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現実と創作   作者: 魚魚魚
1/1

その1

漫画「キング・オブ・アスリート」。十種競技を題材とした漫画であり、ストーリーが面白く解説が分かりやすいのもあり最近軽くブームになっている漫画である。しかしブームになった一番の理由はそこではなかった。



「しゃおらっ!!!脱稿!!うらぁ!!!!」

そう叫ぶと男はペンを放り、たった今描き終わった原稿をそのままにベッドに飛び込んだ。睡眠不足からか、目の下には青い隈が現れている。

「〆切3分前か…ペース配分完璧だな、流石俺惚れ惚れするぜ……3分寝よう」

男は目を閉じた。


ピンポーン

数分してインターホンが鳴った。

「佐久間先生ー!生きてますかー?原稿もらいに来ましたー!」

男はゾンビのようによろめきながらベッドから起き上がり玄関の鍵を開けた。

「どうぞ田中さん……原稿は机の上に…俺は今から寝ます…」

「まーたギリギリまで描いてたんですか。まったく、いい加減それやめないと体壊しますよ?」

そう言いながらスーツの女性は部屋に上がり机の上の原稿を整える。

「おっしゃる通りです……」

「ちゃんと毎日コツコツ描いておけばこんなギリギリに体酷使する必要ないんですよ?大人になってまだそんな事も出来ないんですか?いいですか、そもそも……」

「まあまあまあまあ。それよりもほら、早いとこ原稿持ってかないと締め切りが、ほら、ほら!」

「大丈夫ですよ。ちゃんと余裕持って締め切り決めてますから。破られて困った事は一度や二度じゃないので。」

「はは……あ、そういえば原稿リモートで送るとか出来ないんですか?毎回毎回うちまで受け取りにくるの手間でしょう?」

「うちはそうやって原稿受け取る編集者さんが多いですけど、そんな事したら貴方いよいよ描かないでしょう?ちゃんと毎回来てプレッシャーかけてるんですよ。」

そう言うと、田中は原稿をカバンにしまいソファに腰掛けた。

「まあそこはまた話すとして、ここからはちょっと真面目な話を。最近の「キング・オブ・アスリート」の伸び悩みについて。」

「ああ…これまた耳の痛いお話で…」

「やはり題材の十種競技が少しマイナーでとっつきにくいっていうのもあるんでしょうけども、だからこその面白さもありますしね。先生が昔やってたのもあって作中の解説等も分かりやすいし。」

「まあ途中で挫折しましたけどね…情熱はあったんですけど、才能が追いつかなくて…」

「その情熱で今漫画描いてるんでしょう?すごいですよ。ただちょっとそこについて言いたい事がありまして。先生、作品が現実離れしないように大分自重しているでしょう?」

「……ああ…はい…」

「確かに自重は大事です、ただここ最近はちょっと抑え過ぎかなと。特に主人公は十種競技の化け物みたいな感じで描いてるんですし。実際あまり抑えてなかった序盤の方は評判いいですしね。経験されてたので特に気にしてしまうのかもしれないですけど漫画は漫画なので、多少盛ってもいいと思いますよ?最近の実例もありますし。」

「実例?」

「あー、原稿描いてたからニュース見てないんですね。十種競技の長浜隆次選手っているじゃないですか。」

「いますね。自分も漫画描く上で少し参考にさせてもらってますよ。」

「あの人が国内大会でアホみたいな記録出したんですよ。」

「はあ…アホみたいな記録…」

「具体的な記録はまた見てもらって。なので現実がはっちゃけちゃったので、漫画でもはっちゃけちゃっていいんですよ!っていう事が言いたかったんですよ。一回描きたいように描いてみてください!」

「描きたいようにか…」

「はい!描きたいように!あ、そろそろ時間なので私戻りますね。では」

「はい、お気をつけて…」


田中さんが帰ってからネットで記録を調べてみる。漫画を描く上で現在の十種競技については当然調べている。長浜隆次選手は最近頭角を表し始めてきてた選手だ。正直少しファンである。

「は?なんだこの記録。」

眠気が一気に吹き飛んだ。何だこれ…何だ…今まで自重してきた自分が嘲笑われたような…田中さんが言ってたのはこういうことか。

……………………………

「分かったよ!そっちがそうくるならやったろうじゃないか!自重とか知らん!好き勝手描いてやる!そうと決まれば今すぐストーリー練り直しだ!」


4時間後

「……ふふふ……出来たぞ…やりたい放題のストーリーが…ふふふ………寝る…」

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