当に両思いなら(絶対そうであってほしいけど)、私が2人の仲を取り持たなきゃ!

 腐女子、愛のキューピットになります!



 翌日。

 案の定お父さんは二日酔いでベッドから起き上がれなかった。


「悪いアリシア……今日はお父さん寝てるから……サディと一緒に遊んできなさい……」


 ベッドに突っ伏して、ヘロヘロのお父さんが呻いてる。

 サディさんがベッドサイドに水差しとグラスを置いた。


「だから飲み過ぎるなって言ったのに。アリシアちゃん、どうする?」

「今日はホテルでのんびりしたいな。私も昨日あんまり眠れなかったの」


 誰かさんたちのせいでね。


 お父さんが青い顔をしながらうなずく。


「アリシアは繊細だからな。枕が変わると眠れないんだろう。俺と同じで」

「酔っ払いと一緒にするなよ」


 ということで、今日は旅行の中休み。ホテルでまったり過ごすことになった。

 サディさんとゆっくり朝食を食べて、その後はカードやおもちゃで遊んでもらった。

 昼食はホテルのレストランに行って、お子様ランチを食べた。ホットケーキがクマの顔になっていてかわいい。


「おいしい? アリシアちゃん」

「うん! おいしい!」

「よかった。いっぱい食べな」


 こういうの、親子の休日って感じがしていいよね。

 ……本当のお父さんは二日酔いで寝てるけど。


「午後はお土産屋さん見に行こうか。ホテルの中にいくつかあったから」

「うん、マドレーヌさんにお土産買ってくるねって約束したの」


 食事を済ませ、サディさんと一緒にホテルのショッピングモールに行く。

 このホテルはホテルというより、ひとつの街だ。施設内にお店はもちろん、プールや公園、映画館まである。お金持ちが別荘代わりに長期滞在することも多いらしい。

 こんな大富豪の世界、私には縁がないと思ってた。アリシア、幸せ者め。


 お土産屋さんをいくつかまわり、マドレーヌさんにはレースのハンカチを選んだ。

 白地に黄色い星の刺繍が細かく入っている。星は魔法使いの象徴。サウザンリーフらしいお土産だ。


「アリシアちゃん、お母さんにも何か買って行ったら?」

「お母さんに?」

「今度お墓参り行くときに、持って行ってあげたら喜ぶよ」


 そういえば、夢の中の記憶を辿るとそろそろお母さんの命日だ。

 毎年お父さんと一緒にお墓参りに行っている。

 前世でも両親の命日には、毎年お墓に花を飾っていた。


「うん、お母さんにお花を持ってってあげる」


 お土産屋を出て花屋に移動する。

 いろとりどりのブーケや、フラワーアレンジメントがいっぱいに飾られていた。


「ここのお花は魔法使いの人たちが作ってるから、永遠に枯れないんだよ」

「永遠に!? すごい!」


 それならお墓に飾っても、お母さんの傍にずっと咲き続けてくれる。


 でも、命日って難しい。おめでたい記念日じゃないし、どんな気持ちでいたらいいのかわからない。

 前世の父親は亡くなってから10年以上経っていたけど、今のお母さんが亡くなってからはまだ数年しか経ってない。

 アリシアとしてはほとんど覚えてないけど、お父さんはまだお母さんの思い出が鮮明なはず。


 お母さんにも喜んでほしいけど、お父さんの悲しみも和らいでくれるようなものがいいな。


「お父さんって、お母さんにお花をプレゼントしたことないのかな?」

「あるよ。毎年リリアさんの誕生日には、必ず花束を渡してたからね」

「どんなお花あげてたの?」

「ユリの花。アル的にリリアさんのイメージはユリなんだって」


 ユリの花、上品で凛としてるイメージだ。

 お母さんって、そんな感じの人だったのかな。


「アル、プロポーズのときにピンクのユリの花束を渡したんだよ。100本くらいドーンと。跪いて」


 跪いて……お父さん、ロマンティックなところあるなぁ。


 サディさんが何かを思い出したのか、急に笑い出す。


「ピンクのユリの花言葉って『虚栄心』なんだ。カッコつけたがりなアルにピッタリっていうかさ。それをプロポーズに選んじゃうセンスもアルらしいよね」

「お母さんは花言葉知ってたの?」

「もちろん。だって僕、リリアさんにユリの花言葉教えてもらったからね。魔法使いは植物に詳しいんだよ」


 せっかくロマンティックなことをしてるのにどこか抜けてる。お父さんらしい。

 お母さんも、お父さんのそういうところが好きだったんじゃないかな。

 それからきっと、サディさんも。


「じゃあ、ユリの花にする!」

「そうだね。キレイなアレンジのを買って行こう」


 お父さん、プロポーズの日のこと思い出してくれたらいいな。


 でもお父さんって、今でもお母さんのこと大好きだよね。

 素敵なことだけど、もしかしたらそれがサディさんとのBLの障壁になっているのかも……!?



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