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第10話 記念式典

 数日後。

 コロシアムのような円形状の訓練場で行われた式典は、それはそれは盛大だった。

 正装したお父さんとサディさんを先頭に騎士団が行進するところなんて、まるで映画のよう。

 ああ、この世界にスマホがあったら良かったのに。


 騎士団の正装は、軍服のような服装にマントを身につける。RPGに出てくるキャラみたいだ。

 お父さんもサディさんも似合っていて、いつもの3割増しでかっこいい。

 私、制服とか軍服とか好きなんだよね。萌える。


 式典には王様もやってきて、勇者であるお父さんとサディさんを称えた。

 お父さんたちのパーティーには他にも人がいたはずだけど、みんな出席したのは最初の年だけらしい。


「気ままなやつらが多いからな。堅苦しい式典は嫌がるんだよ。そもそもどこにいるのかわからないやつもいるしな」


 と、お父さんが言ってた。

 いつか他の人たちにも会ってみたいな。全員男の人だって言ってたけど……


 はっ、いけないいけない。

 またカップリング作ろうとしてしまった。


 でも、どんなイケメンがいたって私の推しカプはお父さんとサディさんだから。

 これは揺るがないから。



 式典の後、訓練場の隅でお父さんを待っていると、先にサディさんがやって来た。


「アリシアちゃん、来てくれたんだ。足はもう大丈夫?」

「うん、サディさんが治してくれたから平気だよ」


 サディさんが使ったのは回復魔法だとお父さんが教えてくれた。

 でもサディさんは「ああ、あれね」と苦笑いをする。


「あれは痛みを取っただけだから、まだ無理は禁物だよ。僕がもうちょっとまともに魔法が使えればよかったんだけど」

「でも、魔法で私を捜してくれたのもサディさんなんでしょ?」

「だいたいの見当をつけただけだよ。捜し出したのはアル」


 サディさんが小さく溜息を吐き出した。


「こんなことなら、もっとちゃんと魔法を教わっとけばよかったよ」

「魔法はお母さんから教わったんだよね?」

「魔導の剣を使うためにね。魔力が使えるようになったおかげで、他の魔法もちょっとだけできるようになったんだ。役に立つようなレベルじゃないけど」


 そうは言っても、サディさんが魔法で私を助けてくれたのは事実だ。

 でもサディさんはなぜか納得してないように見える。

 魔導の剣を使えるだけじゃなくて、お母さんみたいな魔法使いになりたかったのかな。


「それよりどう? 式典の僕、かっこよかった?」

「うん! かっこよかった!」

「お父さんより?」

「えーと、それは……」


 悩んでいると、サディさんの頭がベシッと引っぱたかれた。

 お父さんだ。


「アリシアを困らせるな」

「なんだよ、聞いてみただけじゃん」

「お父さんの方がかっこいいに決まってるだろ。な、アリシア?」


 お父さんが自信満々に聞いてくるなんて珍しい。

 今日は特別な日、私もストレートに言ってあげよう。


「うん、お父さんかっこいい!」


 ボッ、と音がするくらいの勢いでお父さんの顔が赤くなった。


「アル、顔真っ赤じゃーん。照れてんの?」

「か、からかうな! バカ!」


 ヤバい。お父さんかわいい。

 そしてそれをからかうサディさんもイイ。

 控えめに言って最高。


 お父さんがサディさんから逃げるように背を向けた。


「アリシア、お父さんたち着替えてくるからそこで待ってなさい」

「あ、お父さん待って。サディさんも」


 ポシェットの中から用意していたプレゼントを取り出す。


 今朝、マドレーヌさんが萎れた花をキレイな押し花にしてくれた。

 それを私が紙に貼ってリボンを通し、栞にした。

 考えてたものとは違うけど、これはこれでステキなプレゼントになったと思う。


 ピンクの花とクローバーで作った栞をお父さんに渡す。


「お父さん、今日はおめでとうございます」

「アリシア……!」


 涙ぐんだお父さんに力いっぱい抱きしめられた。


「お、お父さん。栞がぐちゃぐちゃになっちゃうよ」

「ありがとうアリシア。額に飾って一生大切にするからな」


 嬉しいけど、栞なんだから使ってほしい。


 やっとお父さんに解放してもらえて、今度はサディさんに渡す。

 白い花とクローバーの栞。


「サディさんも、今日はおめでとうございます」

「僕にも? ありがとう、アリシアちゃん。宝物にするよ」


 優しい微笑みが眩しい。

 こんな笑顔を向けられたら、男女関係なくノックアウトだろうなぁ。


「ところで、どうしてお父さんのがピンクなんだ?」

「えーっと……お父さんってかわいいから、ピンクかなぁって」

「か……ッ!」


 絶句するお父さんに、サディさんが笑い出す。


「わかるわかる。アルってかわいいよねぇ」

「はあ!? なにをどう見たらそうなるんだ!」

「魔王を倒したくらいなのに普段はヘタレだし、抜けてるとこあるしさぁ」

「誰が……!」


 食ってかかろうとしたお父さんの額を、サディさんが指で突っついた。


「俺にからかわれてるとことか、かわいいじゃん」

「おーまーえー!!」


 待って待って待って!

 そんなわちゃわちゃするとか何のサービス?

 尊い! 尊すぎてしんどい!


 私がキラキラ……いや、たぶんギラギラした目で見ているのに気づいたのか、お父さんがゴホンと咳払いをした。


「アリシア、お父さんに『かわいい』と言うのは間違ってるぞ。かわいいというのは

 、アリシアみたいな子に言うんであってだな」

「いいじゃん別に。っていうか、かわいい娘に言ってもらえるならなんでも嬉しいんじゃないの?」

「ま、まあ……それはそうだが」


 サディさんのおかげで、なんとかお父さんは納得してくれた……と思う。


 まさか

「お父さんは受けだからかわいいピンク!」

「サディさんはプレイボーイのドS攻めだから白!」

とは言えないもんなぁ。


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