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第13話 奇跡と魔法のワンダーランド

 馬車の中でマドレーヌさんに作ってもらったサンドウィッチを食べていたら、あっという間に到着した。


 ライラック号が芝生の上に着陸する。馬車も揺れることなくそっと停車した。

 馬車から降りると、芝生の先は黄色いレンガの道になっていた。その上には、大きな虹のアーチが架かっている。

 そして奥には華やかな街並み。その至るところにカラフルな風船が浮き、白い鳥が飛んでいる。


「うわあ……!」


 これが魔法の国。すべてが輝いて見える。まだ一歩も中に入ってないけど。


 と、ふわふわとシャボン玉が飛んできた。

 目の前でパチンと割れると、水色のドレスを着た金髪のお姉さんが現れる。


「ようこそ、奇跡と魔法のワンダーランドへ。馬車はこちらでお預かりいたします。お荷物はホテルにお届けいたしましょうか?」

「ああ、よろしく頼む」


 お父さんが答えると、お姉さんが星型のステッキを振った。ライラック号ごと馬車がキラキラと光り出し、消えてしまった。


「ライラック号!?」

「大丈夫だよ、アリシアちゃん。魔法使いのお姉さんが預かってくれただけだから」


 これが魔法! そして魔法使い!

 森のモンスターやサディさんの回復魔法は見たけど、こういうザ・魔法を見ると異世界に暮らしてるって実感する。


「さあ、アリシア。今日はめいっぱい楽しみなさい」

「うん!」

「1番楽しみだったのはアルなんじゃないの~?」

「そのセリフ、そっくりそのままお前に返す」


 魔法のワンダーランドには、前世の遊園地と同じくアトラクションやパレード、そしてキャラクターたちがいた。

 でもキャラクターは着ぐるみじゃない。本物のエルフや妖精、ゴブリンにドワーフ、狼男だ。

 パレードは本当に種も仕掛けもなく、突然雪が降ったり妖精たちが空を飛んだり。

 スタッフさんは全員魔法使い。そこかしこで不思議な魔法が繰り広げられていて、それを見てるだけでも楽しい。


 私も魔法使いさんに作ってもらったシャボン玉の中に入って空を飛んだ。馬車で飛ぶのとはまた違って、自分で飛んでいるみたいで気持ち良い。

 地上に降りて、ベンチで一休み。


「私も魔法が使えたらいいのになぁ」

「リリアは魔法使いだったんだから、アリシアもできるかもしれないぞ」

「お父さんは魔法使えないの?」

「俺は……」


 お父さんが口ごもると、サディさんがニヤリと笑った。


「使えないことはないよねぇ、魔力は誰にでもあるんだから」

「俺はそういう見えないものをコントロールするのが苦手なんだ。剣はわかりやすくていい」


 誰にでもってことは、私にも魔力があるんだよね。

 魔力があれば勝手に魔法が発動するのかと思ったけど、練習しないと使えないってことなのかな。


「アリシアちゃん。魔法が使ってみたいんだったら、いいところがあるよ」


 サディさんが連れて行ってくれたのは、大きな魔法陣が描かれた広いフィールドだった。その上で、大勢の人達がステッキを振っている。


「あの魔法陣の上なら誰でも魔法を使えるんだって」

「私でも使えるの?」


「はい」と後ろから声が聞こえた。

 振り向くと、スタッフのお姉さんだった。紫色のローブを着た、まさしく魔女みたいな人。


「この魔法陣の上でなら、小さなお子さんでも簡単に魔法をお使いになれますよ」

「ほらね、アルでも使えるって」

「アリシア、よかったな。魔法が使えるぞ」


 お父さんがサディさんを華麗にスルーする。

 お父さん、そんなに魔法苦手なの……?


 私たちの順番になると、魔女のお姉さんはいろんな色や形のステッキを出してくれた。私が選んだのは、先端に黄色い星が付いたステッキ。1番魔法少女っぽい感じがする。

 お父さんとサディさんは、茶色い木のステッキを手に取った。ハリー・ポッターが持ってそうなやつだ。


「それでは、ウサギさんをオシャレにしてあげましょう!」


 魔女のお姉さんがステッキを振ると、辺りが野原になる。目の前にぴょんぴょんと白いウサギが飛び跳ねた。


「ウサギさんに向かって、好きな色や柄を思い描きながらステッキを振ってみてくださいね」

「なるほど、かわいい魔法だね。それっ!」


 サディさんがステッキをウサギに向けると、ウサギがピンク色に変わった。


「すごーい! 私も!」


 空のような青色を思い描いて、ステッキをウサギに向けた。

 パッと、ウサギが空色に変わる。


「すごいじゃない、アリシアちゃん。初めての魔法、大成功だね」

「さすがリリアの子だ。魔法の才能がある」


 大げさに褒めてくれるけど、誰でも使えるんだよね。この魔法。

 でも、嬉しい!


「よし、次はお父さんの番だ」


 お父さんが念じるように目を閉じてから、ステッキをウサギに向けた。

 ぴょんっとウサギが飛び跳ねて、地面がポスッと音を立てる。

 魔法……外れた?


「げ、元気なウサギだな。もう1度!」


 お父さんがステッキを向けたけど、また外れ。

 今度こそとステッキを振ると、今度は当たったけどウサギは濁った緑色になった。


「なにその色。オシャレにしろって言われたじゃん」

「違う! 俺はエメラルドグリーンにしたかったんだ!」


 またまた再チャレンジすると、次のウサギは白黒のしましまになってしまった。シマウマ……というか、囚人服みたい。


「ふざけてる?」

「違う! 俺はハートでいっぱいの柄にしようと思って」

「それもどうかとは思うけど」


 お父さんがどんどんウサギたちを変な柄にしていくから、私とサディさんでせっせとキレイな色に直していく。

 違うゲームになってるよ?


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