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アカネ月の娘

アカネ月の手紙

作者: 遠部右喬

 父さん、村のみんな、元気だよね?

 そっちからはこっちが見えるもんね。だから、ファイは元気だってわかるよね?

 こっちに帰ってきて、今までずっと寝てたみたい。目がさめてそっちを見たら、きらきらしてきれいでびっくりした。きれいなものがたくさんあるから、きれいなのかな? 何でも知ってるミズナお姉ちゃんだって、きっと、そっちがこんなにきれいだなんて知らないと思う。お姉ちゃんも、きれいなものたくさん見つけてみてね!

 ヒナガお兄ちゃん、あの時はごめんなさい。ファイには帰らなきゃいけない場所があるってお話、こっそり聞いちゃったこと。それから、なんでファイが父さんの所に居るのかとか、ファイにしか出来ないこととかを教えてくれたよね。ちゃんと本当のこと教えてくれてありがとう。でも、ファイ、本当は何となくわかってたのかもしれません。たまにだけど、小さい頃から、みんなと同じ場所にいることがすごく不思議だって思ってたんだ。だからもう泣かないでね。本当の事教えてくれた時、いつもはにこにこしてるのに、変な顔してた。お兄ちゃんは泣くのを我慢してたんだって、後で気がついたよ。

 父さん、大丈夫? ファイはいつもそばにいるって、忘れてない? ファイと父さんがばらばらになって混ざった時に、ファイの目と交換で、最初の父さんが持たせてくれた父さんの一部は、すごく温かいです。形は無いけど、温かいって感じます。ミズナお姉ちゃんが教えてくれたんだ。どんなものでも、形は無くなっても、そこにあったって情報はなかなか無くならないんだって。よくわからないけど、たぶん、心は消えないってことかな? だから、ファイは寂しくありません。本当だよ。

 それにね、最初の父さんが持たせてくれたものが、もう一つあるんだ。最後の最後に、こっそり持たせてくれたの。「僕の知識」だって言ってた。「いざって時、無策よりはましだろう」って。いろんなものの軌道計算とか、初めて聞く理論? とか、なんだかむずかしいことがいっぱい頭に入ってきた。アカネが赤ちゃんの時に聞いたことがあるのもあった。きっと、大事なことだからアカネにお話してたんだね。本当にむずかしいから、ちゃんとつかえるかちょっと心配です。

 あのね、ファイはあんまりお話しが上手じゃないから、みんなにちゃんと「行ってきます」が出来なかったでしょ? だから手紙を書いてみようと思ったけど、ファイは体がないから手紙書けないなって気が付きました。それに、ファイが寝てた間に、そっちではすごく時間がたってるんだよね? もう、父さんもお姉ちゃんもお兄ちゃんも村のみんなも、体はないのかもしれない。だから、大好きって気持ちを送ります。体がなくなっても、気持ちは届くと思うから。

 また眠くなってきました。もう寝るね。おやすみなさい。


 大好きなみんなへ ファイより

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