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万華鏡

作者: 厳島宗太郎

万華鏡人間の万華鏡思考

   「万華鏡」

         山中千


 人混みが畝り、街が息をしている。

 新宿駅、山手線に乗り、渋谷へ向かう。

 ライトグリーンが視界を蝕んでくる。席には勿論、座ることが出来ないので、仕方なく吊り革にぶら下がる。

 人が沢山居る車内は、万華鏡の如く、多種多様で複雑で或る。

「次は、渋谷。次は、渋谷です。お降りの際はお忘れ物のないようご注意くだだい。次は、渋谷です」

その後は、英語で同じ事をアナウンスしたのち、次は中国語だ。


 ドバァっと噴き出した血の如く、渋谷に着いた瞬間、人が溢れ出す。

 都会に住むのは、辞めようと思った。

 改札を出た瞬間、魅力在る店が並ぶのを見て、都会に住もうと思った。

 己も又、万華鏡。


 幼少期、買って貰った万華鏡を思い出した。あれは、たしか夏祭り。

 姉が浴衣を着ていた。紫とピンクの交差模様。姉によく似合っていた。

 姉は、優しかった。いつも弱気な僕を励ましてくれていた。

 姉は、優しくなかった。いつも、僕のおやつを横取りした。

 万華鏡だけは、僕は姉に譲らなかった。頑なに……。

 万華鏡の良さを知らない人間は、生きている事を恥じるべきだ。万華鏡とはこの世なのだ。この世は、万華鏡の一部。この世の一部が、万華鏡で或る筈がない。例えば、万華鏡が全てを司る世界線だったとしよう。地球が駄目になったときは、万華鏡の中に、入って次の土地を探せばいい。例えば、万華鏡が死後の世界だとしよう。朽ちた人間の魂を万華鏡に移動させて、次の命まで休憩させる言わば宿なのだ。

 万華鏡を捻ると世界が変わる。

 自分に合う世界まで、捻るがいい。

 うんと捻るんだ。

 捻ってなんぼだ。

 捻って、お前は逃げてると言われようが、関係はない。

 捻るとは、環境を変えること。

 見てる世界なんぞ捻れば幻。

 だってそうだろ?君たちもしているじゃないか?小学校の事を思い返してみろ。今迄、小学校の時のことなんて、どうだっていいだろ?だから、思い出す必要が無いんだ。

 逃げてるか?うんや、逃げてなんかいない。不必要なだけだ。

 万華鏡を捻るとはそういうこと。

 万華鏡は、この殺風景な世界を彩るものだ。

 姉もよく言ってた、私なんて可愛くないよと。

 今だったら、言える。ああ、不細工だな、と。

 それがどうだ。万華鏡の筒を捻ればどうだ。

 まあ、大体はそんなもんだ。

 万華鏡の筒とは、整理みたいなもんだ。

 考えても見ろよ。世界が万華鏡なら、誰が世界を捻るんだい?

 だから、誰でも捻りやすい大きさにしてるんだ。という事はやはり、世界の一部が万華鏡何じゃないか?と思わなかったか?思ったよな、それが違うんだな。

 万華鏡の中が、宇宙なんだ。

 だから、地球は万華鏡の一部。

 はあ、疲れるぜ。温泉でも行こっかな。

 なあ、温泉は世界の一部だよな?

 という事は、万華鏡の一つの石にもならないわけだ。

 温泉って癒やされるよな。温泉ってまじで良いよな。結局人間の癒やしって温泉なのかもな。

 温泉上がりのフルーツ牛乳の底を見てみろ。限りなく、万華鏡の近いぜ。


 僕は、新宿駅へ戻った。渋谷駅周辺で特に入りたい店が無かったからだ。

 都会に住むのは辞めようと思った。

万華鏡とは、一体何なんだろうか

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― 新着の感想 ―
[一言] 万華鏡で見える模様が変わるように、くるくると変わる意見が面白いと思いました。都会に住む・住まないの問答にも共感します。便利で煌びやかな都会には憧れる反面、渋谷駅の人出の多さには辟易しますよね…
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